史上最高値、妥当株価はハイテク産業大復活により飛躍する~鍵は日台産業協力だ~(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2月26日発刊の第350号「史上最高値、妥当株価はハイテク産業大復活により飛躍する ~鍵は日台産業協力だ~」を紹介する。Q)日経平均が先週末2月22日に史上最高値を更新しました。武者リサーチは今年は難なく4万円を超えると言ってきました。この史上最高値の意味するところは何なのか、この先どうなるでしょうか。
A)株価は経済の最先行指標。これが高値を更新したということは日本の新時代、新しい繁栄の出発と考えることができる。今が登山のピークなのではない。むしろ壮大な株価上昇が始まる。ひょっとするとすぐに5万、6万となり、5~10年以内に10万円になる可能性がある。最高値を更新したことで市場参加者が妥当株価を測る物差しがなくなった。
Q)妥当株価をどのように測ればいいのでしょうか。武者リサーチはどう計算していますか。
A)2013年のアベノミクス登場以降の10年間、日経平均のPERは12~18倍の間で推移してきた。その中間値15倍(益回りは6.7%)がコンセンサスで見た妥当株価と考えられている。であれば今年の予想EPS2,500円と見て、40,000円が妥当株価となる。しかし妥当PERは歴史的に大きく変化してきた。長期的に見て日本も米国も《妥当な株式益回りは長期国債利回りと同等水準》と見てよいのではないか。
図表1、2によって日米の株式益回りと国債利回りの長期推移を振り返ると、両者のスプレットは大恐慌やバブル崩壊後のリスク回避心理の局面で大きく上昇し、市場心理の回復とともに縮小し、リスクテイクが強まった局面ではマイナスが続いてきたことが確認できる。米国の場合、リーマン・ショック直後の大幅なスプレッドがほぼ解消し、現在は《株式益回り=長期国債利回り》の水準にある。FRBはかつて《株式益回り=長期国債利回り》を妥当株価としたフェアバリューモデルを試算していたが、今の米国はそこに戻っている。
では日本はと見れば、1970~1990年代までのリスクテイク旺盛な時期には、日本の株式益回りは、恒常的に債券利回りを下回り続けていた。しかし2000年代に入りリスク回避姿勢が深刻化し、現在は大恐慌直後の米国のように、株式益回りが国債利回りを極端に上回る水準にある。今後市場心理が改善し、米国のように益回りは長期国債利回りの水準に向かって低下していき、どこかの時点で《株式益回り=長期国債利回り》という均衡水準に行きつくのではないだろうか。
では日本の長期金利はどこまで上がるのか。2%インフレが定着し日銀の超金融緩和政策が終わる時点で3%まで上昇したとしよう。となると益回り3%、PER33倍が妥当株価となる。このように考えれば今の企業業績(EPS)のままでも妥当株価は、日経平均8万円という水準が正当化されることになる。日経平均株価が史上最高値を突破したことによって、市場心理凍結時代の株価尺度が投げ捨てられれば、日本株式は糸の切れた凧のように大きく舞い上がる可能性があり得る。日経平均10万円は遠い将来の話ではなく、今そこにある現実なのかもしれない。
Q)日本の新たな繁栄の時代とはイメージがわきませんが、どのようなかたちの国になるのでしょうか。
A)日本はハイテクの生産強国になるだろう。東アジアにおけるハイテク製造業のハブは、30年前に日本から中国、韓国、台湾に移った。これが日本に戻ってくるというイメージがほぼたしかになっている。今の半導体ブームはその前兆と見て良い。現在の日本景況の改善をもたらした半導体ブームと円安などはかねてから説明しているように、米中冷戦という地政学環境の変化抜きには考えられない。米国による筋書きの世界サプライチェーンからの中国排除、日本の産業復活が進行しているということである。
Q)米国政府の筋書きはその通りだとしても、採算・経済合理性ベースで行動する民間企業がついていくのでしょうか。
A)経済合理性は後からついくる。政府補助、為替の円安がそれを促進する。台湾、韓国のハイテク企業は日本での投資が今後の勝負を決すると考え、対日投資を活発化させている。台湾TSMC、韓国サムスン、SKハイニックス、台湾力晶半導体等などがすでに投資を表明している。
日本政府の手厚い補助に加えて、今後の半導体技術のブレークスルーをもたらすと考えられている後工程に関して日本のプレゼンスは高い。後工程系の装置、素材等の関連技術企業が日本に集中している。TSMCは唯一の海外開発拠点を筑波に設けており、サムスンも横浜に先端パッケージ技術の研究拠点を建設中である。世界半導体投資が日本に集中し始め、投資が投資を呼ぶという好循環が期待できそうな環境である。
(つづく)
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