2024年05月07日( 火 )

11年ぶりの黒字転換に沸く韓国の造船3社(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

長いトンネルを抜け出した
韓国の造船産業

造船 イメージ

    造船産業は景気に敏感な業種である。景気が冷え込むと各種商品の運送も減少しするため、海運会社は船舶の発注を見送ったり減らしたりするからだ。だが、韓国造船業界が受けた試練はそれだけではなかった。

 中国のように海外から大量に原材料や原油などを輸入する国では、船舶の建造は自国の造船会社に優先的に発注をするのが通常である。韓国の造船産業は2008年の世界金融危機前までは絶頂期であったが、世界金融危機の発生後、世界経済が急激に低迷し、需要の落ち込みで、暗いトンネルに入ってしまった。危機に追い込まれた韓国の造船産業は、海洋プラントなどで突破口を開こうとするが、十分な技術力を当時持っていなかったため、受注したプラント案件は、収益どころかペナルティなどで採算性を悪化させる要因となった。そのような状況下で、中国は自国の需要をベースに船舶建造の経験を積みながら、市場で低価格攻勢をかけ、じわじわと市場で韓国のシェアを奪っていった。

 韓国の造船業界にとっては、需要は減少したのに、中国の価格攻勢で受注量も減り、最悪の時期であった。その結果、造船会社はリストラを実施し、多くの人はこの時期に造船業界を離れざるを得なくなった。造船業界が回復するかもわからないし、最先端の技術が次から次へ登場する時代背景のなか、造船産業はどこか暗いイメージも漂っていた。

 ところが、巨額の赤字を垂れ流していた造船会社3社は、何と11年ぶりに今年の第3四半期からともに赤字から黒字に転換した。韓国企業が強い分野であるLNG船の受注が増えたことが大きな原因である。韓国の造船3社は現在3年分以上の仕事を確保するようになり、受注残高は何と約120兆ウォンに上っている。造船3社が同時に黒字を記録したのは、12年第4四半期が最後であった。各社の四半期報告書によると、HD韓国造船海洋の9月末までの受注残高は66兆8,932億ウォンとなっている。同期間にサムスン重工業とハンファオーシャンの受注残高はそれぞれ、30兆2,582億ウォン、25兆8,331億ウォンであることが明らかになった。

活況を取り戻した背景には

 韓国の造船業界に活気が戻ってきた背景には、国際海事機関(IMO)の環境規制の強化がある。環境規制が強化されることによって、LNG船のような韓国の造船会社が得意にしている船舶の建造が増加したからだ。最近中国もLNG船を建造するようになったが、一時期LNG船は韓国造船会社の独壇場であった。

 国際海事機関はすべての海運会社に50年までに二酸化炭素の排出を08年に比べて70%減らすことを要求している。それと、以前は新規建造の船舶にだけその規制は適用されたが、これからは規制の対象が既存の船舶にまで広げられる予定である。その結果、クラクソンリサーチによると、環境規制に対応するため、毎年150兆ウォンくらいの船舶発注が予想されるという。最近中国もLNG船の市場で韓国を追いつこうとしているが、韓国は依然として同市場で70%以上の受注率をキープしている。

(つづく)

(後)

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