大型連休も終わり、夏の参院選が近づくなか、与野党の間で減税を求める声が高まってきた。国民民主党やれいわ新選組、共産党など野党各党は相次いで減税策をアピールしている。
減税に慎重だった立憲民主党も1年間に限って食料品の消費税をゼロに引き下げることを公約に盛り込むことを明らかにした。これは給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」を導入するまでの時限措置で、一回に限り延長できるという。
各種世論調査を見ても、米の販売価格の上昇など相次ぐ物価高に疲弊する国民からは、現金給付よりも減税を望む声が多い。
世論の動向に自民・公明両党からも減税を求める声が強まっている。公明党の斉藤鉄夫代表は9日の記者会見で、党内で検討している追加経済対策の骨格は減税になるとの認識を明らかにした。斉藤氏は、食料品など生活必需品を対象に消費税の軽減税率も議論し、財源を示したうえで提案するという。また「減税には時間がかかるので、必要とする人への給付という考え方は変わってない」とも述べた。
石破茂首相は、公明党や参議院自民党などからの減税を求める声を受け、一時、減税に傾いたといわれるが、支持基盤でもある森山氏らの意向に逆らうことができないようだ。
読売新聞が9日付で「政府・自民、消費税減税を見送り方針」と報じている。記事には「減税した場合、数兆~十数兆円規模で財源不足が生じ、高齢社会でさらに重要性が増す社会保障の土台が揺らぎかねない危惧がある。赤字国債で財源不足の穴を埋めれば、将来世代に負担のツケを回すことにもつながる」とある。これは財務省や税制規律重視の政治家らの主張そのままだ。減税路線に慎重な自民党執行部や政府関係者の意向が反映されているとの見方もある。
自民には、「責任ある積極財政を求める議員連盟」(以下、積極財政議連)や「日本の尊厳と国益を護る会」(国益を護る会)など減税派のグループもあるが、旧大蔵官僚出身者を中心に財政規律を重視する議員が根強い。財務省はそうした議員を通じて減税路線を事実上つぶしてきたといわれる。自民のなかで財政規律を重視し、減税に否定的なのは森山裕幹事長である。
なお積極財政議連や国益を護る会は、中曽根康隆氏や鬼木誠氏ら財政規律重視寄りの議員も所属しており、完全に一枚岩とはいえない。
党内がまとまらない自民に公明はいら立ちを見せ始めたようで、9日午前の斉藤代表の発言は森山氏らに対する揺さぶりではないだろうか。
公明は参院選で旧安倍派の裏金問題で処分を受けた一部候補者に推薦を出すことを決めたが、党内からは批判の声も少なくない。1日夜、国会・地方議員約3,000人が参加したオンライン会議を開催したが、友党・自民に対する批判が続出したという。
自公両党が国民生活や企業活動に大きな影響をおよぼす減税についての対応を誤れば、参院選で厳しい結果を招くことが予想される。20年以上におよぶ両党の関係に亀裂が生じることにもつながりかねない。
【近藤将勝】