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2015年10月14日 15:24

「表現の自由」のための警察の義務を示した福岡サウンドデモ裁判

 「警察にデモの妨害をされたくない。次世代のために、デモにもっと自由を」と、弁護士を付けずに起こした本人訴訟で、いわゆる「サウンドデモ」をめぐり、「表現の自由」が行使されるために警察官が負う義務が示され、その義務に反したとして、福岡高裁(白石哲裁判長)は福岡県に損害賠償を命じた。

安保法案廃案を求めるサウンドカーでのパフォーマンス(15年9月6日)<

安保法案廃案を求めるサウンドカーでのパフォーマンス(15年9月6日)

 2011年5月8日、福岡市で開催され、主催者発表で約1,200人が参加した脱原発サウンドデモ。その道路使用許可申請において、申請者は、トラックの荷台に積んだスピーカーや音響機器をDJらが操作し、パフォーマンスをするといった情宣活動を行うと説明した。

 ところが、福岡県警中央警察署は、申請時に必要とされる『荷台乗車許可申請』について一切教えず、デモ当日になって、荷台のDJらに下車や、荷台に幌をかぶせることなどを命じた。裁判は、申請者側が、意図したデモができなかったのは「表現の自由」の侵害だとして、損害賠償などを求めたものであり、1審・福岡地裁に続いて、8月31日の2審・福岡高裁も福岡県に損害賠償を命じた。

 福岡高裁は判決で、道路使用許可申請に対し、原告が意図している形態のデモ行進を行うためには、別途、荷台乗車許可申請が必要であることを警察官が教示すべきだったと指摘。職務上の注意義務を怠り、その教示を行わなかったため、原告が荷台に人を乗車させるかたちでデモ行進を行うことができないという無形の損害が発生したと認めた。

 要するに、市民が、やりたいと思ったデモをやるにはどうしたらいいのかと説明を求めている場合には、警察官は、主催者が意図したかたちのデモができるように、必要な申請についての正しい情報を教えなさいということである。「デモは届出制で、許可制ではない。許可が必要ならば、警察はこれも許可を得てくださいと教えるべきだ」と、原告の1人でイラストレーターのいのうえしんぢ氏は言う。

福岡高裁前で勝訴を喜ぶ原告・支援者ら(15年8月31日)<

福岡高裁前で勝訴を喜ぶ原告・支援者ら(15年8月31日)

 いのうえ氏は、「僕たちはデモで『原発いらない』というメッセージを伝えたかった。警察は、DJが荷台に乗るのを禁じたり、トラックに幌をかぶせて市民から見えないように妨害した。当時は、引き続きデモを準備していたので、二度と警察に妨害されたくないと思って裁判を始めた。自分たちだけの問題だけではなく、デモを初めてやる人たちでも、スムーズに自分のやりたいデモをやれるようになってほしい」と語る。

 安保法案に反対した官邸前デモは「市民革命」と言われた。その中心だったSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の前身には、特定秘密保護法に反対する運動があった。特定秘密保護法で「知る権利」に制限がかかり、言論や表現の自由の規制が着々と進んでいる。安保法案の参院採決直前には、警察は警察車両で参加者をブロックするなど、国会前を埋め尽くさせないためとしか思えない規制が敷かれた。

 また、政権与党・自民党の改憲草案は、憲法21条に追加する規定を「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」としている。

 こうした動きに、福岡サウンドデモ裁判の判決は一筋の光明になった。いのうえ氏は、「自分が言いたいメッセージを権力に妨害されたくない。いま、戦争ができる国づくりをすすめる安倍政権ですが、戦争と人権侵害はいつの時代も同時にやってきます。『表現の自由』を守ることこそが、戦争への抵抗ではないでしょうか?」と訴える。

【山本 弘之】

 
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