2024年05月27日( 月 )

木原防衛相の自衛隊政治利用発言──長崎4区・金子陣営は無法集団か?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
木原稔防衛大臣
木原 稔 防衛大臣

 岸田政権の命運を左右すると注目された衆院長崎4区補選(10月22日投開票)で初当選した金子容三候補(自民公認・公明推薦)は、「法律違反をしてでも勝つ」という考えなのか。こんな疑問が芽生えたのは、ラストサンデー(15日)の個人演説会。岸田首相と入れ違いで現地入りした木原稔防衛大臣が「金子候補への応援が自衛隊に報いることになる」という、自衛隊政治利用発言が飛び出したときのことだ。

 まず木原大臣は「佐世保は自衛官やその家族が誇りをもって過ごしている街」と切り出し、岸田政権が安保三文書改訂で防衛費の倍増可能と紹介、こう続けた。

「倍増で防衛装備品なども買うが、自衛官の処遇改善であったり、駐屯地の古い施設はもう一度整備をし直すといったさまざまな福利厚生を含めて処遇の改善をしていく。だが、そういう防衛予算にも野党は反対。IRにも反対。私はそういう方に佐世保の代表になってほしくない。(中略)金子さんを応援することが自衛隊ならびにご家族に対し、その苦労に報いることになるし、佐世保の発展にもつながると確信をしている」

 自衛隊の政治的中立を損ねると同時に、公務員の地位利用を禁ずる公職選挙法違反も濃厚。選挙区内の有権者である自衛隊員やその家族に対して“人参”(駐屯地の施設再整備など利益誘導)をぶら下げる一方、その予算増額に尽力する自公支援候補への応援を呼びかけたからだ。自民党得意の土建選挙、「地元の建設業者が儲かる公共事業予算増に汗をかく自民党への投票を呼び掛ける」と重なり合うのだ。

 木原大臣発言の翌16日に立民の安住淳・国対委員長が「罷免に値する」と批判したが、金子陣営は、大臣罷免の恐れのある応援演説をしてもらってでも当選を果たそうとした無法集団のようにみえるのだ。 

 投開票日の10月22日、当確が出て万歳をした後、NHKの代表取材となったが、木原大臣発言に関する質問はなかった。そこで関係者の挨拶などが終わって支援者との握手を始めた金子氏に向かって、私は「金子さん、自衛隊の政治利用発言について一言。選挙違反しても勝つのか。勝つという考えか」と声かけ質問をしたのだ。しかし、すぐに陣営スタッフが「お静まりください」と言って接近を阻んだので、「囲みをやりましょう。自衛隊の政治利用発言、囲みで答えてくださいよ」と大声で叫んだが、金子氏からは一言も返ってくることはなかった。

 開票を見守る選挙事務所では当確後の代表取材に続いて、各社の囲み取材が行われることが多い。そこで、会場からいったん退出した金子氏への追いかけ(声かけ)取材が終わった後、万歳をしたフロアに戻ってみると、記者たちが囲み取材が始まるのを待っていた。当然、記者団の輪に加わって自衛隊政治利用発言について聞こうと待機していると、金子陣営のスタッフ2人が私の前に立ちはだかってきた。立ち退くように求めても移動せず、記者団の輪のなかに陣営スタッフ2人(お笑い芸人「ナイツ」の塙宣之氏似の中年男性と若い長身男性)が割り込むという異様な光景が出現したのだ。

 これに対して私は、取材妨害の証拠を残そうと動画撮影を開始すると、塙氏似の陣営スタッフは「私は一般人」「肖像権がある」と言いながら隣の男性に「警察を呼んで」と指示したのだ。

 そのため私は「(取材を)邪魔したのを撮影するのを何で警察に通報するのか」「囲みに集中しましょう」と抗議。「囲み取材を妨害するから抗議の意味で撮った。囲み取材ができたら流さない」と約束もしたが、数分後に警察が到着。取り調べのために退去を迫られたが、「囲みの後でやりましょう」と移動を拒否、抗議をし続けた。

「取材妨害をしているので(陣営スタッフを)撮影をしたら警察を呼ばれただけ。何で取材妨害をするのか、警察まで呼んで。おかしいではないか。囲みも参加させないのか。金子さんはこんなことをやって喜ぶと思うのですか。当選に泥を塗るのではないか」

「長崎県警の人、何でここにきたのか。囲み取材を妨害するから動画を撮っただけで警察に通報して、それで来るのか。おかしいではないか、こんな程度のことで呼んで。囲み取材に集中しましょう。ここ(陣営スタッフが囲み取材の記者団の中)にいるのがおかしいではないか。記者団のところに何で、こんなに出張ってくるのか」

 こうした押し問答を警察官や陣営スタッフとしているうちに囲み自体が中止となった。別の陣営スタッフがやってきて「囲み取材は中止させていただきたいと思うので、どうぞ、よろしくお願いします。すいません」と宣言したのだ。

 そして、もう1人の小太りの男性スタッフはこう言い放った。「あなたは選挙中も駆け寄ってきたりしたでしょう。ウグイスさんたちは生命の危機を感じた。そういう人がここにいた」。たしかに補選中に車に乗り込んだ金子氏に駆け寄って声かけ質問をした。

 その様子は、10月13日の本サイト記事「僅差の長崎4区補選、世襲隠しの弔い合戦演出作戦は成功するか(前)」のなかで、「12日に平戸市での街宣を終えて車に乗り込んだ金子候補に『日興証券コネ入社説について一言、県の基金付け替えと交換条件だったのではないか。(長崎県知事だった)父親の政治力で民間企業に就職したのではないか』と聞いたが、一言も答えずにマイクで演説を始めながら走り去った」と紹介したが、このときにウグイス嬢が生命の危機を感じたと金子陣営は主張。厳しい質問をする記者に危険人物というレッテルを貼り、差別的報道対応(取材妨害による記者排除)をしているとしか見えないのだ。

 法律違反の疑いのある木原防衛大臣の自衛隊政治利用発言に加えて、それを問い質そうとする記者への取材妨害もした金子陣営だが、補選では低投票率に助けられて当選したものの、2年以内にある総選挙では投票率アップでさらなる激戦が予想される。前哨戦の補選では「選挙違反してでも勝つ」という何でもありの総力戦で乗り切ったが、本戦となる総選挙で同じ手法が通用するとは限らないのだ。

 なお金子氏への声かけ質問から囲み取材中止に至る間の音声データは、動画配信の「フランス10」が10月29日に公開している。

 昨年2月の長崎県知事選の時も選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏に通報されて長崎署に拘束されたが、その再現となったのだ。関連動画や記事は以下の通りだ。

【横田一 現場直撃】大石陣営の取材を大濱崎たくま氏に妨害、通報、強制的に移動させられた場面【長崎県知事選2022】

【横田一の現場直撃 No.151】横田ついに拘束!長崎県 土着利権の勝利/20220221

【長崎県知事選】大石新知事陣営による力づくでの取材妨害 これは暴力だ! 

【ジャーナリスト/横田 一】

関連キーワード

関連記事