2024年05月09日( 木 )

【コロナ禍で鍛錬、再武装(3)】駐車場DXを見据えた自社開発で、請負主体からの業態転換に挑戦

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セイワパーク(株)
代表取締役社長 清家 政彦 氏

 福岡市を拠点に駐車場の建築から管理運営、保守メンテナンスまでを手がけるセイワパーク(株)。1978年の設立以来44年にわたって独立系事業者として業容拡大を続け、都市環境の整備に貢献してきた。常に新たなサービスを取り入れ、パーキング業界に注力してきた同社代表取締役社長・清家政彦氏に現在の事業展望についてうかがった。

(聞き手:(株)データ・マックス取締役 児玉崇)

急速に変化するパーキング業界をリード

(株)セイワパーク 代表取締役 清家 政彦 氏
セイワパーク(株)
代表取締役社長 清家 政彦 氏

    ──業界団体の理事長就任おめでとうございます。

 清家政彦氏(以下、清家) 今期、(一社)日本パーキングビジネス協会(JPB)の理事長に就任いたしました。この組織は、各種駐車場事業に関する調査研究およびその進歩改善を図るとともに、パーキングビジネスに関する知識の普及と発展を図るための業界団体です。いまJPBとして注力しているのは不正駐車対策です。基本的に警察は公道上での駐車違反でないと取り締まれないため、私有地での違反駐車に対して所有者を特定することができず、法的に罰することができません。昔はナンバープレートから所有者を割り出すことも可能でしたが、今は個人情報保護法の観点から難しくなっています。そこで、業界団体として、悪質な違法駐車に対して情報開示請求ができるよう、国土交通省など行政に対して働きかけを行っています。

 ──駐車場業界の現状について教えてください。

 清家 世界的に見ると、日本のパーキングビジネスは随分と遅れているように感じます。諸外国では随分前からキャッシュレスでの清算が当たり前になっていますが、日本の駐車場業界は、運営手法においてこの何十年も大きな変化が起きていません。しかし、今後はキャッシュレス化が急速に進むはずであり、大きな転機は2025年に予定されているアップルカーの発売だと見ています。自動運転でGPSの位置情報を利用し、クラウドで決済されるという時代が目の前まできているのは間違いないでしょう。

 ──キャッシュレス決済で何が変わるのでしょうか。

 清家 まず、デジタル決済を通して、利用者の属性がわかるようになります。法人、個人、年齢、使用状況などの情報が集約されることで、個別に適切な情報発信が可能になります。それにより、時間貸から月極の契約の提案や、利用が多い顧客には予約システムが利用できるなど、顧客の個別のニーズに合わせて付加的機能を提供することができるようになるでしょう。

 また、駐車場経営におけるコスト削減も魅力的です。キャッシュレス決済になれば精算機設置に対する初期投資が抑えられますし、機械トラブルは減り、集金の必要もなくなるので、経費の大幅な削減が見込まれます。すでに最先端のパーキング設備においては、AIカメラシステムを設置し、QRコードを印字した看板を立てるだけという簡素化が実現しています。

 ──キャッシュレス決済普及のポイントは何でしょうか。

 清家 現在のキャッシュレス決済の普及率は低く、当社のケースでいうと、パーキングのキャッシュレス決済は全体の1割程度で、まだまだ現金支払いが大多数というのが実態です。また、決済手段については地域ごとに特性が異なり、福岡ではSuicaなどの交通系がよく使われますが、地域によってはQRコードが主流であるなど優位性が変わりますので、調査と見極めが重要です。ですので、キャッシュレス決済の共通規格となり得るスマートフォンアプリがこれまで以上にユーザーの間で浸透することが重要ですし、当社でも、どのアプリと連携し、どのように活用していくのか、といった具体的な検討を進めているところです。

社会情勢に左右されにくい経営を

 ──御社の新分野展開についてお聞かせください。

 清家 コロナ禍では移動制限により人流が3割減となり、パーキング事業は大きな打撃を受けました。駐車場経営のコストはほぼ固定費であるため、売上の大幅な減少にともない多くの事業者が赤字を余儀なくされましたが、そのなかでも利益を支えてくれたのが固定比率の低い自社物件の運営でした。コロナのような世界的なパンデミックを経験したことで、安定的な経営のためには自社物件が有用であることに気づかされました。

 そこで、当社は駐車場の建築から管理保守までパーキングのすべてに対応できるという強みをいかし、今後は自ら駐車場を開発し、物件を販売していくという、自社開発事業による挑戦を新たに始めました。社内には全国の不動産情報を集約する部署を立ち上げるとともに、管理エリアも東京、大阪にまで広げており、国内の広域で事業のさらなる展開を図っていきます。

 祖業である自走式駐車場の建築事業においては、集合住宅、商業施設、病院、工場などで時間貸しなど有効活用されているものを全国で取っていく、という意識を強く持っています。そのうえで、今後金利が上昇してくれば、一部で不動産売却の動きもでてくるでしょうから、そのタイミングを商機として捉え、これまでの請負主体の建築事業に、価格決定権のある自社開発事業を加えて、経営をより安定化させていきたいと考えています。

【文・構成:清家 麻衣子】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:清家 政彦
所在地:福岡市博多区東比恵2-1-3
設 立:1978年2月
資本金:5,000万円
TEL:092-474-8000
URL:https://www.seiwapark.co.jp


<プロフィール>
清家 政彦
(せいけ・まさひこ)
 1971年4月25日生。福岡県太宰府市出身。立正大学経済学部卒業後、(株)山善勤務を経て、99年にセイワシステム(株)(現・セイワパーク(株))に入社。2008年6月、同社代表取締役社長に就任。趣味はマラソン。

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