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2015年12月01日 07:01

柳川商店街再生の試み(7) 地域づくりにマーケティング発想を! 

 これまで、柳川商店街の課題・問題点を消費者側から見てきましたが、ここからは、柳川商店街を構成する商店主(商店街組合員)の経営意識、地域課題への視点がどの辺にあるかを見てみましょう。当事業において、同時に実施された「柳川商店街会員アンケート調査」の結果です。調査概要は、以下の通りです。


調査方法:各商店へ調査票を直接配布、依頼を行い、回答は郵送回収。
調査対象:柳川商店街振興組合会員全員
調査実施時期:平成26年2月
サンプル数:87サンプル配布、有効回収数57サンプル、回収率65.5%


【経営状況】
 全対象のうち、営業年数が50年以上と古くから営業している店舗が約50%を占めるなど、営業歴の長い店舗が大変多いようです。逆に言うと、新規参入(開業)の店舗が大変少ないとも言えます。
 最近の売上の状態は「増加傾向」と回答した割合はわずか7.0%に過ぎず、これに対して「減少傾向」とする割合は、63.2%にのぼっています (「横ばい傾向である」は、28.1%) 。消費者調査にみたように、消費が周辺の大型店・大型SCなどへ流出していることもあって、経営状況は大変厳しいものがあるようです。顧客の性・年代層は「中高年女性」が50.9%と最も多く、これに「高齢者(65歳以上)」の35.1%(複数回答)が続いており、女性高齢者の利用が中心になっている様子がわかります。
 そのような顧客が自店をどのような理由で利用していると思うか聞いてみると、先にみたように、営業年数の長い店が多く、歴史のある商店街だけに「昔からの馴染みで、信頼できる」とする割合が57.9%と、2位の「商品の品質・鮮度が良い」の29.8%を大きく引き離して1位となっています(複数回答)。古くからの高齢顧客との信頼関係で経営が成り立っている状況がわかります。


【柳川商店街の問題点】
 なかなか厳しい経営環境にある柳川商店街ですが、現状の問題点を聞いてみると、トップ5は「空き店舗の増加」78.9%、「近隣への大型店の進出によるお客様の減少」68.4%、「経営者の高齢化による後継者不足」64.9%、「マルショク撤退によるお客様の減少」63.2%、「個店の魅力がない」56.1%となっています。
 ちなみに、中小企業庁の「平成24年度全国商店街実態調査」から商店街が抱える一般的な問題点について見てみると、「経営者の高齢化による後継者問題」63.0%、「集客力が高い・話題性のある店舗/ 業種が少ない又は無い」37.8%、「店舗等の老朽化」32.8%、「商圏人口の減少」30.4%がトップ4となっています。柳川商店街の組合員(経営者)が意識する問題点は、全国の商店街の問題意識とほぼ同様であるとみてよいでしょう。
 この全国商店街実態調査ですが、参考までに平成12年度の報告書からこの問題意識を見ると、「魅力ある店舗が少ない」の72.8%に並んで、「大規模店に客足をとられる」が72.3%でした。平成24年度調査では、「大型店との競合」が問題点として挙げられた割合は20.1%ですから、3分の1以下に落ち込んでいます。大型店との競合は既定の事実となり、もはや、問題点としてはあまり意識されなくなった、または、意識してもしようがないという状況になっていることがわかります。その代わり、店舗を維持していくうえでの後継者の問題、個店の魅力でいかに顧客を引きつけるかが問われている状態なのです。
 今、商店街活性化の課題は、一過性のイベント開催から、顧客のニーズに合った品ぞろえの充実、そのための顧客との接点の形成、固定客化といった「個店の魅力」の向上が問われる状況になっています。


【閑話休題】
 この点で今注目されている商店街が、長野県佐久市の岩村田本町商店街振興組合です。この商店街もご多聞に漏れず、近隣にできた大型SCの影響を受け、これに対抗するために数々のイベントを開催し集客対抗策とします。しかし、「打ち上げ花火のようなイベントでは商店街は活性化しない」と、イベント疲れに陥ります。そこで気づいたことがやはり「個店の魅力の向上」なのです。それから、阿部眞一理事長を先頭に商店主たちの個店の魅力向上へ向けた猛勉強が始まります。そこで得た方向性が、「地域密着顧客創造型商店街」というコンセプトです。
 このコンセプトづくりは、商店街が自主的に将来構想を策定し、自分たちの夢を描いたことに特長があります。そして得られた結論が、商店街は地域コミュニティの核となり得るとの信念であり、これに基づいた具体的活動です。空き店舗などを活用した若者の飲食業等の創業支援、子育て支援、組合がディベロッパーとなった新しい集客施設の形成、大型店との共存共栄策など多様な活動を行い、見事に商店街の再生を果たしています。関心のある方は「岩村田本町商店街振興組合」を検索してみてください。話が横道にそれましたが、柳川商店街の経営者調査の結果の紹介は、次回へ続きます。

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学観光学部特別研究員(客員フェロー)、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師。

 
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