2024年02月29日( 木 )

100周年・筑後川の恵みと治水の重要性を発信

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国土交通省九州地方整備局
筑後川河川事務所 吉田 大 氏

国土交通省九州地方整備局 筑後川河川事務所 吉田 大 氏

 今年、国が筑後川の改修などの治水対策を開始して100周年を迎える。流域では大雨による洪水被害が目立つが、日常的には豊かな恵みをもたらす地域でもあり、筑後川河川事務所は流域治水とレジリエンスの強化が大事だと訴える。所長・吉田大氏に、地域の取り組みについて話を聞いた。

筑後川本格改修100周年

 ──今年は筑後川本格改修100周年を迎えます。どのような取り組みを行っていますか。

 吉田 筑後川は洪水にたびたび見舞われていますが、流域は非常に豊かな地域で熊本、大分、佐賀、福岡の4県に「恵み」をもたらしてくれます。

 この恵みと治水の重要性を地域の方々に知ってもらうため、流域自治体での巡回パネル展、100周年ロゴマークを使った広報、21年に開設した流域治水企画室によるニュースレターの発刊など情報発信を行っています。

 治水面では「流域治水」がキーワードで、上流と下流の連携や、分野の異なる関係者の間での横の連携が重要です。各地域で取り組みが進んでおり、たとえば佐賀県のみやき町、吉野ヶ里町、上峰町、神埼市の4市町ではクリーク(貯水機能を備えた水路)の事前排水の連携が進んでいます。これらの市町はクリークの上流と下流という位置関係にあり、大雨が予想される際には上下流がタイミングを調整して排水するという取り組みです。今年から始まった取り組みですが、浸水被害を減らすなどの効果が出ているようです。ほかに福岡県小郡市では、水害についての歴史学習や排水ポンプ車の実地訓練などの取り組みが行われています。取り組み事項は各地域で異なりますが、当事務所は「流域治水」の旗振役・牽引役として、自治体の取り組みを支援するとともに、地域間で情報を共有してもらえるよう働きかけています。

 また、当事務所主催で10月22日に、流域治水に関するシンポジウムを久留米で開催します。治水のことだけでなく、広く筑後川について考えてもらうとともに、将来を担うお子さんから未来に向けた言葉を宣言していただくこととしています。次の100年に向かう取り組みになれば、と思っています。

今年7月の大雨災害、復旧に向けた取り組み

 ──7月10日にも筑後川流域地域、とくに田主丸地域で大雨による被害を受けましたが、復旧に向けどのような対応を行いましたか。

 吉田 大雨を受けて事務所は非常体制を敷きましたが、こうした防災対応は基本的には従来通りのものです。出張所の職員が現地を直接確認しに行くとともに、遠方からモニターでも確認します。

 国管轄の河川の施設では堤防決壊のような大きな被害はありませんでしたが、支流の巨瀬川の護岸被災箇所では、河川水位が下がった当日の夜から緊急対策を実施しました。翌日からは九地整の所有するヘリコプターから全体を把握するとともに、久留米市など流域の自治体に職員をリエゾン()として派遣し、情報収集を行いました。また、緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE」を派遣し、自治体の被災状況把握の支援などを行いました。

 今後の対策を考える際、巨瀬川の管理区間は国と県に分かれているため国と県が連携する必要があるほか、農地も多くあるため農地の関係者との連携も必要です。そのため巨瀬川流域を災害に強く強靱(レジリエント)な地域とすることを目的とし、8月28日に国と県、市の担当者で「巨瀬川流域の治水推進会議」を立ち上げました。今後は毎月1回開催し、短期・中長期に何を行うべきかについて議論し、年度内に取りまとめる予定です。

※リエゾンとは「仲介、橋渡しなど」という意味のフランス語。国土交通省などでは「災害対策現地情報連絡員」の愛称として用いており、被災自治体の情報収集や派遣元の団体と被災自治体間の調整などを目的に派遣される職員を指す。 ^

流域のレジリエンス強化

 ──筑後川の治水において重視している考え方はどのようなものでしょうか。

 吉田 重視している概念は「流域治水」であり、地域の「レジリエンス」(強靱性)の強化です。

 流域治水については先ほど述べた通りですが、レジリエンスの強化としては災害後、迅速に重要な公共機能を確保し、地域経済活動を再開することを目指します。たとえば、災害拠点病院のような重要施設では、迅速に医療活動を再開できるような備えが必要です。7月の大雨では、農機具メーカー(久留米市)や製麺所(うきは市)で機具が浸水するなどの被害が発生していますが、梅雨末期には面倒でも機具を高い場所に上げておくという意識を持つ方も出てきています。中長期的に、そうした意識が醸成され広がっていくことを目指しています。

 ──久留米大学のグラウンドを雨水貯留施設として活用するという話がありますね。

 吉田 2020年に国・県・市が連携して策定した「下弓削川・江川総合内水対策計画」に基づき市と久留米大学が連携した事業で、9月10日に完成式がありました。原口新五市長は治水対策を重視されており、治水関連予算を大きく増やし取り組みを加速しています。

 支川の赤谷川流域(朝倉市)では17年に大きな被害を受けました。県管理河川ではありますが、国が復旧のため砂防事業・河川事業を行い、7月に県に管理を引き渡したところです。この流域でも7月に大雨に見舞われましたが、事業の防災効果が確認できました。具体的には今回の雨量は17年と同程度でしたが、家屋被害は17年に258件であったのが今回は0件で、朝倉市では17年に33名の犠牲者を出しましたが、今回は軽傷者もいないと聞いています。今後も、このようなハード対策を進めていきたいと思います。

 ただ、これからも気候変動にともなう降雨の激化が続くことを考えると、ハード対策では防ぎきれない場合も想定せざるを得ません。被害が想定される地域においては、住宅を高くする、雨に強い農作物をつくるなどリスクに備えることも「流域治水」の取り組みの1つであり、引き続き関係者と連携しつつ、地域の方々との意識の共有を図っていきます。

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
吉田  大
(よしだ・ひろし)
1969年、福井県生まれ。94年に建設省(現・国土交通省)入省。内閣官房国土強靱化推進室、(独)水資源機構を経て、2021年7月より現職。

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