2024年04月28日( 日 )

『脊振の自然に魅せられて』「初登山:脊振の氷瀑」(前)

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 2024年の年が明け、久しぶりに脊振へ出掛けた。久しぶりというのは、23年12月の1月間は1度も脊振の山を歩かなかったからである。脊振山駐車場へ車を利用できる自衛隊専用道路は、昨年7月の豪雨で大崩落し普及工事が終了するのは、今年6月末の予定である。また椎原バス停から椎原登山口(船石橋)の登山口の林道も7月の豪雨で崩落し通行止めになったままである。道路状況もあり脊振へ足が進まなかったのである。

 脊振に氷瀑があることが、地図アプリの登山者投稿欄で昨年知った。そこで、昨年2月に脊振の自然を愛する会の主力メンバーで探索に行った。道なき道を登ったものの、氷瀑のあるルートから僅かに外れて登ってしまい、氷瀑に会えないままだった。

 それから約1年、冬になり氷瀑が気になっていた。高齢になり、藪漕ぎが必要な単独登山はできるだけしないようにしている。そんなとき、脊振の山で時々で出会うIから「登りと下りのルートの入り口に赤テープを付けています」と連絡が入った。IはGPS機器のガーミンを絶えず携帯し、現在地を絶えず確認し、道無き脊振の山を隈なく歩き回っている。50代で早期退職し、山を歩くことで肥満を改善させたと。筆者より5歳若い。

 筆者は3月で80歳になる。この年になっても未知なものに遭遇するのはワクワクする。1月の連休明け9日(火)に脊振へ向かった。椎原林道入り口の通行止めロープが外れていたので、車を進ませた。しかし、100mも走ると規制線のテープが張ってあった。これはいかんと、U-ターンできる場所まで車をバックさせ、方向転換し狭い迂回林道から登山口のある船石橋へ向かった。林道は昨年の豪雨で崩落したままで普及工事はされていない。最近の温暖化で毎年のように豪雨で崩落するので、普及工事の予算が付かないのであろう。

 平日の早朝で他の登山者の車は1台も無かった。駐車スペースに車を停め登山準備をする。荒れた沢沿いのルートを歩くのでスパッツ(泥除け)とヘルメットを装着し軽アイゼンを携帯した。静かな登山道を歩き始める。登山道と並行する椎原川の力強い水の音を久し振りに耳にする。平地の気温は6度であったが、山間部は冷え込んだのか、ところどころ霜が降りていた。歩き始めると「脊振の自然を愛する会」が建てた支柱タイプの道標や樹木の取り付けたプレートが見えてきた。これらの道標を見ると、山が筆者を歓迎している気がする。

 早春の花のホソバナコバイモの群生地に届く。背を屈めてホソバナコバイモが発芽してないか目を凝らしてみるが1株も無かった。今年1月は気温が高いので、少しは発芽が見られるかと期待していたが、まだ早かったのだ。発芽は例年通り2月末なのであろう。

 40分歩いて作業道にある氷瀑の入り口(取り付き地点)にきた。さぁ、いよいよ氷瀑に会いに行くのだと気合いが入る。道もなく、樹木が荒れた山の斜面を登るのである。10m斜面を登ると樹木に赤テープが付けてあった。Iから連絡があった赤テープである。このテープを見てポイントは間違っていないと確信する。

 荒れた山の斜面を歩く、所々にある杉の倒木が邪魔になる。苔むした倒木や岩を避け斜面を登る。
所どころ巻きつけてある赤テープを確認する。奥へ進むにつれ灌木の小枝がときどき体にあたりバチンと音がする。10分歩くと巨石群が現れた。脊振では巨石や巨石群も多い。こんな巨石が豪雨となると、濁流とともに流れ落ち自衛隊道路や林道を塞いでいる。

 さらに奥に進むと、炭焼き跡の石積みが見えてきた。炭焼が行われていた昭和の40年代まで、山は炭焼きの人たちで手入れされていた。化石に燃料を使うさまになり炭が使われなくなり山は荒れ、荒れるに任せる状態となっている。また杉や檜の植林後の枝打ちもされていない。

 さらに10分、急斜面を登ると見たことのある光景が見えてきた。樹木も少な岩だらけの枯れた沢である。昨年、仲間と歩いた場所であった。筆者は立ち止った。どうも違う、さっき見たテープの続きがない。スマホを取り出しヤマップで現在地を確認する。どうもルートが違う、最後に目にした赤テープまで30m下った。

 戻ったのは正解であった。次にある赤テープを確認し急斜面を登る。すると誰かが取り付けた作業用ロープが見えてきた。長いロープである。ロープ頼りに足元を確保し斜面の前方へ進む。筆者は、筋力トレーニングはしているものの、急斜面では衰えた太ももが上がらない。ハーハーと荒い息遣いが続く。すると目前に氷瀑が見えてきた、「見えたー!氷瀑だ」思わず声が出る。山の谷から滲み出た水が垂直な岩場にたくさんの氷柱が下がっていた。やっと会えたぞー!と、再び感動の声を発する。

(つづく)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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