2024年05月16日( 木 )

【独自】八女市・久留米市議会などに旧統一教会関係者から陳情書

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信徒代表名で提出された要望書

 12月10日、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の献金や霊感商法などをめぐる問題を受けて被害者救済を図る新たな法律と、改正消費者契約法が参議院本会議で賛成多数で可決成立した。救済法案が成立した理由の1つに、教団への献金や霊感商法で多くの被害者が出たことにあるが、被害拡大は旧統一教会と政治家との関係が背景にあった。

 「Net IB-News」は、旧統一教会から地方議会に対して、教団との関係断絶や各議員と教団の関係を調査するなどを行わないよう求める要望書を入手した。

 文書は、先月28日、福岡県八女市議会に提出された。提出者は、旧統一教会久留米家庭教会の信徒代表。要望書は、A4用紙2枚にまとめられ、資料も添付されていた。要望事項は、旧統一教会を念頭に置いた特定の宗教団体との関係を断絶する決議をしないことや「市議会議員を含む公人や私人に対し、特定の宗教に対する信仰の有無を問うたり、その団体との関係を調査・質問したりしないこと」を求める内容だ。

 11月30日開会の12月議会に、かつて旧統一教会の学生組織、原理研究会による入信を目的とした合宿セミナーに参加していた女性らによって「旧統一教会等による被害の防止・救済を求める意見書採択を求める請願」が提出され、総務文教常任委員会に付託されている。
八女市は、久留米市に隣接するが、「旧統一教会をめぐり揺れ動く九州の地方議会」で、昨年12月に八女市内で教団のイベントが開催されていたことを取り上げていた。

 八女市などによると、昨年12月26日に、八女市が管理・運営する市民会館「おりなす八女」において、旧統一教会が主催するクリスマスイベントが800人規模で開催されていた。旧統一教会に詳しい関係者によると、「久留米教会は、昔から政治的な活動が盛んで、数年前まで副議長まで務めた自民党系の久留米市議が、教団の支援で当選していた。ロビー活動や選挙運動を通じて、久留米だけでなく近隣の自民党議員に食い込んでいる」という。この久留米教会については、教会の職員が教会の礼拝集会における選挙活動の報告をYouTubeにアップロードしていたことが発覚し、複数の放送局が大々的に報じるということもあった。その報告内容は、教団の渉外部長が、福岡・佐賀・大分の自民党議員の選挙結果を報告したものだが、涙ながらに語る一幕もあった。この動画は現在、削除されているが、2時間以上あり、そのなかで、八女市でのイベント開催の案内が行われていた。

 救済法が成立し、国の質問権行使や養子縁組あっせんでの調査が本格化するタイミングで、旧統一教会関係者が、地方議会に要望書を出すというのは、旧統一教会が、相当危機感を募らせていることがうかがわれる。

 同様の文書は、久留米市議会はじめ全国の地方議会や首長に対して出されており、静岡県では、教団の浜松家庭教会の総務部長などが、浜松市と磐田市、湖西市の3市議会議長に対し、議会で特定の宗教法人との関係を遮断する宣言や決議をしないよう求める陳情書を提出していた。


八女市議会に提出された文書

選挙運動員に便利だった旧統一教会

 旧統一教会は、1954年に文鮮明教祖によって韓国で創立されたが、日本には、1958年に文の命令で崔奉春(チェ・ボンチュン 通名・西川勝)が布教のため、当時日韓間で国交がないなか、密航し、布教活動を展開。日本においても徐々に信者数を増やし、68年の国際勝共連合設立以来、自民党をはじめとする保守勢力に選挙運動の応援などを介して浸透していった。また、同性婚や選択的夫婦別姓、ジェンダーフリー、避妊などを学ぶ性教育などのリベラルな価値観に反対するといった思想が、伝統的家族観を重視する保守派と相性がよかった。なかなか選択的夫婦別姓や同性婚が日本において実現しない理由の1つに、旧統一教会の存在があることは間違いないだろう。何より無償ボランティアで働く運動員を派遣してくれる教団の存在は、政治家にとってなくてはならない関係性となり、国会議員だけでなく、地方議員においても同様であった。

 共同通信社が10月29、30両日に実施した世論調査によると、旧統一教会と政治家の関係について、自民党は、国会議員だけでなく地方議員も対象とすべきと回答したのは、74.8%であった。来年4月に実施される統一地方選挙に向けて、自民党の茂木敏充幹事長は「旧統一教会とは今後一切関係をもたない」と党のガバナンスコードの順守を求めたものの、地方レベルでは、今も水面下で関係が温存されているのではとみる向きもある。
 茂木幹事長のお膝元、栃木県の自民党所属県議が教団の関連団体、世界平和連合()の栃木県連合会の代表を務め、社会的批判が高まって以降も「辞める理由がない」と発言して問題になった(その後、関連団体代表職を辞任)ように、この問題は相当根が深い。

 八女市議会に提出された要望書について、自民党員である複数の八女市議会議員に取材を申し入れたが、議員の多くは、「地域の事情」などを理由に、具体的な発言を差し控えたいと回答している。

 地方議会と旧統一教会の関係について引き続き続報をしていきたい。

【近藤 将勝】

※世界平和連合
 旧統一教会の関連団体の1つ。創立者の文鮮明(ムンソンミョン)が1991年に創設した政治団体で、日本では96年に設立され、多くの自民党議員を支援してきた。 ^

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