2024年05月13日( 月 )

博多と天神つなぐリバーサイド春吉(後)

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色街の記憶とリバーサイドの強み

 春吉に隣接する清川には、かつて遊郭があり賑わいを見せていた。その影響もあり、当時の春吉はいわゆる「青線(非合法売春エリア)」として盛況を博していた歴史がある。博多の台所・柳橋連合市場の“柳橋”の部分からも、その名残を感じ取ることができる。

 現代においても、西日本屈指の歓楽街・中洲に近いという立地特性からか、ホテル街と呼べるほど多種多様なホテルが建ち並んでいる春吉。オシャレなBarや、入手困難な上質で濃厚な旨味と甘みが特徴の希少肉を使用した焼肉やもつ鍋をお手頃な価格帯で提供する、(株)ふくおか畜販直営の「和牛卸問屋兆や」など、飲食店も多く、夜でも人通りが絶えることはない。

 こう聞くと治安状況が懸念されるが、中洲・春吉エリアのランドマークでもあるパチンコホール・玉屋本店の大型壁面LEDビジョンが生み出す明るい景観が、地域の防犯にも役立っている。同ビジョンは今夏をメドにハイブリッド照明へと切り替えられ、市で開催されるイベントや行政からの重要情報などを告知。福岡をPRする場としてインバウンド需要の拡大を後押しする。

 こうした地場企業の貢献もあり、春吉は安心して夜の遊行も楽しめる場所となっている。また、那珂川沿いというリバーサイドであり、博多・天神にも近い都心近接という強みをもつことから、開発も盛んに行われている。

左:春吉2丁目_141/中:(株)KKR様店舗マンション/右:HARUYOSHI-PJ

 春吉2丁目のキャナルシティ博多側では(株)グッドライフカンパニーによる「(仮称)春吉2丁目_141」が建設中。建築物の概要は、RC造・地上12階建、延床面積2,671.41m2のワンルーム66戸。設計をLIBTH DESIGN、施工を(株)グッドライフ建設が手がける。

 同じく春吉2丁目の、天神寄りの場所ではK.ホールディングス(株)による「(仮称) HARUYOSHI PJ」が建設中。テナントビルで、建築物の概要はRC造・地上9階建の延床面積1,200m2。設計を(株)マツダグミ、施工を(株)未来図建設がそれぞれ手がける。
 また、春吉3丁目の路地では「(仮称)(株)KKR様店舗マンション」が建設中。店舗付きのマンションで、建築物の概要は、RC造・地上5階建、延床面積502.12m2のワンルーム外8戸。設計・施工を東建コーポレーション(株)が手がける。

 春吉に空地がないわけではないが、ホテルやテナントビル、アパートやマンションなどが渾然一体となっており、建替えでもない限り相応規模の新たな開発は困難に感じられる。それでも、煌めくネオンが川面に映る光景など、借景を楽しむ飲食店・住まいという打ち出し方ができるリバーサイドであり、職住近接を実現しやすい立地特性は、十分魅力的だといえる。

散見された空地
散見された空地

多様性を内包する春吉という町

 博多と天神、2つの都心を生活圏にできる贅沢なエリア、市の中心部にいながら開放感を感じられるリバーサイド、そして、色街時代の余情や商人の快活さを感じられる町並みなど、春吉はさまざまな顔をもつエリアだ。

 迂回路橋と隣接する清流公園との一体的な空間活用を視野に入れた、春吉橋の架替事業。福岡市地下鉄七隈線・櫛田神社前駅の開業などによる動線の変化。これらに加えて、再開発によるエリアの新陳代謝が進めば、市内屈指の“便利なまち”として、春吉はそのエリア特性を更新できるかもしれない。しかし、古いようで新しい、広いようで狭い、そんな雑多さこそが、春吉らしさとも感じる。

 春吉の隣接エリア、住吉では「(仮称)エンクレスト住吉4丁目」や「(仮称)modern palazzo住吉4丁目」といったマンションや、「(仮称)住吉五丁目店舗」といったテナントビルの開発が進む。周囲で新しい物件が増えていけば、呼応するように、春吉内でも開発意欲は高まっていくかもしれない。地域特性を残しつつ、さらなる発展を遂げることができるのか、春吉のまちづくりの動向が注目される。

(了)

【代 源太朗】

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