2024年05月09日( 木 )

福岡トップゼネコン・上村建設、初の中経は上振れ着地を予想(後)

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上村建設(株)
代表取締役社長 上村 英輔 氏

既存事業の強化に努め、北九州エリアにも注力

上村建設(株) 代表取締役社長 上村 英輔 氏
上村建設(株)
代表取締役社長 上村 英輔 氏

 ──2019年に設立60周年を迎えられた際に、第1次中期経営プラン(以下、中計)を策定されました。

 上村 「ウエムラグループ 中期経営プラン~福岡と共に未来を創る継承100年への挑戦~」は、会社設立60周年の節目に改めて事業の方向性を見つめ直すとともに、これから100年企業を目指しながらグループがさらに成長するために策定したものです。ウエムラグループ5年後のあるべき姿として「福岡市を軸とした福岡県全体のエリアを対象にグループ力を最大限に活かしたワンストップソリューションを提供し、顧客にとって最良のパートナーとなる」ことをビジョンとして掲げ、(1)「賃貸マンション建設・管理事業の強化」、(2)「『ワンストップサービス』提供体制の構築」、(3)「多様な建設事業の強化」の3つの戦略に沿って事業を展開してきました。とくにこれまでは賃貸マンション建設・管理事業に注力し過ぎて、それ以外の建設やサービスが若干ないがしろにされてきた部分もありましたので、この部分の抜本的なテコ入れを行い、攻めのスタイルへの転換を図っているところです。

 おかげさまで、上村建設の今期(23年10月期)は売上高285億円に着地する見込みで、第1次中計の目標であった売上高255億円は無事に上振れでクリアできそうです。

 ──近年は、北九州エリアにも注力されている印象です。

 上村 北九州エリアについては、第1次中計のエリア戦略に基づいて取り組んでいるところです。というのも北九州は依然として県下2番目の規模の都市であり、インフラも整っているほか、九州の玄関口という立地であるなど、やり方次第ではまだまだ事業展開の可能性が見込めるエリアだと考えています。やはり、熊本や鹿児島に出ていくよりも、足元である県内の大きなマーケット―北九州エリアに注力していこうということで、ハッピーハウスも北九州店を構えるなど、力を入れてやっています。

 ──JAさまとの関係の変化などは。

 上村 JAさまとのお付き合いは当社の創業当時から始まっており、福岡市近郊の各単協(福岡市農協、福岡市東部農協、筑紫農協、粕屋農協、糸島農協、宗像農協)のJA職員さまとともに、組合員さまの農地資産活用や節税対策などを目的として、賃貸アパート建設や貸テナント建設を展開してきました。JAさまとの結びつきは今も依然として強く、今後もお互いが成長していけるよう、協力体制の強化を図っていきたいと考えています。

 ──次期の中計については、いかがですか。

 上村 現在策定中ですが、24年度からの第2次中計では、第1次中計から引き継ぐ課題もありますが、新たに大きな課題への取り組みもいくつか検討しているところです。

 その1つが、グループがもつさまざまな情報を利活用できる共有データベースの構築です。先ほども言いましたが、これまで部署間の業務を連携する意識がなかったため、顧客、建築、改修、不動産などの膨大な情報やデータは部署ごとに管理していました。これをグループ共有のデータベースとして一元化して、業務に有効に活用しようとしています。これにより、お客さまにとって必要なご提案をタイムリーにご提供できる体制構築を目指しています。

 また、地域社会への貢献やグループの持続的な成長に向けて、新たな事業・サービスにも挑戦していく予定です。

 加えて、社員の幸福感につながる「働きやすさ改革」と「仕事の質と生産性の向上」にも取り組みます。もちろん、新たな商品開発戦略も策定中ですが、お客さまをハッピーにするためには、まず社員がハッピーな気持ちであることが大切であると考えています。

 いずれにしても、第1次中計で構築したグループの経営基盤の活用とともに、新たな事業・サービスに挑戦し、お客さまへの提供価値をさらに拡大していくことを目指しています。

上栄会とも切磋琢磨し、必要とされる“強い会社”に

 ──建設業界はどこも人手不足の状況で、とくに各社とも資格者の“分捕り合戦”の様相を呈していますが、御社はいかがですか。

 上村 たしかに資格者の獲り合いで、当社に入ってくる中途の方がいる一方で、逆に引き抜かれるケースもあります。ただ、最近とくに感じているのは、自社できちんとプロパー社員を育てていくことの重要性で、やはり愛社精神が違ってきます。優秀な新卒に入社していただくためにも、今後も働き方改革などを進めつつ、人事制度や評価制度をきちんと整えていくほか、今年11月からは給与のベースアップなども行っていく予定です。そして優秀な社員の能力を十二分に発揮できる環境を整備し、社員1人ひとりが強くなっていくことで、どの時代でも必要とされる会社であり続けたいと思っています。

 ──最後に、御社の協力会である「上栄会」については、いかがですか。

 上村 上栄会は1974年1月に当社の協力会社38社で発足したのが始まりで、来年1月には発会50周年の節目を迎えます。これだけ長きにわたって、工事施工および安全衛生管理の推進面で当社を支え続けてくれており、本当にありがたい存在だと心より感謝しております。

 一方で、長いお付き合いだからこそ懸念していることもあり、お互いが気付かないうちにぬるま湯のなかに浸かっていたら、現状以上の価値をつくり出していくことはできません。お互いにチャレンジ精神をもって、ともに成長していくような、そういった上栄会であってほしいと切に思っています。仕事の発注と受注だけの関係ではなく、共存共栄していくにあたってはやはり議論をぶつけ合って切磋琢磨していかないと、本当に良いものはつくれません。

 たとえば、上栄会の会員企業のなかには、当社としか付き合いのない企業がおられる一方で、いろいろな会社との付き合いがある企業もありますが、そうした企業からは「上村社長、そんなんじゃいかんよ。他はこんなことやっているよ」「上村建設の技術だったら、もっとこんなことができるはず」など、どんどんと意見を言っていただきたいと思っています。そういった関係性こそが、馴れ合いではない本当の意味でのお付き合いだと思います。

 今後、第2次中計も進んでいくことになりますが、引き続き上栄会の皆さまのお力添えをいただきながら、お客さまの信頼に今以上に応えていくためにも、強い会社づくりに邁進していきたいと思います。

(了)

【聞き手:永上 隼人/文・構成:坂田 憲治】


<プロフィール>
上村 英輔
(うえむら・えいすけ)
1981年12月、福岡市出身。芝浦工業大学システム工学部を卒業後、2005年4月に(株)穴吹工務店に入社し、現場監督を務める。08年4月に(株)福岡銀行へ入行。16年1月に上村建設(株)に入社。常務取締役・社長室長を経て、19年7月に代表取締役社長に就任した。

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<COMPANY INFORMATION>
代 表:上村 英輔
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2 博多エイトビル7F
設 立:1959年2月
資本金:1億円
URL:https://www.e-uemura.jp

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