2024年05月13日( 月 )

北九州市に聞く 武内新市政の「福北連携」(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 北九州市は市制60周年の節目の年となる今年2月20日、武内和久・新市長が誕生した。「人口100万都市の復活」を掲げる武内市政だが、未来への投資のための財源確保や人口減少にどう対処するかの政策のほか、福岡市との「福北連携」についての動向が注目される。武内市長の会見内容や、北九州市への取材から、同市の現在の取り組みや今後の方針をレポートする。

武内和久・北九州市長
「人口流出を食い止める」

武内市長(5月12日記者会見)
武内市長(5月12日記者会見)

 北九州市の人口は、91万8,479人(5月1日時点)。5年ごとに行われる国勢調査では、05年から4回連続で人口減少数ワースト1位となっている。武内市長は「昨年よりは社会的な人口減少のペースも鈍化しているものの、流れを反転させていきたい」とし、自身がトップセールスを行うことで企業や投資を誘致し、若者にとって魅力ある雇用の場を創出していくことを掲げた。また、子育ておよび教育環境の充実と合わせて、次世代の投資を実現させ、若者やファミリー層を呼び込むことで人口回復を図るという。

 5月25日の定例記者会見で武内市長は、成長戦略として「メガリージョン」「未来産業」「バックアップ力」の3つを示した。「メガリージョン」では、 北九州市単体ではなく、周辺の都市と連携した広域の新しい経済活動単位として、アジアに近い観光・物流の拠点とした北九州空港のゲートウェイ機能の強化を含めた経済成長を目指すとした。

 「未来産業」では、産業構造の変化に対応し、半導体・宇宙・グリーンを重視した未来産業の育成に取り組むとした。「バックアップ力」では、地震など災害リスクが低い、エネルギー・水の安定供給、交通インフラ、物流インフラ、地価が安いといった北九州市の強みをアピールし、本社機能の誘致などバックアップ機能をもてるまちとしての役割を担っていきたいとした。

滑走路延長工事、今秋着工へ
代替着陸で福岡空港と連携

 今年に入り福岡空港では、日本航空機など3社が午後10時までの「門限」に間に合わず羽田空港へのUターンを余儀なくされるという事案が続いた。福岡は国内有数の混雑空港であり、コロナ禍から航空需要が急回復した影響や、「門限」前の午後9時台に20便以上が発着する過密ダイヤとなっていることが原因となっている。

 これを受けて北九州市は、24時間運用可能な北九州空港における福岡空港の代替着陸(ダイバート)受入の検討を進め、乗客輸送に必要な県内の交通・宿泊関連の事業者リスト化など受入体制の整備を進めていた。

 そして6月11日、JALの羽田発福岡行き331便(乗客280名)のダイバート先として利用され、15日には、JAL335(羽田発19時40分-福岡着21時35分)が飛行機の整備作業で福岡空港の運用時間内に到着ができないため欠航となり、JAL4647便(羽田発-北九州着)の臨時便に振替運航、約260名の移動を可能にした。このことは、北九州空港の存在感を示すとともに、福北連携を後押ししたかたちだ。

北九州空港(北九州市提供)
北九州空港(北九州市提供)

 国土交通省は、北九州空港の滑走路を3,000mに延長する計画を2月28日に発表。北九州空港の貨物拠点化に向けては、福岡県をはじめとした自治体や地元の経済団体など65団体で構成された「北九州空港利用促進協議会」(06年設立)が要望活動を行っていた。なお、滑走路の延長は、今年秋ごろの着工を予定しているという。国交省によれば、事業期間は約4年、最短で27年度に供用開始予定で、総事業費は約130億円。便益は449億円となり、福岡県において39億円の経済波及効果が期待されるという。

 北九州空港は、国際貨物定期便が就航する九州・中国地方で唯一の空港であり、21年度の国際貨物取扱量は過去最高の約2万トン(国内第6位)である。一方、現状の滑走路長は2,500mで他空港と比較すると短く、国際貨物の高まるニーズに対応し、北米・欧州の主要都市への貨物直行便を運航するためには、滑走路長3,000mの確保が求められていた。

 空港企画課は、「滑走路延長事業計画においては、北米・欧州への貨物直行便が商用運航できるようになることを期待している」とした。

(了)

【松本 悠子】

(前)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

法人名

関連記事