2024年05月24日( 金 )

【福岡・小笹】都心の森に生まれる「ここちよい人の居場所」(後)

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都市と自然の融合というジレンマ

造成前のSTANCE RESIDENCE 植物園外苑(仮称)
の敷地の様子

    敷地の特性はもちろん、ランドスケープにも生かされる。2棟構成のSR植物園外苑には、共用部として「森の中」という環境を生かして簡単な調理や給湯ができるキッチン設備と、ダイニングテーブル&チェアが設置される。グランピングのように、自然のなかでティーパーティやピクニックも可能な施設となっている。また、自然と触れ合いながら、学び・遊べる子どもひろばも設けられる。これらはいずれも、直射日光を遮る仕組みが施されたうえで、良い意味で周辺から閉ざされた空間となるよう木々や工作物が配置された。

 この点について佐々木慧氏は、「いかにそのままの地形や森を残したうえで、人の居場所をつくるかというところに力点を置きました。都市と自然を融合させることがテーマなのですが、そこには大きなジレンマが生じます。地形や周辺環境を生かしながら、ここちよいプライベート空間をつくる、そのためにはそのままの姿を残すことも必要ですし、手を入れることも必要です」と話してくれた。

ランドスケープのダイニングとキッチン イメージ
ランドスケープのダイニングとキッチン イメージ

 1,000坪の森は、手入れせずにそのまま残されるわけではない。「最初にまず森に入りました。長く人の手が入っていない森は日が入らず、地面はデコボコで水たまりも多く、とても人の居場所とは言い難い状態でした。森の環境の改善を図りつつ、人がここちよい空間にしていく、そのためには間伐が必要です。うまく間引くことで、日が入るようになり、木々も生き生きとし、人の居場所もできる。人の居場所には、開放感とプライバシーに配慮したキッチンやダイニング、広場をつくり、ここちよく過ごせる空間となるようデザインしました」(佐々木慧氏)。

 南側の筑肥新道は車の通行量も多く、店舗やその看板などもあるが、丸太を壁材に使った通路やキッチン、ダイニングを遮蔽物として活用することで、すべてを覆いかぶせるのではなく、曲線を生かしたデザインの壁とし、開放感を残しつつ隔絶された空間をつくり出した。

組織として拡大し、大プロジェクトにも挑戦したい

 会社名の「アクソノメトリック」は、傾斜させた状態の立体を正面から描く投影図法=アクソノメトリックが由来。建築のかたちを決定する拠り所を周辺環境、自然環境に求めることで、建築の内的な論理に依らない佐々木慧氏の設計手法から名付けられた。アクソノメトリックは、SR植物園外苑やNAHFのほか、大阪・関西万博ポップアップステージ、海浜公園内のホテル・BEACH SIDE HOTEL、海辺のレストラン・DILLY DALLYなど幅広い建物デザインを手がける。

 同社はスタッフ(正社員)10名とアトリエ系設計事務所としては大所帯だが、「これからも、面白いものをどんどんつくっていきたい。ありがたいことに、面白いものづくりの依頼を多くいただいているが、今の状態ではいずれ断らないといけないときが来る可能性もある。そうしないためにも、スタッフの採用を進めているところ。その結果、大きな面白い案件にも対応できる組織となれれば」と佐々木慧氏は話す。

 福岡県内でも複数のデザインプロジェクトを同時並行で進めているところで、これからアクソノメトリックのデザインした建物を見る機会が増えそうだ。

(了)

【永上 隼人】


<プロフィール>
佐々木 慧
(ささき・けい)
一級建築士。1987年、長崎県生まれ。2010年に九州大学芸術工学部卒業、13年に東京藝術大学大学院終了。藤本壮介建築設計事務所での勤務を経て、19年に独立し、21年にaxonometric(株)を設立。代表取締役に就任した。家具デザインから複合施設、ホテル、住宅、プレファブ建築開発、都市計画まで、多岐にわたるプロジェクトを手がける。九州大学、九州産業大学、九州工業大学非常勤講師を歴任。

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