地場ゼネコンがBIMを導入したワケ
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上村建設(株)
中計に「BIM活用」
「BIM化のメリットはコスト削減はじめ多岐にわたる」──福岡トップゼネコン・上村建設のBIM推進室長・上村祐輝氏はそう話す。
同社がBIM導入の検討を開始したのは、第1次中期経営プランがスタートした2019年。当時、上村祐輝氏は前職である設計会社に勤めていたが、上村建設へ入社後、設計室に配属。前職の経験からBIM導入を担当し、20年10月にBIM推進室を創設、23年12月にBIM推進室の室長に就任した。BIM導入を進めるなかで、「社内でBIMの有用性を理解してもらうことに時間を要した」という。ソフトはArchicadを選定。受注案件の多くが設計施工である同社にとって、業務の川上で使いやすいことが重要であると判断した結果だという。
同社の第1次中期経営プランには、BIM活用による業務効率化が記載されるなど、トップの強いメッセージもあり、BIM導入は積極的に進められた。BIMの有用性を社内にも示すため、多くのコンペに参加してきたが、そこで意識したのは「仕事を獲得するBIM」だという。BIMであれば、平面図とともに立面図や断面図も作成される。パース・動画の作成とも相性が良く、この利点はコンペのプレゼンテーションにも生かされてきた。上村祐輝氏は、「受注を獲得するとともに、社内でも認知が広がってきたことを実感した」と話す。
社内活用・共有に向けて
上村祐輝氏が強調するのは、BIM導入のメリットだ。「習熟度が増せば、設計に関する工数を削減できる」という。その反面で、「どこまでをBIMに置き換えるか、やるべきことは絞る必要がある」とも加えた。
同社では、フルBIM化には至っていないものの、概算見積における計画物件のBIMモデル化、仮設・施工計画のBIMモデル化などを実行。「BIMモデルは視覚的な情報共有も強みで、工数の削減にも貢献している」のだという。これは施工現場においても同様で、クロスの貼り分けなどでヒューマンエラーを減らしていけると考えているようだ。
BIM化で施工計画の見直しが容易になったことで、これまで工事部の一部だけで行っていた検討作業を、工事部だけでなく設計、積算、BIM推進室らで共有できるようになり、コスト削減につながったケースも少なくないという。
今後の展望
たとえば、道路幅が狭い都心の狭小地で建物を建築する場合、タワークレーンを据え置くか否かでコストは大きく変動する。その判断は工事部の範疇にあり、これまで妥当性について検討される機会は少なかったが、情報共有や計画見直しについてのハードルが下がったことで、タワークレーンを据え置かずに施工できたこともあるという。
今後は、現場関係者が常に最新BIMモデルを閲覧できる体制を整えるとともに、番頭や職長などの現場関係者へのヒアリングを重ねながら現場検証を実施し、効果の出る項目を洗い出す予定だという。「どのようなBIMモデルをつくるかという検証ステップを経て、現場全体を効率化できるようにしたい。上村建設では、いわゆる建設業の2024年問題も見据えて、現場でできる限り労働時間を圧縮していく取り組みを続けてきたが、さらに効率化を図ることができると確信している」と加えた。
最後に上村祐輝氏は、「BIMは単にCADの置き換えではなく、重要なコミュニケーションツールと捉えるべき。社内の各部門だけでなく、建築主や施工協力会社と正確な情報の共有ができ、結果的に良いものづくりにつながる」と期待と展望を語った。
【永上 隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:上村 英輔
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2 博多エイトビル7F
設 立:1959年2月
資本金:1億円
URL:https://www.e-uemura.jp(上村建設)
https://www.uemuragroup.jp(ウエムラグループ)法人名
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