2024年04月29日( 月 )

「マンション政策の在り方」を国交省が取りまとめ

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 日本ではマンションの老朽化と居住者の高齢化が同時に進行している。この状況に対応するため、国土交通省では「今後のマンション政策の在り方に関する検討会」の取りまとめ内容をこのほど公表した。これは、大きく「管理・修繕」と「建替えなど」に関する現状や課題、施策の方向性が示されており、マンション政策全般についての大綱と位置づけられ、デベロッパーや建設事業者にとって今後の指針となるものだ。

より長期にわたる修繕計画策定へ

 国交省がまとめた資料によると、築40年超のマンションは2001年末の9万戸から21末には115万戸に急増。さらに、その20年後の41年には425万戸になると推計されている【図1】。一方で、世帯主が70歳以上の人が、「築40年以上」の住戸に48%住んでいるとも推計している【図2】。このような状況を踏まえ、検討会では「管理・修繕」と「建替えなど」に関する現状や課題、施策の方向性を示している。

 管理・修繕についての現状・課題については、(1)マンションの長寿命化の推進、(2)適切な修繕工事などの実施、(3)管理不全マンションへの対応、(4)管理組合役員の担い手不足、(5)定期借地権マンションの今日的評価、(6)大規模マンション特有の課題への対応──の6項目を挙げている。マンションの長寿命化の推進策については、建替えが入居者の同意を必要とすることなどにより、「すべてのマンションの建替えを行うことは非現実的」としたうえで、通常の長期修繕計画よりもさらに長期間の計画の在り方を検討すべきとした。

 適切な修繕工事などの実施については、「段階増額積立方式」で大幅な積立金の引き上げが必要な場合、予定通り引き上げできない恐れがあるとしたうえで、適切な修繕積立金の引き上げ幅などについて検討を行うとしている。また、管理組合がより良い設計コンサルタントを選択することが難しいことから、適切な設計コンサルタントを判別しやすくする仕組みづくりの検討が必要としている。

 管理不全マンションへの対応では、助言・指導・勧告を行っても、合意形成ができず是正に至らない恐れがあり、地方公共団体の権限の強化について言及した。このほか、大規模マンション特有の課題として、取り扱う金額(管理費、修繕積立金)に見合った監査体制となっていないことも指摘。その在り方について、専門家の活用を念頭に検討を行うなどとした。

住戸面積基準の引き下げも視野

 建替えなどの現状・課題については、(1)円滑な建替え事業などに向けた環境整備、(2)多様なニーズに対応した事業手法、(3)自主建替えの円滑化──の3項目を挙げた。このうち、円滑な建替え事業などに向けた環境整備では、法令で原則50m2以上と定める建替え後の住戸面積基準が、区分所有者の負担増加につながり、建替えのハードルを高くしていると指摘【図3】。世帯人数の変化や地方公共団体の意見なども踏まえ、面積基準の引き下げなどについて検討すべきとしている。

 また、既存不適格の場合は形態規制(容積率や日影規制など)が制約となって、事業性や合意形成の確保が困難となっている場合があり、地方公共団体が行う独自の緩和事例などを収集し、横展開を図ることを検討する必要があるとした。団地型マンションの再生では、これまで講じてきた施策の活用状況などについて検証が必要としたうえで、施策の活用状況、現行の規制や各種ガイドライン・マニュアルの内容を踏まえた行政の運用実態、事業者の建替えニーズなどの把握を進めるべきとしている。

 多様なニーズに対応した事業手法については、余剰容積率の減少や仮移転にともなう引越し負担の重さから、現地以外への住み替えを行うニーズが増えることも念頭に、住み替えを行う区分所有者の負担軽減に向けた検討を行うとしている。また、隣接地や底地の権利者による協力が得られない場合、建替え事業が進捗しないリスクもあるが、彼らが建替え事業に参加しやすい方策についても検討を行うとした。

標準管理規約やガイドラインも見直しへ

 デベロッパーなどが参加しない自主建替えの円滑化に関しては、管理組合や区分所有者が主体性をもって事業を実施するためのノウハウが未整理と指摘。自主建替えにおける実態把握や金融支援、専門家活用の在り方に関する検討を踏まえ、マニュアルの整備などを進めるとしている。

 国交省は検討方針が明らかになった事項については今後、マンションの標準管理規約や管理計画認定基準、ガイドラインの見直しなど、施策の具体化に向けた動きを始める。また、取りまとめについて、マンション居住者はもちろん、管理業者、修繕工事会社、設計コンサルタントの従業員、マンション管理士などの専門家、地方公共団体の職員といった関係者の関心を喚起するため、同省HPでの公開や意見募集などを通じ、広く周知するとしている。

【田中 直輝】

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