2024年05月12日( 日 )

多様な特性を内包するエリア・小倉(3)

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小倉北区
種々の機能集積の小倉駅周辺 再開発PJは停滞気味

小倉の中心部を流れる紫川
小倉の中心部を流れる紫川

 現在の北九州市において、名実ともに政治・経済・文化の中心地といえるのが小倉北区だろう。とくにJRや新幹線、モノレールなどが乗り入れるターミナル駅である小倉駅の周辺一帯では、主に紫川に沿うかたちで中心市街地が形成されている。

 まず小倉駅の南側には、紫川とモノレール高架に挟まれるエリアの広範囲にわたって、魚町銀天街をはじめ、京町銀天街、小倉中央商店街、小倉駅前商店街、魚町サンロード商店街などの商店街が広がっている。また、魚町の南側エリアには“北九州の台所”と呼ばれる旦過市場もあるほか、紫川沿いの船場町には市内唯一の百貨店となった小倉井筒屋本店が、さらには紫川を挟んで対岸の室町にはリバーウォーク北九州が位置するなど、小倉駅の南側―とくにモノレール高架の西側にあたる紫川沿いに、大小さまざまな商業機能が集積しているといえる。一方で、モノレール高架の東側に位置する米町や鍛冶町、堺町、紺屋町などは、幹線道路沿いにオフィスビルが建ち並ぶほか、内部の区画道路沿いには居酒屋やクラブなどが非常に多く軒を連ねており、昼はオフィス街、夜は歓楽街という異なる顔をもつエリアとなっている。

 紫川の西岸側に位置する城内には、小倉城を中心とした都市公園「勝山公園」が広がるほか、北九州市役所や小倉地方合同庁舎、北九州市立中央図書館、福岡法務局北九州支局などが立地。隣接する大門の小倉北警察署や、大手町の小倉北区役所なども含めて、北九州市および小倉北区における主要な行政関連施設などが集積している。なお、城内の北側に位置する室町には、前出のリバーウォーク北九州のほか、日豊本線への分岐点となるJR西小倉駅や、北九州市で最も高層となる高さ145.7mのタワーマンション「小倉D.C.タワー」(RC造・地上41階・地下1階建、総戸数195戸、11年3月竣工)などがある。

 小倉駅の北側の臨海部一帯である浅野には、北九州国際会議場や西日本総合展示場などのMICE・コンベンション施設や、サブカルの聖地・あるあるCity、サッカーJ3リーグ・ギラヴァンツ北九州の本拠地・ミクニワールドスタジアム北九州などの各種施設が立地。駅南側とは異なる、独特な性格のエリアとなっている。

 このように小倉北区では小倉駅を中心とした中心市街地が形成されているが、その小倉駅から概ね半径1kmのエリアで現在、北九州市の再開発プロジェクト「コクラ・クロサキ リビテーション」が進行している。21年9月に発表された同プロジェクトは、補助金などの支援策や各種規制の緩和などにより、民間開発を誘導して老朽化ビルの建替えなどを促していくもので、27年3月末までに着工するビルが対象となる。細かい部分の違いはあれども、概ね“小倉ビッグバン”といって差し支えないプロジェクトだ。

 そのコクラ・クロサキ リビテーションの第1弾として現在、魚町3丁目の旧・西日本シティ銀行北九州営業部が入っていたビルの解体・建替えを行う「BIZIA KOKURA(ビジア小倉)」の建設が進んでいる。ビジア小倉は北九州市の不動産会社・(株)ミクニが総事業費約60億円を投じて行うもので、S造・地上13階建のオフィスビルを建設する計画。施工は清水建設(株)が担当し、24年3月竣工および翌4月開業を予定している。

 だが、この第1弾のビジア小倉以外に、今のところリビテーションの目立った動きはない。唯一挙げるとすれば、エリア内の魚町3丁目、旦過市場から小文字通りを挟んで北東側に位置する魚町銀天街の入り口付近約0.37haでは「魚町三丁目2番地区第一種市街地再開発事業」として、老朽化した低層建物群をRC造・地上22階建のビルに建替え、低層部を商業・業務用、高層部を住居とすることで、土地の高度利用を図ろうとする動きはある。こちらは24年度に現建物の解体および建替え着工し、27年度の再開発ビル開業を目指しており、21年3月に市による公共事業評価が行われた結果、「計画通り実施」ということになってはいるが、表だって目立った動きは見られない。北九州市は23年6月に、エリア内の幹線道路沿いで容積率を現行の400~600%から最大800%まで緩和する追加の“テコ入れ”策を発表したが、その効果も今のところは表れていないようだ。

 ほかにリビテーションエリア内で動向が気になる再開発プロジェクトといえば、「旦過地区再整備事業 」だ。同整備事業は、防災・防火面での課題を長年抱える旦過市場の安全性を高め、魅力ある市場として継続させることを目的としたもので、20年3月の都市計画決定、21年2月の国の事業認可を経て、再整備に向けての事業が進行していた。だが、22年4月と8月の2度にわたる大火災により、計画がストップ。新たな商業施設の建設時期も含めて、市は全体的なスケジュールの見直しを余儀なくされ、社会情勢の変化に対応しながら市場の魅力と集客力をさらに高めるために、食に特化したまちづくりなどの再整備計画の見直しを新たに打ち出した。また、資材価格の高騰や2度の火災を受けた調査設計費の増加などにより、全体の事業費は当初予定より約13億円増額した約47億5,000万円となる見込みとなっている。

下関北九州道路への期待 臨海部・西港町

 小倉北区の臨海部に位置し、関門海峡に面する西港町は、北九州市中央卸売市場をはじめ、水産会社や海運会社、物流会社の倉庫など、多くの物流機能が集積しているエリアだ。その西港町は将来、北九州市のみならず福岡県や対岸の下関市、山口市、ひいては九州の広域に至る人流・物流および経済活動の活性化を支える大動脈としての機能・役割を担う場所になっていく可能性がある。それは、現在検討が進められている「下関北九州道路」の北九州側の接続部になる公算が高いからだ。

 関門海峡を挟んで九州と本州の結節点となる北九州市と下関市はこれまで、人やモノが行き交う要衝として一体的に発展してきた経緯がある。だが、両市を結ぶ交通網は現状、関門橋(高速道路)、関門国道トンネル(国道2号)、関門鉄道トンネル(山陽本線)、新関門トンネル(山陽新幹線)という2本の道路と2本の鉄軌道のみで、異常気象や不測の事態の際のリダンダンシーの確保が以前より問題視されていた。下関北九州道路は、そうした現状の既存道路ネットワークの課題を解消するとともに、関門橋・関門トンネルの代替機能を確保し、さらには循環型ネットワークを形成することにより、北九州・下関の両地域の発展に大きく寄与するものだと期待されている。

 ルートについてはまだ調査・検討の段階で、下関市彦島から若松区響町を結ぶルートや、小倉駅北東側の海峡の渡河幅が最小となる部分とを結ぶルートなど、主に3つのルートが検討されているが、現時点で再有力視されているのが、小倉北区西港町と下関市彦島を結ぶルート。北九州都市高速道路の日明ICと旧彦島有料道路をつなぐ約8kmで、海峡部の約2.2kmは橋で結び、整備費は約2,900~3,500億円を見込んでいる。

 現在、北九州市では福岡県、山口県、下関市とともに「下関北九州道路整備促進期成同盟会」の一員として、民間企業を中心に組織される「下関北九州道路建設促進協議会」やその他の関係団体と協力しながら、下関北九州道路の早期実現を目指して、国に対する要望活動を実施。23年11月にも服部誠太郎・福岡県知事が村岡嗣政・山口県知事らとともに、国土交通省などに対して、早期整備に向けての要望を行ったばかりだ。今後、都市計画の策定や環境アセスメントなどの手続きを経て事業化されていく予定だが、将来的な開通がいつになるかは、現時点では未定だ──。

(つづく)

【坂田 憲治】

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