2024年04月29日( 月 )

多様な特性を内包するエリア・小倉(4)

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小倉南区
北区との区堺に位置する、人気の高い城野エリア

 市域の約35%を占めるなど、市内で最も広い面積をもつ小倉南区は、区内をJR日豊本線や日田彦山線、モノレールなどが通るほか、九州自動車道や東九州自動車道、北九州都市高速、国道10号、国道322号などの大動脈も走っていることから、主に小倉北区の中心市街地に対してのベッドタウンとしての発展を遂げてきたエリアだ。区北部の城野や下曽根の周辺を中心に住宅街が広がる一方で、区南部の平尾台や、区東部の曽根干潟、日本有数の竹林面積を誇る区西部の合馬地区など、自然豊かな地域も数多く残されている。また、陸地で接してはいないが、周防灘に浮かぶ海上空港である北九州空港も小倉南区に含まれており、隣接する苅田町の工業地帯を働く場とする住民も多く住んでいる。

 そんな小倉南区のなかで、とくに近年目覚ましい開発が進んでいる場所の1つが、城野エリアだ。一口に城野エリアといっても、実は小倉北区と小倉南区の区境をまたいで市街地が連担している。日豊本線と日田彦山線の分岐点となるJR城野駅の北側では、陸上自衛隊の城野分屯地跡地を再開発したゼロ・カーボン先進街区のまちづくり「みんなの未来区 BONJONO(ボン・ジョーノ)」が進んでいるが、ここは小倉北区東城野町にあたる。一方で、駅南側の小倉南区エリアでも、「城野駅南地区都市再生整備計画」として14年度から18年度までの5年間の事業期間で都市開発が進行。これは城野エリアといっても、北はJR線路から、南は北九州都市高速1号線までの約108haの広範なエリアで実施され、小倉南区役所をはじめとした公共施設等が集積する城野駅南地区の魅力を高め、誰もが安心・快適に生活できる文化的で質の高いまちづくりを推進することを目的として行われたもの。具体的には、総合療育センターの集約・再整備や北九州特別支援学校と企救特別支援学校の両施設の統合整備を行うほか、地区の中心道路となる若園重住2号線の整備などが行われた。

 こうして北区・南区にまたがる城野エリアの魅力や利便性が向上していくなか、民間によるマンションなどの開発も活発になっている。JR城野駅の西側に位置する富士見1丁目では、23年5月に「マックスバリュ 城野駅前店」および「ベスト電器 北九州城野駅前店」がオープン。その隣接地では、第一交通産業(株)による分譲マンション「グランドパレス城野タワー」(RC造・地上19階建、70戸、25年1月竣工予定)の建設が進むほか、コンダクト(株)よる賃貸マンション「(仮称)コンダクトレジデンス富士見」(RC造・地上10階建、72戸、24年2月末竣工予定)の建設も進んでいる。両物件はJR城野駅まで徒歩5分、モノレール城野駅にも徒歩6分の好立地にあるほか生活利便施設も充実しており、分譲マンションは完成を待たずに完売、賃貸マンションも入居希望者が殺到する人気物件となることが予想される。

住宅集積のモノレール沿線 更新時期を迎える大型団地も

 小倉南区では主に北九州モノレールをはじめ、JR日豊本線や日田彦山線の駅周辺や沿線で市街化が進んできた。とくにモノレールの沿線では、モノレール開通時と前後する時期に駅周辺や沿線での区画整理や大型団地開発などが進められたところが複数箇所あり、それらはすでに40年程度が経過して老朽化が進むほか、低層の建物が建ち並び、土地の高度利用ができていない状況にある。

 たとえば守恒駅の東側は、かつては「森津根(もりつね)」と呼ばれる森林地帯だったとされるが、現在は丘の上に団地やマンションが建ち並ぶ閑静な住宅街となっている。駅周辺には「サンリブもりつね」や「マルショク 新守恒店」「ナフコ 徳力店」などの商業店舗が集積して生活利便性が高いほか、文教地区でもあり、子育て世代からの人気が高いエリアだ。そうしたエリアに立地する「守恒団地」は、1~18棟からなる全390戸の中規模団地で、開発開始が70年代、完成が81年とすでに築40年超が経過しており、一部の改装などは進んでいるようだが、全体としての老朽化は否めないだろう。

 徳力公団前駅はその名が示すように、公団住宅「徳力団地」の最寄り駅となっている。徳力団地は、日本住宅公団(現・都市再生機構/UR)が九州で初めて開発を手がけた団地であり、九州最大の敷地および棟数を誇る大規模団地。66年に最初の区画が完成し、以降の約3年で全区画が完成したもので、20ha弱の敷地内に、100棟超の建物が建ち並び、総戸数は約2,400戸となっている。団地内には「マックスバリュエクスプレス徳力店」などが入居する徳力団地商店街「センタープラザ」があるほか、診療所と特別養護老人ホームを併設した「メディカル&ケアとくりき」、徳力団地幼稚園などの施設があり、団地外には「業務スーパー 小倉南方店」「ハローデイ 徳力本店」などもあるなど、生活利便性は相応に高い。だが、築半世紀以上が経過していることに加え、改修などはなされているものの、建替えをともなう大規模な再開発は行われておらず、基本構造は開発当初のままの姿を残している。

 ほかに、モノレールの終点である企救丘駅と、その1駅手前の志井駅の北側のエリアにも、1~37号棟を有する大型団地「志徳団地」が立地している。同団地は、URが地域医療福祉拠点化に取り組んでいる団地であり、“多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まちづくり”に注力。シニアから子育て世代まで安心できる地域コミュニティが形成されている。また、駅周辺には「生鮮市場リエゾン 志井店」や「エフコープ 志井店」などの商業店舗があるほか、8号棟の1階には鮮魚店や精肉店、青果店、洋菓子店、うどん・そば店、クリーニング店などが入居しており、生活利便施設がそろっている。

 モノレール沿線の大型団地を3つ紹介したが、いずれも開発から相当の年数が経過しており、老朽化および住民の高齢化等が進んでいることは否めない。今後、こうした大型団地や低利用地で、大規模な建替えを含めた再開発が進んでいく可能性は、十分に考えられるだろう。

JR駅周辺も根強い人気 大型土地区画整理も進行

 モノレールの駅周辺や沿線だけでなく、JR日豊本線および日田彦山線の駅周辺も、その利便性の高さから人気の住宅地となっているところが多い。

 たとえばJR下曽根駅では、駅南口で土地区画整理事業が実施されたことで市街地を形成。駅から国道10号曽根バイパスに向かって伸びるモール大通り沿いには、ショッピングモール「サニーサイドモール小倉」や「エディオン 曽根店」などをはじめとした商業店舗が多く立地するほか、郊外型の住宅地も広がっている。駅周辺では、(株)タイヘイによる分譲マンション「サンライフ下曽根Ⅱ」(RC造・地上13階建、46戸、25年2月竣工予定)や、(株)なかやしきによる分譲マンション「アーティックス下曽根駅コートガレリア」(RC造・地上19階建、109戸、23年10下旬竣工)などのマンション開発も活発に行われており、その人気ぶりは現在も衰えていないようだ。

 北九州空港の最寄り駅であるJR朽網駅の周辺でも、駅南側の日豊団地や駅北側のスワロータウンなどの住宅地が開発されており、人気のエリアだ。駅のすぐ近くで国道10号と主要地方道である県道25号門司行橋線が交わっており、自動車利用での交通利便性が高く、国道10号沿いの「TOTO小倉第二工場」や駅から北側の北九州臨空産業団地内の「トヨタ自動車九州小倉工場」など、企業や工場の進出も進んでいる。こうした“働く場”への通勤に便利なことと、小倉都心部への好アクセスから、同駅周辺の人気は相応に高いようだ。

 小倉南区ではほかに、九州自動車道・小倉東ICの東に位置するエリアで現在、「長野津田土地区画整理事業」が進行している。同区画整理事業は、九州自動車道や国道10号、主要地方道徳力・葛原線等の交通網が整備されたほか、都心に近接していることで交通・流通拠点としての利便性が高まっている同地区において、物流施設やこれに関連する製造・加工施設等の誘致を地域の発展と活性化につなげることが目的。地区面積は約27.0haで、現在は造成工事などが進行しており、事業完了は24年度の予定となっている。

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 北九州市と同じ政令市である浜松市(静岡県)では、24年1月に7区から3区へと行政区が再編されるという。人口減少などで将来の市財政が厳しくなるなかで、再編により人件費など年間6億円以上を削減して行政を効率化し、持続可能な行政運営に移行することが狙いとしている。

 政令市のなかでもとくに人口減および高齢化の進行が顕著な北九州市にとって、他自治体の事例ではあるが、こうした行政区の再編は参考にすべきところも多いだろう。具体的にいえば、小倉北区と小倉南区を、八幡東区と八幡西区をそれぞれ統合し、再び政令市昇格時の「小倉区」と「八幡区」に戻すことを検討してみてもいいのではないだろうか。もともと1つの市であり区であっただけに、再編・統合させたとしても、弊害の発生や住民の反発は最小限に抑えられるだろう。

(了)

【坂田 憲治】

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