2024年05月16日( 木 )

【福岡市長選】市議と本紙記者との匿名座談会(2)

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 20日に投開票された福岡市長選は、現職の高島宗一郎氏が過去最多得票数を更新して4選をはたした。(株)データ・マックスでは現職の福岡市議会議員を招き、行政記者2名と座談会を実施。動かなかった保守票、野党共闘の功罪、市民の受け止め方などを語りつくした。

※出席者 A:行政記者 B:現職市議 C:行政記者

根強い人気を誇る高島市長

福岡市 街並み イメージ    B議員 市長が公約で、少子化対策のロールモデル都市という言い方をされていましたが、あの少子化という発言を入れさせたのは間違いなく自民党市議団のようです。子育て支援の前に結婚や出産を正面から考えるべきではないか。結婚した夫婦が生涯に授かる子どもの数を意味する完結出生児数のデータを見たときに、まず1972年の数値ですが。

 C記者 1972年ですね。

 B議員 50年前、沖縄返還、日中国交正常化がなされた頃は、出生率は2.05くらいでした。現在は、1.92前後です。2.0を切っています。ただ下がり続けているともいえません。下げ止まっているといえる。では少子化が進んだのは何故か、結婚しなくなった。出産しなくなったというのが根本的な問題としてあります。もちろん晩婚化の影響もある。であれば、それを聖域なく語ることが必要であって、それは若者が多い福岡の責任ですよねということを書いて出していたのですけど、それがロールモデル都市という表現になったんだろうなと思います。別に喜んでいるわけではないですけどね。

 A記者 男性は、大学を卒業し就職したら福岡を出て行ってしまう傾向があります。ところで、市長選を受けて、市民各層のさまざまな声をお聴きしました。コンサルタントの方や弁護士、市長選の焦点にもなった子ども支援事業の仕事をしている方など。そのなかには女性の方ですが、市議選に出る気持ちを持つ方もいらっしゃいます。

 B議員 市議会議員にもっと女性が増えて、その考え方が反映されることは大事なことですね。

 A記者 野党系はいらっしゃるので、保守系に増えてほしいところはありますね。

 B議員 あらためて市長選ですが、現職に対して田中慎介氏が、どうしたいかとか、本人の戦略が見えなかったというのもあるのですが、でもそんなのは戦略があっても、結局、保守系が何も動かなかったなと。政党支持率で考えても、普通に考えて今どこが一番多いんですかと。特定の支持政党なしが一番で、その次は自民党ですね。それをたしたら7割、6割近い数字になると思います。野党全部足しても自民党の数にすらならないような勢力と、一生懸命押し固めていたということが、戦術として良くなかったのだと思います。

 C記者 当初、一部野党会派が、市民連合ふくおかの事務局長、片山さんを担ごうとしていました。調整が行われ、片山さんが降りる代わりに田中さんはその方面との関係が急速に接近していきました。共産党プラス旧社会党系あたりですね。

 B議員 本人(田中氏)も力が入らなかったと思いますよ。

 A記者 国民民主はメッセージを送っただけで、立憲にしても温度差があり動きが鈍い人たちが少なくなかったようです。

 B議員 本当はそんなことでやるはずもない、野党共闘で選挙しました。でいいですよ。じゃあ、勝ったら野党だけのための政治をするのですかと。そんなわけにはいかないじゃないですか。そもそも政党の枠組みで争うこと自体が地方選挙で、なじまないんですけど。そんなこともみんな分からなくなってしまったのかと。メディアも含めてですね。

 A記者 田中さんは、市議時代から見ていて中道だと思っていました。

 B議員 そうそう。その通りで、彼が出していた政策は、はっきりいって現職よりも、立派な政策だったと思います。思うのですが、明治維新以降、西洋に追い付け追い越せで、上から与えられた民主主義、投票権、西洋と日本の違いは、血を流して、勝ち取ってきたこと。人権や自由に関して。いとも簡単に奪われてしまうんだという危機感を含めて、根本が違うのかな、日本が追い付いていないと思います。

 A記者 山崎広太郎元市長も仰ってましたけど、日本の民主主義はお上に与えられたという意識が強いと。民主主義が借り物になっていると。今回の市長選の投票率を見てもですね。

 B議員 今回、田中氏の戦略だけに求められない敗因があるように思えます。今回の市長選でも、新聞記者たちもいっていましたが、今でも市長は人気がある。街頭演説をしていると、写真撮影タイムがあるということでした。我々の感覚とはズレているわけです。むしろ問題意識をもっている我々のほうがズレていやしないか。時代についていけてないだけなのかもしれない。

 A記者 高島市長は、安倍元総理に似ていますね。ファンというか、コアな支持層をつかんでいるという意味で、似たようなものを感じます。

 B議員 もうテレビに出なくなって久しいですし、なぜいまだに根強い人気があるのか。そこを紐解かない限り、市政が変わる糸口は何も見つからないように思います。市長を3期やっていて、タレントでい続けるというのが、それでいいのかと。自分たちのお金(税金)の使い道を決められているわけですから。

(つづく)

【近藤 将勝】

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