2024年05月03日( 金 )

いよいよ事業者公募が開始!~九大・箱崎キャンパス跡地

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コロナ禍での延期を経て、再開発PJが現実のものに

 コロナ禍で約2年間の延期を余儀なくされていた、九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくりに係る土地利用事業者の公募が、いよいよ開始された。

 当初は2020年度中に事業者公募を開始する予定だったが、新型コロナの感染拡大で企業の経済活動が停滞していることなどを理由に、2度にわたって延期を発表。今年2月に、公募開始時期を4月と発表していた。

 4月21日に発表された募集概要では、箱崎6丁目の約28.5ha(一般定期借地を含む)において、九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザインの実現を目指して、次の5項目の提案を求めるとしている。

①まちづくりのコンセプト
まちづくりコンセプト、環境共生、安心・安全への配慮、まちのビルドアップ

②スマートサービス
スマートサービスコンセプト、安全分野、健康分野、移動分野、防災分野、エネルギー・環境分野、分野自由・分野横断、先進的な取り組み、水素の利活用を促進する取り組み

③都市空間
広場・動線計画、緑空間の確保、街並み景観・歴史の継承

④都市機能
土地利用計画(6つの都市機能の配置計画等)、イノベーションを生み出す業務・研究機能、新たな来街者を呼び込む交流・にぎわい機能
※周辺の住環境等に配慮し、住戸数を制限しつつ多様な都市機能の誘導を図る。

⑤まちづくりマネジメント
エリアマネジメント組織の取り組み、スマートサービス促進機能、(仮称)イノベーション導入支援組織の取り組み

 募集要領の配布期間は、4月28日から来年1月30日まで。申込み受付期間は来年1月29・30日の2日間。その後、優先交渉権者が来年4月上旬に決定され、土地利用事業者の決定時期は25年度を予定している。

跡地再開発をめぐって、入念に協議・検討を実施

九大箱崎キャンパス跡地 18年9月末の伊都キャンパスへの統合移転完了をもって、大学キャンパスとしての役割を終えた箱崎キャンパス。1911年1月の大学創立からキャンパス閉校までの107年の間に、約16万7,000人の学生(学部・修士・博士の学位取得者)を輩出するとともに、社会の発展に貢献するさまざまな研究成果を生み出してきた。その歴史を継承する意味も込めて、一部の建物は近代建築物群として保存・活用される予定で、「旧九州帝国大学工学部本館」「旧九州帝国大学本部事務室棟」「旧九州帝国大学本部建築課棟」「旧九州帝国大学門衛所」の4棟については、国の登録有形文化財(建造物)に登録される見込みだが、今年3月に新規登録された147件には入らなかった。

 現在の箱崎キャンパス跡地は、そうした一部を除いた旧校舎などがすべて解体され、ほとんどが更地化。21年2月から今年3月末までは、九州大学箱崎キャンパス跡地等の基盤整備事業が行われていた。

 周辺エリアも含めて約50haもの広大な箱崎キャンパス跡地の再開発に向けては、閉校前からさまざまな協議が重ねられてきた。これまでに15回におよぶ跡地利用協議会(13年7月~20年10月)が開催されてきたほか、「跡地利用将来ビジョン」(13年2月)や「跡地利用計画」(15年3月)、「九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザイン」(18年7月)などを順次策定・公表。グランドデザインでは「まちづくりの基本的な考え方」として、「イノベーションを生み出す新たな拠点の創出」と「高質で快適なライフスタイルや都市空間づくり」の2つを設定。まちづくりの方向性として、平面・立体・複合的につながる多様な都市機能の誘導を図るほか、“ここ箱崎だからこそできるまちづくり”に向けてのまち全体の一体感を創出する空間整備や環境と共生した持続可能なまちの形成、良好なコミュニティを形成するマネジメントの仕組みづくり──などが示された。

 これらを踏まえたうえで、20年6月には福岡市が都市計画の決定・変更手続きを実施。これは、新たな拠点創出に向けて、地域拠点にふさわしい機能の導入を図るとともに、土地利用転換に向けた都市基盤を整えるためのもの。用途地域の変更や、市施行の土地区画整理事業の事業実施に向けての区域決定などが行われた。

 その後、事業者公募に向けた条件整理などが実施された。公募で提案を求める範囲は、箱崎キャンパス跡地などのまちづくりエリアのうち、UR都市機構が開発行為を行う南エリアの大部分と、福岡市が土地区画整理事業を行う北エリアの南側部分。事業者公募は20年度中に開始される予定だったが、その後コロナ禍によって延期を余儀なくされたのは、冒頭に述べた通りだ。

箱崎“新町”の出現で、福岡市の勢いがさらに加速

 今回の事業者公募の開始により、いよいよ箱崎キャンパス跡地の“本体”の新たなまちづくりが始まることになるが、並行して周辺での基盤整備も進んでいる。

 たとえば箱崎キャンパス跡地のすぐ近くのJR鹿児島本線の千早~箱崎駅間においては、今後の再開発を見込んで新駅が設置される。新駅は西鉄貝塚線および福岡市地下鉄の貝塚駅の東側付近で、既存のJR箱崎駅から約1.7km、JR千早駅からは約2.3kmの距離となる場所で、現在はJR線路の踏切があるところに、踏切を廃止して設置する予定。新駅の東西を歩行者などが行き来できるよう、市が自由通路を整備する方針で、事業費は概算で約13億円を見込んでおり、うち半額をJR九州が、残りを九大とURとが負担する。新駅の開業は25年を目標としている。

 また、貝塚駅(福岡市地下鉄/西鉄)および新設予定のJR新駅の駅前広場や、エリア内の道路・公園・緑地などの再配置に関する「貝塚駅周辺土地区画整理事業」も進行。同区画整理事業では、貝塚駅の西側に設けられた駅前広場から国道3号に向けて幅員14mの新たな区画道路を整備し、その道路によって既存の貝塚公園を南北に分割するほか、貝塚駅とJR新駅との間を広場等でつなぐことで、交通結節機能の強化を図る。事業施行期間は、事業計画の決定を公告した21年3月29日から、29年3月末(清算期間を除く)までを予定する。

 福岡市においては、都心部である天神や博多エリアで大規模な再開発プロジェクトが進んでいるが、都心部の周縁部においても「MARK IS 福岡ももち」(ホークスタウンモールを再開発、18年11月開業)や「ブランチ博多パピヨンガーデン」(パピヨンプラザを再開発、20年3月開業)、「ららぽーと福岡」(青果市場跡地を再開発、22年4月開業)など、いくつかの大規模な再開発が進行してきた。そのなかでも九大・箱崎キャンパス跡地の再開発は、群を抜いて広大な規模の再開発プロジェクトであり、これからの福岡市の都市開発において、ケタ違いのインパクトをもたらすことは間違いない。今後、事業者が決定して箱崎キャンパス跡地の新たなまちづくりがスタートすれば、福岡市が16年秋にスタートさせた「FUKUOKA Smart EAST」もいよいよ現実のものとして実装されていくことになるだろう。福岡市の勢いをさらに加速させるポテンシャルを秘めた、箱崎の地における新たなまちの出現に期待したい。

【坂田 憲治】

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