2024年04月19日( 金 )

ツアーの夜行臨時列車を季節列車に~JR九州への提案(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 近年、夜行列車が運転されるイベントが各地で行われるようになった。これを受けて、JR九州は2月25日(土)から翌26日(日)、夜行普通列車のリバイバル版として0泊2日の車中泊ツアー「郷愁の客車夜行『1121列車』の旅」を開催した。販売開始後10分で完売になるほどの人気を博し、第2弾として4月上旬に熊本から門司港へ向かう夜行列車のツアーを実施することも決まった。企画型の夜行列車のツアーは大井川鐵道、関東鉄道、いすみ鉄道なども実施していることから、潜在的な需要があると思われる。博多から日豊本線経由の鹿児島中央間での、夜行の季節列車の運行を提案したい。

今後の展開

 このように、今回、JR九州のツアー形式の夜行列車が運行されたわけだが、夜行列車の運行は人件費が高くなるためコストが嵩み、利益率は決して高くない。だが、JR九州は潜在的な需要が見込めると考えたうえで、インターネットで予約を受け付けるなどすればコストが抑えられる(チラシなどを印刷しなくてもよいことから)という判断にもとづき、この企画型ツアーの実現に踏み切ったと思われる。事実、2月25日に実施された、門司港を発車して八代へ向かう夜行列車のツアーは、販売開始から10分で売り切れるほどの好評を博したことから、4月に熊本発門司港行きの夜行列車のツアーを実施することが決まった。

 JR九州は九州島内の夜行列車として「ななつ星in九州」を1泊2日のコースで運行しているが、定員が7両編成で20名のため、一番割安な“スイート”を利用したとしても、大人1名あたり65万円と非常に高価である。それだけ高額な代金を徴収したとしても、専属のスタッフなどの人件費や維持管理費が嵩むため、利益が出づらい。ランニングコストが賄えている程度であると聞くが、「地域活性化」という面では大きく貢献している。

 JR九州は昼間の九州を周遊する列車として「36ぷらす3」を所有しているが、この列車は既存の設備のままでは夜行運転には適さない。

 夜行運転に適した車両を編成単位で一から製造するとなれば、莫大なコストがかかる。そこで、国鉄末期に導入された車両の台車と、車体の土台や冷房装置などを活用し、車体だけを新造した車両を、新たに「36ぷらす3」に1両ずつ組み込んで、試験的に運転することになると思われる。

 「West Express銀河」の”ノビノビ座席“は、かつての二段式B寝台車のような構造
写真3 
「West Express銀河」の”ノビノビ座席“は、
かつての二段式B寝台車のような構造

    新たに導入する車両は、かつてのB寝台車のような感じの簡易寝台車(写真3)や、JR西日本の「West Express銀河」のカーペット敷きの4人用などのような個室となる(写真4)。簡易寝台車や個室であれば、高速バスとの差別化が可能であるだけでなく、「36ぷらす3」にはビュッフェも備わるため(写真5)、より付加価値の高いサービス展開が可能となる。

 JR九州にとって日豊本線の大分以南は、「本線」とはいっても実質的には長大な単線電化のローカル線にほかならず、活性化が急務である。

写真4  「West Express銀河」は4人用のカーペット敷き個室を備える
写真4
 「West Express銀河」は
4人用のカーペット敷き個室を備える

    九州全体に高速道路網が張りめぐらされているうえ、西鉄や九州産業交通という大手バス会社があることから、九州の都市間輸送は高速バスの占める割合が高い。とくに博多~宮崎間に関しては、鉄道のシェアはごく僅かであるが、高速バスでは真似ができない「ニッチ」なサービスを展開することで、新たな活路を見出せる可能性がある。

 博多~宮崎間にはかつて夜行特急「日南」が運転されていた。平素は閑散としていたが、巨人軍が宮崎でキャンプを実施する時期はまとまった乗客があった。

 博多から鹿児島中央へ向かう往路は夜行列車として運転するが、鹿児島中央から博多へ戻る復路は、昼間の列車として運転することで、車両の運用効率を高めることができるだろう。

写真5
 「36ぷらす3」はビュッフェ付き

 「ななつ星in九州」のデザインを担当した水戸岡鋭治氏が、かつて出演したテレビ番組で、「庶民が乗車可能な寝台車をデザインしたい」と述べたことがあった。

 「36ぷらす3」に簡易寝台車や4人用のカーペット敷きの個室車両を組み込んだ編成の列車が好評であれば、夜行運転に適した車両を編成単位で新造して対応することになる。この場合、昼間に車両を遊ばせることは非効率になるため、JR西日本の「West Express銀河」のように昼間の使用も考慮したかたちで車両を導入するだけでなく、JR西日本管内へ乗り入れることも念頭に、交直両用の車両とする必要もある。

 まずは「36ぷらす3」の編成に簡易寝台車合とカーペット敷きの4人個室を組み込んで、週2日程度の試験運行から開始し、好評であれば季節列車に昇格させたい。さらに手応えが得られれば、夜行運転に適した車両を新造して、定期列車化してはどうか。そして、中長期的には、鹿児島中央~関西間を結ぶ寝台夜行列車の運行へと発展させていくべきであるだろう。

(了)

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