2024年04月29日( 月 )

3シーズン目のJ1の戦いに臨むアビスパ福岡 進化を続けてJ1定着、そして上位進出へ(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

アビスパ福岡(株)
代表取締役社長 川森 敬史 氏

 アビスパ福岡は2022年シーズンの最終節、アウェイの浦和戦で引き分け、2シーズン連続のJ1残留をはたした。コロナの陽性判定者が多数出て、ベンチメンバーわずか3人で試合に臨むことを余儀なくされるなど、試練のシーズンを戦い抜いたアビスパ福岡の川森敬史社長に22年シーズンの振り返りと23年シーズンの抱負などを聞いた。

チーム人件費の維持・向上を図る(つづき)

 ──そうするとチーム人件費は22年シーズンよりアップするということですね。

 川森 最低3年以上J1で戦うことで初めてJ1に定着したといえるでしょう。その次に目指すのは当然、上位進出です。そうするためには、毎シーズン少しずつでも上げていかなければなりません。

長谷部茂利監督
長谷部茂利監督

    ──23年シーズンに向けて長谷部茂利監督と契約を更新。選手も山岸祐也選手、前寛之選手、金森健志選手、城後寿選手、村上昌謙選手といった主力クラスの契約更新を続々発表していますね。

 川森 全体のバランスを見ながら、最終的には22年シーズンよりもバージョンアップできるよう、編成をしている最中です。23年シーズンで長谷部体制は4年目に突入するため、いろいろなことを想定して準備を進めています。同じメンバーで4年やっているからといって強くなるかというと必ずしもそうとはいえません。会社組織と同様、マンネリ化は停滞につながりますので、絶えず刺激を与えることも重要です。チームに新しい血を投入する、戦術のバリエーションを増やすなどの上積みが必要となってきます。また、新加入選手がどれだけ早くアビスパの戦術にフィットできるかも重要です。課題である得点力不足に対する補強は当然重要です。しかし、23年シーズンで同じぐらい重要なのは、これまで構築してきた堅守をシーズン通して維持できるかどうかです。

アカデミーのさらなる充実を

 ──昨年行われたカタールW杯に臨む日本代表にアビスパ福岡のアカデミー出身の冨安健洋選手が選出されました。さらなるアカデミー充実のために23年シーズンから取り組まれることはありますか。

 川森 トップチームの強化と同様、アカデミーの充実は最重要強化ポイントの1つです。23年シーズンからは副社長に立石敬之さんが就任します。立石さんは現在、ベルギー1部リーグ・シント=トロイデンVVのCEOも務めており、大分トリニータやイタリアのエラス・ヴェローナなどで育成や強化部長などを歴任、FC東京ではゼネラルマネージャーも務めた方です。アカデミーもトップチームも指導できる経験豊かな立石さんのような人物が加入するメリットは計り知れません。

アビスパ福岡    ──シント=トロイデンVVとアビスパは19年から業務提携を結んでいます。立石さんの副社長就任で、ますます双方の交流が活発化することが期待できます。

 川森 1月にU-15の選手がシント=トロイデンVVに研修に行きますし、アカデミーの壱岐友輔ヘッドコーチはシント=トロイデンVVとイングランドプレミアリーグ・アーセナルで研修を受ける予定です。立石さんの就任を機により交流が密になり、ノウハウを共有できるのではないかと考えています。

 ──シント=トロイデンVVには、冨安選手も在籍。昨年11月には、冨安選手が古巣アビスパに戻り、アカデミーの選手を指導しています。プレミアリーグの強豪・アーセナルの主力選手に指導されるのは大きな刺激になったのでは。

 川森 アーセナルで学んだことを後輩に伝えたいとの冨安選手の想いを叶えるべく、壱岐ヘッドコーチが尽力してくれました。冨安選手の出身クラブへの愛情、福岡県への郷土愛をひしひしと感じました。

 ──今後、アカデミーがますます充実して、冨安選手のような選手がどんどん出てくれば、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場や優勝なども狙えるようになるのではないでしょうか。

 川森 ロードマップには当然、上位進出、ACL出場といった目標を掲げています。しかし、それらは一朝一夕で叶えられるものではありません。まずは地道に一歩一歩、足元を固めていくことが重要だと考えています。

 ──読者およびサポーターにメッセージをお願いします。

 川森 アビスパ福岡は成長過程のクラブでこれからも進化は続きます。前のシーズンに比べて、得点数は増えたか失点数は減ったかなど、成長の過程も楽しんでもらえたらと思います。クラブのDNAは大事にしつつ、いつかはACLに出場して、アジア・世界にアビスパ福岡の名を広めて、海外の人たちに「福岡にはアビスパ福岡というクラブがある」と誇りをもっていえるような強豪クラブに成長したいと思っています。

アビスパ福岡(株)代表取締役社長 川森 敬史 氏
アビスパ福岡(株)
代表取締役社長 川森 敬史 氏

    現在のアビスパ福岡は、人間でいうところの「思春期」を迎えているのだと私は考えており、クラブの財務体質などのバランスを欠いている状態だと思っています。しかし、思春期は永遠に続くわけではありません。やがて成人を迎え、心身ともにバランスがとれた大人になります。我々も1日でも早く大人のクラブへと成長し、晴れて強豪クラブの仲間入りをしなければなりません。道筋ができたら、私も社長を引退して、ビールでも飲みながらいちサポーターとしてアビスパ福岡の試合を観戦したいと思っています。

(了)

【新貝 竜也】 


<COMPANY INFORMATION>
代 表:川森 敬史
所在地:福岡市東区香椎浜ふ頭1-2-17
設 立:1994年9月
資本金:3億7,155万円
売上高:(22/1)21億3,200万円
URL:https://www.avispa.co.jp/


<プロフィール>
川森 敬史
(かわもり・たかし)
1965年11月生まれ 、東京都出身。2015年3月、アビスパ福岡(株)代表取締役社長に就任。

(前)

関連記事