2024年04月15日( 月 )

「技術者はかっこいい」九州随一のサブコン、雇用で技術承継へ

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適性を見極め離職率低下へ

 ──採用をめぐる競争が厳しさを増すなか、人材定着への視点がより重要になります。

 中村 当社の場合ですと、入社後に社内で1週間のオリエンテーションを行い、そこで当社に関する基本的なことを学んでもらいます。その後2カ月の間、富士教育訓練センターの建築基礎コース、土木基礎コースを受講してもらい、学科と実地講習を通じて一通り型枠や鉄筋、内装業の軽鉄ボードに実際に触れてもらうことになります。

 入社に際しては、職人と管理職の大きく2種類に分かれます。教育訓練センターで1カ月過ぎたころに、私も現地に入り、先生方から「この子は手先が器用だから職人に向いているのでは」「この子は利発的だから管理に適している」など、1人ひとりの特性を聞くことにしています。その後、1人ずつ第一次面談を行います。当社では、とび・土工工事、機械オペレーター、土木工事、リニューアル工事、PC工事の5部門がありますので、面談の際には、「この研修期間中にどの部門の仕事をしたいか、やりたいことを見つけなさい」と指導します。

中村工業(株)    教育訓練センターでの研修が終わると、次に当社の篠栗機材センターで足場の組み立て・解体、ワイヤーの編み込み、社外を活用したCAD講習などに取り組んでもらう、約1カ月間の社内研修を行います。その後、約2週間の社外講習があり、全体で3カ月半ほどの研修を行っています。機材センターの研修中に2回目の面談を行い、自分がやりたいことを聞き取りした後、部門長との面談を経て配属となります。

 ここまで入社後のフォローに注力するのは、やはりミスマッチをなくしたいからです。また、コロナ禍でさまざまな制限が設けられるなか、新入社員の心の問題にも目を配る必要があると考えています。十分な研修期間を設けることで、学生から社会人になるにあたっての心の不安を、少しでも和らげることができればと思っています。

 ──24年4月から、建設業での時間外労働の上限規制が適用されますが、こちらへの対応はいかがでしょうか。

 中村 いわゆる働き方改革の一環ですが、職人不足が解消されない状況のなか、非常に対応が難しい問題だと考えています。職人の世界では20代で結婚する方が多く、その分、お金も必要となります。基本給と残業代、当社でいくと年間約100万円が残業代としてプラスされています。夜間工事の場合は割増賃金となり、昼間に働くより手取りが増えますから、夜間工事を頑張ってくれる職人もいます。働き方改革が必要な部分もあるのでしょうが、もっと現場の声にも耳を傾けてもらい、実態に沿うようなかたちにしてもらいたいというのが本音です。「稼ぎたい人は働く」と。

 また、最低でも550~600万円台の平均年収を提示できないと、「息子を頼む」というような、一番大切にしないといけない「縁故」の話も来なくなってしまいます。当社では給与の底上げ、年2回の賞与を継続していますし、繁忙期になるとわかっているときには繁忙期手当を先にわたすといったような、職人の仕事に対する意欲が高まるような取り組みを行っています。こうした取り組みと働き方改革との間で、どう調整を図っていくのかが、今後の課題となります。

 ──人材をめぐる環境も変化していくなかで、外国人実習生や女性社員の活用についてはいかがお考えでしょうか。

 中村 外国人実習生は今年1期生が帰国し、現在6人雇用しています。夕食付きの寮を新設しており、非常に喜んでくれています。帰国した子たちから「(中村工業に)帰って来たい」という声を聞いたときは、本当に嬉しかったですね。私個人としては、できることなら日本人と同じ終身雇用を、と考えています。ですので、「処遇面で何か不足している点はないか」「おかしなことがあったらすぐに言ってきて」と、都度聞くようにしています。

 女性社員についても同様で、現場でしっかりと活躍してくれています。5年目の女性とび職の社員が、アイランドシティの現場で職長を務めています。工場建設の現場でも、女性管理者を配置しました。女性社員の活用を強化していくなかで、気づきもありました。現在、10名の女性社員がいるのですが、女性用トイレが少ないという声にはハッとさせられました。現在、「本社4階をすべて女性トイレ、更衣室に改装しようか」「ゆっくりと休める休憩スペースを増やそうか」などと考えており、11月までには事務所の新設と本社のリニューアル工事を終えます。

 また、大手スポーツメーカーのミズノに協力いただき、作業服をより動きやすく乾きやすいものに変更しました。色などは従業員の意見を反映させ、技術者・技能者の2パターン製作しています。

 このほかにも積極的に資格取得を促し、「CAD設計に興味がある」という社員がいれば、会社から学費を支援して専門学校に行ってもらい、図面作成の部署に移ってもらうなど、本人の希望に沿ったかたちで能力を発揮できるようなキャリアアップできる体制を構築しています。

 ──最後に、人材への思いについてお聞かせください。

 中村 ありがたいことに、とび・土工、土木PCすべての部門で、「中村工業でどれだけ施工可能か?」「やってもらわなければ困る」などとお声がけいただいている状況です。その声に応えていくためにも、やはり雇用が大事だと思います。

 また、安全な工事を担保するためにも、雇用によって社員を抱え、無理のない人員配置ができる体制が欠かせません。雇用のために、いかに働きやすい職場環境をつくるかも重要で、先ほどの外国人実習生を受け入れるための寮や女性社員用施設の新設なども、その1つです。

 今後はDX化を含め、社員が能力を最大限発揮できるよう、いかに新しい機械設備を導入していくかも、重要になってくるでしょう。人材への投資を惜しまず、雇用を守り抜いてきたからこそ、工期遵守をはじめとする、当社の仕事に対する信用につながっているのだと思います。そして、「汗をかいて働くのがかっこいい」「技術者・技能者はかっこいい」と思ってもらえるような、そんな業界環境の形成に貢献してまいります。

【内山 義之】


<プロフィール>
中村 隆元
(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校および福岡建設専門学校卒業。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。


<COMPANY INFORMATION>
中村工業(株)

代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
TEL:092-751-9381
売上高:(22/3)96億1,732万円
URL:https://nakamura-k.com

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