2024年05月06日( 月 )

歴史を直視する力

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、処理水の海洋放出に関して、メディアを含めて反対意見を非科学的なものと決めつけていないかと疑義を呈した8月31日付の記事を紹介する。

 いまからちょうど100年前の1923年9月1日に関東大震災が発生し、朝鮮人・中国人虐殺事件が起きた。未曾有の災害と流言飛語によってパニックが生み出され、多くの人が朝鮮人狩りに狂奔した。殺された人の数は6,000人前後。しかし、実数ははるかに多いと見られている。

 2011年3月11日に東日本大震災が起きた。この地震で東電福島第一原子力発電所は過酷事故を引き起こした。原子炉核燃料は溶融=メルトダウンした。しかし、原子炉メルトダウンの事実は長きにわたって隠ぺいされた。

 放射能汚染水は海洋に垂れ流された。溶け落ちた燃料デブリがいまどこにあるのかも定かでない。その後、燃料デブリに接触した放射能汚染水がタンクに貯められてきた。その汚染水が処理されて海洋投棄され始めた。

 海洋投棄に多くの人々が反対している。反対理由の中心は処理後汚染水の海洋投棄を東電に任せることはできないというもの。東電はこれまで数々の問題で改ざん・隠ぺいを繰り返してきた。処理後汚染水の海洋投棄で類似した問題が発生しないと言い切れない。外部から完全に監視可能な形態が採られる必要がある。

 処理後汚染水の海洋投棄に反対している者の多くは日本国民。中国や韓国野党、香港なども強く反対しているが日本の多くの識者、市民も反対している。

 ところが、日本の報道は処理後汚染水海洋投棄に反対する人々の反対理由を一切伝えない。トリチウム濃度を基準値以下に薄めているのだから問題はない。処理後汚染水を海洋投棄する「科学的根拠」はトリチウム濃度の低さ。異論を唱える者の主張は「科学的根拠に基づいていない」の1点張り。

 「異論を唱えること」=「科学的根拠に基づかない」という決めつけですべての報道を展開する。これはNHKも同じ。中国政府や中国の人々が処理後汚染水海洋投棄に反対することを、「歪んだ主張」「異常な行動」として伝えている。

 これでは相互理解も相互尊重も相互信頼も生まれるわけがない。「中国人はおかしい」「中国人が悪い」とのイメージが、こうした偏向報道によって刷り込まれる。政府とメディアが結託して中国の人々に対するイメージを悪化させるキャンペーンを展開しているようにしか見えない。

 100年前の震災発生時。「不逞鮮人が井戸に毒を入れた」「日本人を皆殺しにしようと火を付けた」との流言飛語が流布されて何の罪もない朝鮮人が多数虐殺された。

※続きは8月31日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「歴史を直視する力」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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