2024年04月24日( 水 )

アベノミクスで急成長する官製ファンド(前)

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kokkai 民間経済の自律的な成長より一足早く、霞が関の官僚機構の急成長が始まっている。安倍政権の経済政策「アベノミクス」が唱える成長戦略の実現を名目にして相次いで設立された官製ファンドがそれだ。民主党政権と打って変わって、霞が関の官僚機構に融和的な安倍政権が発足すると、各省が続々と手を挙げ、少なくとも8つが新設されて計11ファンドにもなった。

 民主党の野田政権を破って第2次安倍政権が2012年暮れに発足すると、10兆円規模の補正予算による「経済再生にむけた緊急経済対策」が策定され、その中で“成長戦略”が打ち出された。この成長戦略実現のために各省庁が相次いで設立したのが官製ファンドだった。もともとは小泉政権時代に不良債権処理を目的にして設立された産業再生機構(現在は解散)にその淵源があるが、経済産業省が産業再生機構の制度設計をまねて「産業革新機構」を2009年に設立すると、それまで「天下り」批判を気にして外郭団体を新設することに躊躇していた各省が「その手があった」といわんばかりに官製ファンドの設立に群がるようになった。

 まず農林水産省が安倍政権成立以前から温めていた同省初の官製ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」を2013年1月に設立すると、2月には国土交通省が「環境・不動産普及促進機構」を、3月には財政の元締めである財務省までもが、同省の息のかかった日本政策投資銀行に「競争力強化ファンド」をつくらせた。5月に入ると、天下り先が少ない環境省がどうしても新たに天下り先をつくりたいと「グリーンファイナンス推進機構」の設立にこぎつけ、10月には内閣府が「民間資金等活用事業推進機構」を設立。さらに経済産業省は同11月、同省としては三つ目になる官製ファンド「クールジャパン推進機構」を設立した。

 このころになると、さすがにその乱立ぶりに官邸も警戒心を強め、世耕弘成官房副長官が中心になって官邸に「官民ファンド統括アドバイザー委員会」を設置した。「増え続ける官製ファンドが何か投資の失敗をすれば、安倍政権にはねかえってくる」(世耕氏)と考えてのことで、官製ファンドの新設や活動状況に一定の歯止めをかけようと狙った。だが、霞が関の官僚機構の狡知さにかなわない。世耕氏もそれを御するほどの政治力はなかった。
 世耕氏中心にアドバイザリー委員会の会合が官邸で重ねられたが、それを無視するかのように国交省は14年10月、同省にとって二つ目の官製ファンドとなる「海外交通・都市開発事業支援機構」(通称インフラファンド)を新設。それまで官製ファンドとは縁がなかった文部科学省も「官民イノベーションプログラム」として、東大、京大、阪大、東北大の4大学に大学発ベンチャーを育成する名目で合計1,000億円規模の官製ベンチャーキャピタルを設立することを決めた。このうち東大以外の3大学にはすでにベンチャーキャピタルが設立されている。

(つづく)
【広田 三郎】

 
(後)

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