2024年05月05日( 日 )

通販会社「大和心」のHPが大炎上~DHC元会長・吉田嘉明氏の軌跡(前)

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 「雀百まで踊り忘れず」──雀は死ぬまで飛び跳ねるくせが抜けないように、人は若い時に身につけた性格は、年をとっても変わらないという意味。大手化粧品会社ディ-エイチシー(DHC)創業者で元会長だった吉田嘉明氏(82)が、新たに立ち上げた通販会社「大和心」のホームページ(HP)が大炎上した。DHCの時と同じように差別発言をぶち上げたためだ。

新会社のHPでまたも在日コリアン差別発言

 物議を醸したのは、通販新会社大和心がHPに掲載した「大和心宣言」(抗議を受けてすでに削除済)という文章。報道各社が報じた。「日刊ゲンダイDIGITAL」(2023年12月4日配信)の記事を引用してみよう。

 〈「大手総合通販で、トップが純粋な日本人なのは、大和心だけのようです」という書き出しで、アマゾン・ジャパンや楽天、ヨドバシカメラなど通販会社経営者の実名を挙げ、「もともとは外国人の方に、日本人の心が理解できるのでしょうか?疑問です」などと、根拠が明らかでない差別文を掲載し、批判が集まっているのだ〉

 毎日新聞(11月29日付)は、

 〈通販事業などを手がける大手企業数社の経営者の実名を挙げて「お顔の特徴から、しばしば在日の疑いがかけられていますが、ご自身自らが頑なに否定しておられますので、あなた自身でご判断ください」「『在日通名大全』によると、100%の朝鮮系とされています」などと記述〉

 と報じた。

 大手化粧品会社ディーエイチシー(DHC)の創業者の吉田嘉明氏は、DHC会長だった20~21年、DHCのHPに会長名で在日コリアンを差別する文章を掲載したことが大きな問題となった。DHCの時とまるっきり一緒だ。

新会社の前途は早くも黄信号

 今回、在日コリアンに対する差別発言を掲載したのは、通信販売会社、(株)大和心(東京都港区虎ノ門2-2-1住友不動産虎ノ門タワー、設立22年7月、資本金300億円、吉田嘉明会長兼社長)。

 サイトトップページには、本居宣長の歌「敷島の大和心を人問はば朝日に匂う山桜花」とともに、「『大和心』についてはいろいろな解釈がありますが、当社代表の吉田は『武士道』と解釈しています」と記載。社名の由来である。

 通販業界の専門紙・通販新聞(23年11月2日付)によると、

 〈配布したチラシでは、「大和心スペシャルセレクション」と題し、コーセーの「薬用雪肌精」や伊藤園の「お~いお茶」、コカ・コーラの「紅茶花伝」をはじめ、防寒肌着など目玉商品21アイテムを紹介。ほかにチラシ全面でナショナルブランド(NB)の家電や健康・美容関連機器、日用雑貨、調味料、菓子を中心に計129アイテムを販売している。通販サイトでは、ファッションアイテムや美容・健康食品、食品、日用品など約3000アイテムを販売する〉

 大和心は10月13日、一部朝刊で特大の新聞折り込みチラシを展開、通販サイトを開設した。だが、出足から躓いた。HPに掲載したオーナーである吉田氏の在日コリアンに対する差別発言が火を吹いた。HPは大炎上し閉鎖に追い込まれた。

 DHCでの差別発言のときには、不買運動が盛り上がり、取引先はDHCとの取引を中止した。吉田氏はDHCの全株式をオリックスに3,000億円で売却し、会長を退任。DHCを去った。DHCは現在オリックスの子会社だ。

 オリックスに売却した資金で、新たに立ち上げたのが通販会社の大和心だ。今回の差別発言では、消費者や取引先はどう出るか。大和心の前途は、「朝日に匂う山桜花」どころか、早くも黄信号が点滅する。

吉田氏は通販業界の立志伝中の人物

 筆者はNetIB-NEWSに『DHC創業者、「ヘイトスピーチ」でバッシングを浴びる オリックスへ身売り』(22年11月18日~19日)を寄稿した。合わせてお読みください。

 吉田嘉明氏は1941年1月31日、日本統治下の朝鮮で生まれた。父親は農林省から朝鮮に派遣された役人だった。敗戦後は、父親の故郷である佐賀県唐津市に引き揚げた。唐津の小学校・中学校から福岡の西南学院高校を経て、65年京都の同志社大学文学部英文学科を卒業。66年に英検1級・運輸省通訳案内業国家試験に合格後、通訳業に携わる。

 72年、大学翻訳センターを創業。大学の研究室を相手に洋書の翻訳委託業を始めた。DHCは、大学翻訳センターのローマ字表記の頭文字からとった。75年に株式組織に改組。

 80年に化粧品の販売、95年に健康食品事業に参入。直営店202店、通信販売会員1,569万人を擁する企業に成長。2022年7月期の売上高905億円は美容・健康食品通販売上のトップである。

 吉田氏は、通販業界の立志伝中の人物である。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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