【佐賀】国スポ開催で県内投資拡大なるか(前)
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サンライズパーク全体完成
佐賀県では2024年10月5日(土)から15日(火)および26日(土)から28日(月)にかけて、「SAGA2024国スポ・全障スポ」が開催される。
国スポは国民スポーツ大会の略で、元となっているのは国体こと国民体育大会だ。国体は各都道府県の持ち回り開催となっており、14年6月に第78回国民体育大会(23年開催予定)の開催県として佐賀県が内々定を受けたことから、県は競技用施設を整備するための基本方針や、施設の整備内容などを示した「佐賀県総合運動場等整備基本計画」を17年3月に策定した。国体開催を念頭に置いた同計画だったが、18年6月に「スポーツ基本法の一部を改正する法律」が成立したことを受け、国体の名称が国スポへと変更。これにより、佐賀県は記念すべき国スポ第1回大会の舞台となり、同年11月には、競技用施設などの整備概要が公表された。なお、コロナ禍の影響で20年開催予定だった鹿児島県での国体が延期されたことを受け、佐賀県での国スポ開催も当初の23年から1年延期され、24年開催予定となっている。
施設の整備エリアは、ここから新たなまちづくりやライフスタイルが始まり、佐賀を光り輝かせていくという想いと、日の出という地名にちなんで「SAGAサンライズパーク」と名付けられた。サンライズパークは、県下最大の水泳場・SAGAアクア、全天候型ウォーミングアップ走路などを備えた陸上競技場・SAGAスタジアム、九州最大級の約8,400席の観客席を有する多目的アリーナ・SAGAアリーナ、バレーボールから柔道まで、幅広く対応する総合体育館・SAGAプラザ(旧・佐賀県総合体育館)、多久市の人気カフェ「SCOLCAFE&D」も入るショップ&レストラン・パークテラスの大きく5つの施設で構成されている。
この5つの施設のなかで、21年10月に先行してアクアがオープン。次いで22年5月にスタジアムが、同年10月には、プラザのトレーニングルームがリニューアルオープンをはたした。そして23年5月、パークテラスとアリーナがオープンをはたし、サンライズパークは全体完成を迎えた。
サンライズパークの整備に係る総事業費は540億円。このうち、中核施設となるアリーナの総工費が257億円で、総事業費の約半分を占める。アリーナの建設費は当初197億円で予定されていたが、労務単価や建設費の高騰を受け、応札者の入札金額が予定価格を上回り不落に。そのため県は予算を増額し、2度目の入札で戸田建設(株)と地元3社(松尾建設、中野建設、上滝建設)によるJVが落札した経緯がある。当初の予定価格を大きく上回ることになったアリーナ建設をめぐっては、県議会でも説明不足との声が挙がったほか、無事落札者が決定したものの、新たに多額の血税が投入されることを鑑み、複雑な思いを抱いた県民も少なくなかった。
誘客装置としてのアリーナ
サンライズパークの中核施設であるアリーナは、S造・地上4階建、延床面積2万9,800m2の大型ハード。企業の会議(Meeting)や報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)といったビジネスイベントにも対応する、佐賀県初のMICE施設でもあり、23年5月のオープン後、一気に注目を集めることになった。
きっかけは、矢継ぎ早の人気イベントの開催だ。6月上旬にはトリノ五輪金メダリストの荒川静香氏など、人気プロフィギュアスケーターが一堂に会した「プリンスアイスワールド」が、6月中旬には人気ロックユニット、B'zのライブがそれぞれ開催された。県の試算によれば、イベント開催にともなう経済波及効果は、プリンスアイスワールドが9,380万円、B'zのライブが3億8,600万円で、アリーナ利用によって近隣エリアでの消費行動が活発化することを証明した。
アリーナの予約状況は好調で、スポーツやコンサートなどのイベント開催によって、土日を中心に24年度末まではほぼ満杯。週末にサンライズパークを訪れると、アリーナはいつも賑わっている状態だ。九州最大級の約8,400席の観客席を誇るため、視界の確保が懸念されるが、1階から4階までを最大勾配35度のすり鉢状にすることで、どの座席からでも見やすい工夫が凝らされているほか、観客がリラックスして過ごせるように、全座席にドリンクホルダーが備え付けられている。座席のバリエーションも豊富で、マス席やボックス席、車イス席などを用意。3階にはプレミアムフロアもあり、“スポーツホスピタリティ”を意識した空間設計がなされている。映像・照明・音響設備も魅力的で、国内では初となる3つの大型ビジョン(センター・リボン・壁面)の標準装備によって、迫力ある映像・光の演出が可能となっており、8月には「ディズニー・オン・アイス2023日本公演(佐賀)」も開催された。JR佐賀駅からアリーナまでは佐賀市営バスや昭和バスが1時間に2~3便運行しているほか、徒歩でも15分程度。また、隣接県である福岡県のMICE対応施設(マリンメッセ福岡、博多国際展示場&カンファレンスセンターなど)と比べて利用しやすい価格設定も、主催者側へのアピールポイントとなっている。
県内に人出と投資を呼び込む誘客施設として、順調な出足を切ったアリーナ。国スポ全障スポ終了後も、SAGAサンライズパークの顔としてその存在感を維持できるのか、動向が注目される。
(つづく)
【代 源太朗】
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