23年地価調査のポイント、博多・天神・西鉄沿線・郊外（5）

市内・郊外の住宅地

　前回に続き、郊外の住宅地でも上昇が続いている。躍進を続けるのは「輝国2-24-16-1」で、3年連続で2ケタ増となったほか、上昇率は前回を1ポイント上回った。眼下の、三井不動産レジデンシャル（株）による大型分譲マンション・パークホームズ六本松フォレストクロス（168戸）も完売をはたした。中央区からは、「桜坂2-8-2」（10.9％）、「草香江2-6-14」（13.7％）、「梅光園2-5-1」（12.5％）、城南区からは「鳥飼7-1-10」（10.2％）、「別府5-13-42」（11.1％）、早良区からは「次郎丸1-3-21」（12.9％）、「野芥1-13-25」（12.8％）、「賀茂4-37-12」（12.0％）と、依然として地下鉄七隈線の沿線でも地価上昇が続く。

　「梅光園2-5-1」の南側、江戸時代中期に黒田家の別荘として設けられた友泉亭公園を視界に収める笹丘1丁目では、地場のマンションデベロッパー・（株）シフトライフが分譲マンション・アメイズ友泉亭ザ・ヒルズ（48戸）の開発計画を進めているところ。

　なお、小笹ではエンクレストガーデン福岡（364戸）、スタンスレジデンス植物園外苑（98戸）、平和ではジェイグラン平和（82戸）の開発も進行中。これらマンションだけでなく、七隈線沿線や中央区の郊外では、地価上昇を裏付けるように戸建住宅の建設も散見される。

大野城・西鉄沿線

　福岡市外で注目したいのが、「高架化」「新駅誕生」「駅舎リニューアル」の完了を目前に控える西鉄天神大牟田線の沿線だ（これらの効果などについては別頁で詳述する）。駅周辺の地価が10％超の上昇となった地点も珍しくなく、地価も大野城市や春日市の対象地点は、前述の輝国や那珂を上回るほか、「塩原3-13-13」（30.7万円）、「平尾5-11-1」（37万円）と比べても遜色ない。なかでも顕著なのが大野城市で、春日原駅まで10分圏内の「錦町4-3-30」では14.3％、白木原駅まで徒歩3分の「白木原1-11-4」では12.1％の上昇率となった。

　下大利駅まで徒歩2分の「下大利1-9-31」も、12.0％の上昇となった。下大利駅の東口から徒歩3分の立地では、地場のマンションデベロッパー・（株）ファミリーが分譲マンション・ファーネスト下大利駅前レジスタ（43戸）の開発を進めている。同社は完成を来年6月に控えるファーネスト春日原ルシエ（58戸）、今年10月に完成を控えるファーネスト大野城ルアナガーデン（40戸）のほか、ファーネスト春日原グレイス（52戸）、ファーネスト白木原駅前ガーデン（55戸）など、春日・大野城エリアで多数の開発実績を有する。

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　今回の地価調査の結果からは、天神と博多の拡張を中心に、「福岡都市圏の底上げ」が見て取れた。ただ、利便性が高い地下鉄や西鉄、JR鹿児島本線の駅周辺を除く県内のほぼ全域で上昇したことには違和感を覚える。バブル崩壊やリーマン・ショックの前にも、地価上昇の影響はどんどんと郊外に伸びていったからだ。すでに、建売業者の販売在庫は増加傾向にあるといわれており、戸建供給の減少がより顕著になっていけば、利便性が高いエリア以外では地価下落が起きてもおかしくない。

　また、天神・博多の拡張を裏付ける再開発プロジェクトの進捗にも、不安感が残る。新築オフィスビル募集賃料は「坪3万円」も珍しくなくなった。都心の賃料単価が上昇するのは喜ばしいことではあるが、「1年を超えるフリーレント」でも床が埋まらないビルもあると聞く。

　福岡市は、2024年度にマスタープランの策定を計画している。九州のリーダー都市として、長期的な視点に立った計画となることに期待したい。

（了）

【永上　隼人】