25年地価公示 天神はホテル・マンション開発が牽引
-
-
住宅地の上昇率 福岡市がトップ
3月下旬、国土交通省は今年の地価公示を発表した。全国平均は、住宅地(2.1%)および商業地(3.9%)が4年連続で上昇した。
都道府県庁所在地では前年に続き、福岡市が住宅地(9.0%)で上昇率全国トップ。商業地は東京23区(11.8%)、大阪市(11.6%)に次ぐ3位(11.3%)となった。都道府県では沖縄県(7.3%)、東京都(5.7%)に次いで福岡県の住宅地(4.9%)が3位、商業地は東京都(10.4%)、京都府(7.9%)などに続いて6位(6.5%)となった。前年より順位は下がったものの、高い上昇率を維持しており、地点別の上昇率トップテン(全国)には、住宅地で福岡市東区箱崎6丁目(19.3%)が9位に入った。
福岡都市圏の動向はここ数年で大きな変化はなく、「天神・博多の拡張」「ららぽーと開業効果」による影響が変わらず続いている状況だ。福岡県内で最も高い地価となったのは、再開発が完了して4月に開業したばかりのONE FUKUOKA BLDG.で、平米単価は1,210万円(2.5%上昇)だった。ここからは、福岡市内のエリアごとに特徴的だった地点を見ていこう。
ONE-FUKUOKA-BLDG. 天神の北西エリア 大手がマンション開発
「天神4-2-34」は9年連続で2ケタ増が続いており、取引件数が少ないことから「中心的な価格帯を見出すことは困難」としつつも、公示地価は265万円/m2で前年比11.8%増となった。天神から西、とくに地下鉄沿線は安定した需要で推移。このエリアは売買事例も多く、賃貸マンションやオフィスビル、開発用地などさまざまな物件の売買が確認できている。
県内上昇率で商業地3位となった「長浜1-4-13」(16.8%)は、8年連続で2ケタ増を記録しており、「オフィス立地としてはやや利便性に劣る地域であるが、ホテルや分譲マンション用地としての需要も認められる地域であり、地価にいまだ割安感が残ることから、今後も地価は上昇傾向で推移する」とされた。
同4位となった「舞鶴1-4-30」(16.7%)は、4年連続2ケタ増で、天神中心部へ好アクセスであることから、マンション開発も活発となっている。昭和通り沿いの「舞鶴1-1-10」(11.8%)は3年連続での2ケタ増となり、公示地価も350万円/m2となった。
近隣では、(株)柴田産業(福岡市博多区)が高級賃貸マンション・The アクシオン天神レジデンスを2月に竣工したばかり。また、近隣の駐車場跡では、三菱地所レジデンス(株)(東京都千代田区)による24階建マンション開発計画もある。
明治通り沿いの「荒戸2-1-5」(11.8%)も4年連続2ケタ増となった。また、同地から北側の那の津通り沿い「荒戸1-5-20」(12.1%)は6年連続で2ケタ増となった。周辺は、大濠公園に近いことからマンション用地としての需要が高く、「大手門3-4-22」(13.3%)は9年連続で2ケタ増。赤坂寄りの「大手門1-5-4」(10.0%)は2020年以来の2ケタ増となり、平米単価は200万円を超えた。(株)モダンプロジェ(福岡市中央区)や(株)リアン(福岡市中央区)、サムティ(株)(大阪市淀川区)などによる賃貸マンション開発のほか、積水ハウス(株)(東証プライム)、三井不動産レジデンシャル(株)(東京都中央区)、(株)オープンハウス・ディベロップメント(東京都千代田区)らによる分譲マンション開発が計画されている。家裁跡では、野村不動産(株)(東京都新宿区)らによる高級ホテル「インターコンチネンタル ホテルズ&リゾーツ」を含むオフィス・レジデンスの複合施設の開発計画もあり、レジデンス部分は野村不動産が満を持して「プラウド」ブランドを投入するとも聞かれている。
住宅地価格1位となった「大濠1-13-26」(14.9%)は3年連続2ケタ増。言わずと知れた福岡随一の高級住宅地で、周辺のマンション販売価格は高騰を続けているものの売れ行きの鈍化は見られず、「当面の間、高い地価上昇率が継続する」と予測されている。舞鶴公園の西側「赤坂2-2-11」(10.6%)は、伸び率こそ鈍化傾向にあるものの、天神に近い住宅地として需要は底堅く、3年連続で2ケタ増となった。
天神の南エリア ホテル開発が上昇牽引
国体道路以南、地下鉄・天神南駅~渡辺通駅の周辺は、近年とくに地価上昇が顕著なエリアだ。薬院大通沿いの「渡辺通2-2-2」(15.6%)は、大通り沿いの立地でオフィスビル用地として需要が高く、3年連続で2ケタ増となったほか上昇幅も拡大傾向が続いている。そのわずか100mほど北側の「渡辺通2-3-24」(12.3%)も4年連続で2ケタ増。こちらもオフィスビル用地としての需要を評価された。
北は国体道路、南は住吉通りまでを範囲とする中央区渡辺通では、収益物件として賃貸マンションやオフィスビル、テナントビルの売買が多く確認されている。また、ホテル開発用地としての売買事例も多く、今後新たなホテルが開業していくと見られている。
開発用地としての評価が高まって久しいのが、「春吉」「高砂」「清川」だ。渡辺通の東側に隣接し、天神により近い春吉では、「春吉3-16-19」のみ標準地となっているが、10年連続で2ケタ増の上昇率となっており、公示地価は近年の底値を記録した13年前と比較して5倍近くにまで上昇。平米単価は139万円となった。
北は薬院大通、東は日赤通りに囲まれた高砂では、その南端に位置する「高砂2-10-12」のみ標準地となっており、4年連続で2ケタ増。コロナ禍の影響か21年に上昇率が5.9%となったのを除けば、18年以降は概ね2ケタ増で推移しており、平米単価も100万円に迫った。こちらも底だった2013年と比較して、公示地価は3倍以上となっている。
日赤通りを挟んで高砂の東側に隣接する清川の標準地も「清川2-4-19」のみで、7年連続2ケタ増。公示地価は底だった12年前と比較して5倍近くにまで上昇している。
これら3エリアは低利用の土地が比較的多く残っており、開発用地として見直しが進んできた。中心部に近い北側ではホテル用地、南側では賃貸マンション用地としての売買が確認できたほか、収益物件として賃貸マンション、ホテルの売買も散見される。
【永上隼人】
月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)法人名
関連キーワード
関連記事
2025年4月29日 06:002025年4月29日 06:002025年4月21日 13:002025年4月17日 10:302025年4月10日 13:002025年4月9日 17:002025年4月3日 17:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す