2024年05月20日( 月 )

天神通線の延伸に予算、渡辺通5丁目のイマ(中)

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下町情緒を残す雑多なまち
渡辺通5丁目エリア

かつてはバイクがぶら下がっていた薬院新川
かつてはバイクがぶら下がっていた薬院新川

    天神通線の南側延伸部分が通ることが予定されている渡辺通5丁目は、都心部である天神に近接しながらも、昭和を思わせる下町情緒を今なお色濃く残す、雑多な雰囲気の漂うエリアとなっている。なお、少し表記がややこしいが、地名を指す場合が「渡辺通」で、通り名を指す場合が「渡辺通り」だが、読みはどちらも「わたなべどおり」だ。エリア内には那珂川水系・薬院新川が流れるかたちで南北に分断されており、天神通線の延伸は川の北岸に沿うかたちで計画がされている。

 余談だが、この薬院新川の上にはかつて、川沿いのバイク屋がバイクをぶら下げ、「川にぶらさがっているバイクでおなじみの~」というような謳い文句とともにPRを行っており、その珍妙な宣伝方法がある種の名物となっていた。だが、“大人の事情”なのかどうかは定かではないが、残念ながらいつのころからか川にバイクをぶら下げるのを止めており、件のバイクは隣のビルの屋上付近に所在なさげに佇んでいる。

天神通線の終点となる天神南駅交差点付近
天神通線の終点となる天神南駅交差点付近

 現在の天神通線の終点であり、国体道路と交差する地点である天神南駅交差点付近では、精力剤の専門店「あかひげ薬局 福岡店」が入る真っ赤な外観の「あかひげ福岡ビル」が鎮座するほか、世の生ドーナツブームの火付け役として今なお連日行列が絶えない「I'm donut?」福岡店が入る「東カン福岡第一ビル」、(株)山口油屋福太郎が運営する飲食や物販などの複合施設「天神テルラ」など、個性豊かな店舗・ビルが軒を連ねている。そこから路地に入っていくと、焼肉屋やカレー屋、寿司屋、焼鳥屋、韓国料理屋、中華料理屋、カフェ、居酒屋、小料理屋、スナックなどの多彩な飲食店が立ち並ぶほか、中小規模の事業所や個人店、前出のバイク屋なども立地するなど、次第に下町情緒が色濃くなっていく。

多様な飲食店が並ぶ
多様な飲食店が並ぶ

 そうした店舗などが点在する一方で、このエリアは住宅地という側面ももっており、大型の分譲マンションや中規模な賃貸マンション、さらには戸建や木造低層アパート、長屋型の集合住宅まで、バラエティに富んだ住宅がそろっている。ほかに、主に渡辺通り沿いで真新しいオフィスビルやホテルが立ち並ぶほか、エリア内の各所で民泊施設なども散見される。エリア全体としては昭和を思わせる下町情緒が色濃いものの、ところどころに建替えやリノベーションでおしゃれな物件も生まれており、新旧の建物が渾然一体となった混沌とした雰囲気こそが、ある意味、このエリアの魅力だといえるかもしれない。

低層住宅などが立ち並び雑多な雰囲気を醸し出す
低層住宅などが立ち並び雑多な雰囲気を醸し出す

    なお、福岡市内においてゲイバーなどが多く集まる“ゲイ・タウン”の性質を内包する春吉エリアや住吉エリアに近接しているだけあって、かつてはこの渡辺通5丁目エリアでもそうした店舗がいくつか散見され、ディープなアンダーグラウンドさも漂っていた。だが現在は、少なくとも表向きは、そうした様相は影を潜めているようだ。

北側延伸部分で進む
2つの天神ビッグバンPJ

 天神通線が通過するエリアは「天神ビッグバン」のエリア内に含まれているが、北側延伸部分については、2つのプロジェクトと密接に関わっている。それは、「(仮称)天神一丁目北14番街区ビル」と「(仮称)天神一丁目15・16番街区計画」の2つだ。

 まず「(仮称)天神一丁目北14番街区ビル」は、日本生命保険(相)(以下、日本生命)と積水ハウス(株)が共同で進めているもので、昭和通り沿いにあった「福岡三栄ビル」(所有:積水ハウス)と、その南側に隣接してあった明治通り沿いの「日本生命福岡ビル」(所有:日本生命)の2棟のビルを解体して一体開発を行うもの。再開発後にできるビルは、敷地面積約3,050m2、延床面積約3万9,300m2の地上18階・塔屋2階・地下2階建となる予定で、近隣にある赤煉瓦文化館や天神地下街のような、重厚で風格のある佇まいを次世代に継承する外観デザインを採用している。主にオフィスや店舗が入居することを想定しており、地下鉄コンコースに接続する明治通り側の地上地下立体広場や、昭和通り側の地上広場には、ランドマークとなる壁面緑化や赤煉瓦文化館をモチーフとしたクラシカルな化粧壁、高さ8m以上のシンボルツリーなどを配置し、憩いや風格のある広場空間を創出していくとしている。

建設が進む「天神一丁目北14番街区ビル」
建設が進む「天神一丁目北14番街区ビル」

    さらに、拡幅を予定する天神通線の北側延伸部分と⼀体整備するかたちで、幅員8mのゆとりあるプロムナード(歩行者空間)を形成するほか、地上から地下までつながる壁面緑化を配置。緑と相性の良いレンガ積の列柱やプロムナードに面したカフェ、ベンチの配置などにより、来街者やオフィスワーカーが憩い、楽しめる空間を創出するとしている。同ビルの設計は(株)久米設計が担当し、施工は(株)大林組が担当する予定。21年12月に天神BBBの適用を受けており、竣工は25年3月を予定している。

(つづく)

【坂田 憲治】

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