2024年03月03日( 日 )

鉄道インフラの老朽化と今後の課題(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

運輸評論家 堀内 重人

 九州のローカル鉄道で、老朽化した線路などの社会インフラの維持管理が課題になっている。九州の鉄道は、1889年に開業しているから、130年以上の歴史があり、日田彦山線や平成筑豊鉄道などでは、明治時代に掘削されたトンネルも見られるなど、老朽化が進行しつつあるといえる。この問題は、九州だけではなく、日本全体に共通の問題でもある。
 そんな中、10月1日からは、地域公共交通活性化再生法が改正され、「鉄道事業再構築協議会」の創設が可能となり、国も従来以上に鉄道事業の存続・活性化に関わるようになった。再構築協議会を開催して、鉄道事業の活性化を目指すようになった場合は、従来よりも手厚い補助が実施されるようになるなど、改善が見られる。
 本稿では老朽化が進むインフラを更新させるための財源確保策についても、言及することにしたい。

地域住民との連携と新たな収入源の確保の方策

 前回提案した以下の4つについて解説しよう。

 (1)「52席の至福」(西武鉄道)のような観光列車を導入して、ローカル線の増収を目指す
 (2)サポーターの出資を募り、欠損補助の資金を得る
 (3)ローカル線・ローカル鉄道に対する評価基準を変える
 (4)JR九州などが行う不動産事業など、鉄道事業以外の事業を強化して、鉄道事業の損失を内部補助する原資を生み出す

 ローカル鉄道などは、生活路線としての基本は維持しつつ、「観光鉄道化」して、外部から観光客を呼び込む必要がある。だが観光に特化した鉄道にすると、地震や台風などによる自然災害で被災した際、風評被害に弱い鉄道になる。それを回避するためには、基本はあくまでも「生活路線」である。

 そうなると(1)の観光列車を運行することは、その鉄道を活性化させるうえで有効となる。観光列車を運転すれば、運賃・料金以外に、その列車に関連するグッズが売れたり、それに関連するロイヤリティーが、鉄道事業者に入る。つまり運賃・料金以外の収入源の確保が可能となる。

 (2)に関しては、「鉄道事業者任せ」「行政任せ」ではなく、地域住民や有志がサポーターとして出資を行い、ローカル鉄道の損失を補てんする方法である。各自治体の財政事情も苦しいとなれば、サポーターを募る方法は是非とも必要だ。

ローカル鉄道の地域経済における存在意義を拡大する

或る列車 イメージ    (3)は、従来は「採算性」が評価基準であったが、「52席の至福」のような観光グルメ列車を運転することで、「地産地消」という考え方が入る。つまり地元産の食材を、地元の業者が調理して、観光グルメ列車の利用者に提供するため、地域にお金が落ちる。またそれにより新たな雇用も創出される。これは鉄道が生み出す新しい「便益」である。このようにローカル鉄道の経済的な存在意義を新しく付加することが重要である。

 観光グルメ列車を運転することにより、鉄道から生じる損失と地元に生じる便益を比較して、後者の方が多ければ、自治体などが欠損補助を行ってでも、鉄道を存続させる動機付けができる。森栗茂一・大阪大学教授は、「『採算性』は説得、『補助金』は納得」と、日本交通学会関西部会などでコメントしたが、グルメ列車を運行することで、地元も欠損補助を行うことに納得しやすい補助対象として、鉄道の性質を変えることができる。

 一方、鉄道の廃止を検討している自治体や事業者は、鉄道沿線から離れた地域でアンケート調査を実施して、廃止に向けた合意形成を行う。事実、2008年3月末で廃止された三木鉄道は、三木市長が三木鉄道の社長でもあり、かつ「三木鉄道の廃止」を公約に掲げて当選したため、三木鉄道の沿線から離れた地域でアンケート調査を実施し、廃止に向けた合意形成を行った。

 グルメ列車で提供する食材は、沿線から離れた畑などから供給され、それらを調製する事業者も、沿線から離れていたりする。しかし、ただ鉄道が存在することで、新規の需要や雇用が生み出されるため、たとえ自分たちが鉄道を利用しなくても、「存続に賛成」と意思表示するようになる。ローカル線の利用者を増やすことによる採算性の確保は、少子化や過疎化の進展などもあって現実的ではない。しかし、グルメ列車等の企画による派生的な鉄道便益を発生させることによって、「利用しないが、便益を享受する層」を増やすことは、前者と比較すれば実現可能である。このことにより、地域経済における鉄道の存在意義を拡大し、補助金の対象可能性を増やすことが、ローカル線の存続戦略として必要になるだろう。

 (4)に関しては、JR九州は厳しい経営状況にあるにも関わらず、不動産事業やホテル事業など、鉄道事業以外の事業を強化して、鉄道事業の損失を内部補助している。この場合は、異なる事業の利益で鉄道事業の損失を内部補助することになるため、黒字路線の利用者に負荷を掛ける行為にはならない。人口減少や過疎化の進展など、鉄道事業者を取り巻く経営環境は厳しさを増すため、不動産・ホテル事業など、他の利益の出る事業を育成することも課題といえる。

 以上のように、今後は鉄道事業の採算性だけを見るのではなく、地域に波及する経済効果も加味して、鉄道の価値を評価する時代になったといえる。

 社会インフラの老朽化に関しては、トンネルよりも橋梁のほうが、自然災害による流出の問題もあることから、筆者は深刻だと考える。鉄道事業再構築協議会が開催さえ、鉄道の活性化が決まれば、インフラの更新に対しても、国から補助が充実するようになったが、サポーターを募るなど、鉄道会社や各自治体の知恵を出しながら、新たな収入源や顧客を獲得して、増収・増益を目指す必要がある。

(了)

(中)

関連記事