2024年06月20日( 木 )

1人で生きていく技(後)

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大さんのシニアリポート第131回

 運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)で人気の「マッスル体操」に参加する高齢女性の大半が、連れ合いに先立たれた独り者だ。筋肉を付けてさらに長生きする。総じて来亭する女性が元気なのである。3年前私が住む公的な高層住宅で起きた4件の孤独死はすべて男性だった。平均寿命に男女差があるとはいえ、女性の元気さには目を見張るものがある。それを象徴するように、「独居生活のススメ」的な内容の本が目につく。書き手の多くが女性なので、必然的に女性目線の内容になる。

認知症も脳の老化現象。
そこまで長生きできたと考えれば幸せ

 認知症もそれほど恐れるべき病気ではない。認知症も脳の老化による病気だと考えれば、「認知症になるまで長生きできた」と捉えることができると萬田氏。「認知症の人は勝ち組だと考えています。病状に対する周囲の反応のせいで攻撃的になるのです。私の患者さんに、記憶力はまったくないけれど、きれいにボケている女性がいました。延々と同じ話をしますが、周囲がそれを優しく受け入れているので、本人は攻撃的になることもなく、死ぬまで同じ話を繰り返しながら満足して亡くなりました」。

「貯筋」に励め 歩数計 イメージ    高齢者のうつ病患者が多いといわれている。萬田診療所では「本人の好きなように過ごす」ことで、そういう傾向は感じないという。うつ病も脳の老化現象で、高齢者においては認知症とうつ病を区別することは難しい。薬を山のように飲んでいるひとには、ほとんどの薬を止めてもらう。それでも病状が悪化することはない。「患者さんが好きなように幸せに過ごしていれば、メンタルの病気を心配する必要はない」といい、とにかく「すべての病気は老化が原因。病院に行って検査を受ければ受けるほど、病名はいくらでもつけることができます」。私の周りにも、「病院に行くから病人にさせられる」と病院で診てもらうことを頑なに拒否。86歳の今でも元気に暮らしている。

歩け、歩け、「貯筋」に励め

 「腫瘍をもっていても死ぬまで生きる工夫をする専門職」を自認する萬田氏がもっとも重要視していることが、「筋力を維持して歩くためのアドバイス」だ。「人間は歩いている限り死にません。ですから私は『棺桶まで歩こう』と患者さんに呼びかけています。活発に歩いている人は余命が10年以上増える。患者さんには『膝の上の筋肉があなたの寿命を決めます。だから歩きましょう』と伝えています。気力があるうちはどんどん歩き、“貯筋”をしましょう。筋肉はあなたを裏切らないからです」と筋肉の大切さを強調する。

「ぐるり」で週2回実践「マッスル体操」    「ぐるり」で週2回実践している「マッスル体操」は正にソレ。手足にオモリをつけた上下運動。両手両足を極限まで伸縮させる関節ストレッチ。全身(とくに足)の骨に刺激を与える骨体操。口と舌を動かす誤嚥予防体操。ダンベルを使うダンベル体操。約2時間のマッスル体操と毎日のウォーキングのおかげで、日常での困難さを感じたことは一度もない。掛かりつけ医院で「筋肉量は同年代で最高値」とお墨付きをいただいている。萬田氏の「余命10年以上」を期待している。

(了)


<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』『瞽女の世界を旅する』(平凡社新書)など。

(第131回・前)

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