2024年05月12日( 日 )

九州の観光産業を考える(2)全国旅行支援、ニンニク注射で済ませるのか?(前)

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カンフル剤奏功と見込み違い

瀬戸内の島々を巡り現代アートを五感で楽しむ
瀬戸内の島々を巡り現代アートを五感で楽しむ

    国による“さぁマスクを外そう”大号令と合わせるように始まった観光需要喚起策が、全国旅行支援だ。周知の通り、交通機関と宿泊のパッケージでは8,000円/人泊、宿泊のみは5,000円/人泊を上限に、旅行代金の40%割引を受けることができる。加えて、平日3,000円/日・人、平日1,000円/日・人のクーポン券が付く。自粛風潮から解放された良民には、利用しないではいられない“ぶら下げニンジン”だ。

 県ごとに特色を出すべく建てつけられたという制度。10月11日の販売初日で完売の県が出るなど、カンフル剤としての即効性は発揮した。一方、この人気差は、地域性を生かす予算の割り振りや準備が、国→県→旅行予約サイト/旅行会社という予算配分の図式を通して、どのようになされたのかと大きな関心も抱かせた。

 さて、九州アイランドにおいて、全国旅行支援はどんな覚醒をもたらそうとしているのだろう。

九州人気はマイレージポイント?

 販売を一時停止した県も態勢と商品を立て直し、受付再開に至る。航空機を使うパッケージ商品では、当然ながら発着する便数と座席数に制約され、着地の受け入れ可能客室数の手前で在庫が尽きる。そんな現象を九州でも見ることができた。

 国内大手航空会社の1つは準備の整った都道府県から対象商品を販売するとし、11日正午に北海道、奈良県、山口県、福岡県、鹿児島県、沖縄県の販売を開始。驚いたのは、千葉県の商品は給付額の上限に達したとして同日中に販売を終了したことだ。千葉県には同社がスポンサーとなっている超人気レジャー拠点がある。そのせいだろうか。

 12日、秋田県、石川県、愛知県、和歌山県、広島県、岡山県、大分県、熊本県の販売を開始し、併せて、新潟県、長崎県、宮崎県、鹿児島県の販売を終了したと告知。13日、北海道、秋田県、愛知県、和歌山県、熊本県、大分県が販売終了。14日、宮城県、岩手県、山形県、石川県、岡山県、広島県、福岡県が販売終了。販売再開した大分県は、18日にまたも販売終了となった。

 九州では受付開始から4日で、長崎県、宮崎県、鹿児島県、熊本県、大分県、福岡県がそれぞれ販売終了となった。割当給付額や準備していたパッケージ商品の数がさまざまだろうから、旅先としての人気の有無の表れとは一概にいえまい。完売と販売再開の繰り返し。泥縄的な事象からうかがえるのは何だろう。駆け込み的な需要も、九州旅を熱望したようには見えない。

(つづく)


<プロフィール>
國谷 恵太(
くにたに・けいた)
1955年、鳥取県米子市出身。(株)オリエンタルランドTDL開発本部・地域開発部勤務の後、経営情報誌「月刊レジャー産業資料」の編集を通じ多様な業種業態を見聞。以降、地域振興事業の基本構想立案、博覧会イベントの企画・制作、観光まちづくり系シンクタンク客員研究員、国交省リゾート整備アドバイザー、地域組織マネジメントなどに携わる。日本スポーツかくれんぼ協会代表。

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