2024年05月19日( 日 )

23年地価調査のポイント、博多・天神・西鉄沿線・郊外(4)

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北へ回帰する天神

 九州最大の繁華街・天神の拡張も見逃せない。商業地の価格順トップ10のうち、6地点が天神のある中央区、うち3地点が「天神」となった。なかでも価格順4位となった「天神4-3-8外」は3年連続2ケタ増となり、上昇率でも県内8位で、21年比では100万円以上も上昇した。同地点は、総売場面積6,700坪超の大型商業施設・ミーナ天神で、今年4月28日にリニューアルオープンしたばかり。テナントには九州最大級のユニクロのほか、天神南からロフトが移転したことでも話題となった。ロフトの移転は、「天神の北側回帰」をイメージさせた。というのも、すでに竣工した「天神ビジネスセンター」「福岡大名ガーデンシティ」、建設中の「福ビル街区」はいずれも天神の北側に立地するからだ。さらに、福岡中央郵便局とイオンショッパーズ福岡の建替えプロジェクトも現実味を帯びだしたところだ。

 北天神で注目されていたのは、福岡市中央区長浜の「釣船茶屋 ざうお 天神店」跡だろう。同店らは昨年8月、土地の所有者である日本貨物鉄道(株)(以下、JR貨物)の方針により、賃貸借契約期間の満了にともない閉店。JR貨物の所有地の面積は約3,000坪にもおよび、「長浜鮮魚市場との一体開発」を期待する声もあった。だが、その期待はあっけなく裏切られそうである。

 JR貨物は、旧国鉄の貨物部門を承継した貨物鉄道事業を運営する公共性の高い会社であり、北天神エリアの長期的な発展を考える余地がありそうなものだが、結局は「家電量販店」を誘致して終わりとなりそうだ。「長浜」といえばラーメンはもちろん、屋台や鮮魚市場などの食に関連して人々を惹きつけるコンテンツを複数有しており、親富孝通りとの動線ができれば、北天神は大きく化ける可能性もあったのだが、それだけに残念である。

 長浜1丁目と交差点を接する那の津1丁目のガソリンスタンド跡地は、高山質店のグループ会社が取得。出店計画は不明だが、高山質店の店舗建設が予想され、視認性の良い立地だけにPR効果を狙った旗艦店となる可能性が高いと見られる。現状はコインパーキングとして運用されている。

 天神拡張の代表格は「舞鶴」の地価上昇だろう。「舞鶴3-6-17」「舞鶴1-4-30」はいずれも3年連続2ケタ増となっており、いずれも今回の上昇率は15%を上回った。赤坂エリア南側の「赤坂3-9-24」も3年連続2ケタ増となった。

ひろがる南天神

 そしてもちろん、天神の南でも地価高騰は続いている。なかでも「中央区清川」は大きくイメージを変えたエリアである。賃貸マンション開発はこれまでも見受けられたが、近年は分譲マンション開発も散見されるようになった。その主なプレイヤーは県外デベロッパーだ。旧博多部でも存在感があった明和地所(株)(東京都渋谷区)は、清川でもマンション開発を行っているほか、(株)オープンハウスグループ(東京都千代田区)も分譲マンション開発を進めている。

 清川の西側、「中央区高砂」は薬院や平尾に接していることもあり、この1年で分譲マンション開発の新規計画は見つからなかったが、賃貸マンションやオフィス、テナントビルの開発計画は散見された。県内上昇率3位となった「高砂2-6-23」は、日赤通りから少し入った6階建の賃貸マンションで、最寄り駅の西鉄・平尾駅までは徒歩10分、同・薬院駅までは徒歩13分。前回の2位からランクを下げたものの、上昇率は0.1ポイント上回った。3年連続で15%超の上昇を続けている。「高宮2-10-25」も前回に続き、10%超の上昇となった。

 西鉄・平尾駅の周辺では、地場のマンションデベロッパー・(株)LANDICが複数の開発プロジェクトを進めてきた。駅前では『暮らしの気付き』を体感できる施設・L+ HIRAOを22年に開業したほか、店舗およびクリニック、100戸超の住戸を含む複合施設の開発が行われている。また、高宮通り沿いでは分譲マンション・デュレジア平尾プレミアム(86戸)が来年2月の完成を控えており、さらに近接する那の川2丁目でも分譲マンション・デュレジア平尾テラス(仮称)(62戸)の開発計画がある。平尾エリアの特性を生かした、カフェを中心に据える開発は、地場デベロッパーならではのプロジェクトだ。

(つづく)

【永上 隼人】

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