【連載9】今こそ推したいアビスパ福岡:「これからも信じて支える、これがすべて」~AGA小林専司・専務理事会会長

 アビスパ福岡を支えるのは、フレンドリータウンやスポンサー、サポーターだけではない。アビスパグローバルアソシエイツ(AGA)は、地域に根ざしたスポーツクラブとしてのアビスパ福岡を積極的にサポートする団体。名誉顧問や常任理事会には、福岡の名だたる企業経営者の名前がずらりと並ぶ。そのAGAの常任理事会会長を務める小林専司氏(福岡ロジテム(株)代表取締役社長)に、アビスパとの関わりとそのスタンスについて聞いた。

アビスパを救え、AGAの設立と地域活動

小林専司 氏
小林専司 氏

    ──現在、小林さんはAGA(アビスパ・グローバル・アソシエイツ)の常任理事会会長というお立場です。もともと、アビスパとの関わりはどういうところから始まったのでしょうか。

 小林専司氏(以下、小林) もともと、私は福岡青年会議所がダイエーホークスを誘致したときに、理事長をやっていました。中内正や瀬戸山隆三さんたちと10年くらい関わりました。ダイエーホークス時代はいくらドームを満員にしても赤字。ドームとホテル(現・ヒルトン福岡シーホーク)の償却があったからです。最終的にはソフトバンクが救ってくれて、私もこれでのんびりできると思っていたら、今度はアビスパの経営が厳しいという話が出てきました。

 ──2013年、アビスパ消滅の危機ですね。

 小林 そうです。青年会議所の後輩たちが「先輩、今度はアビスパを何とかしてください」と言ってきました。私は、当時ほかにやっていた地域活動がありましたので、青年会議所が中心となって動いたアビスパの招致活動には関わっていませんでした。

 当時の福岡財界は、みんな後ろで腕組みをして「アビスパはもう危ないな」という姿勢で見ていました。これではどうにもならないと思っていたところにアパマングループの大村浩次社長が出てきてくれました。

 14年の初めに、今AGAの事務局長をやっている岩本仁さん、AGAの副会長を務めた八頭司正典さんと一緒に会いにきてくれて、「子どもたちのために、夢を語れるようになるために、一緒に何とかしましょう」と、熱い言葉でお願いされました。しかし、私は財界側が無理だと思う気持ちもわかりました。だからそのとき、一度は断りました。それでも大村さんは東京から毎週、二度三度と来て、熱心にお話しをしてくれました。三顧の礼をされたら、もうやるしかないですよね。

 それで、福岡地所の榎本(一彦)さんをはじめとした人たちに声をかけて、常任理事会を立ち上げました。これが今のAGAの始まりです。毎月1日にホテルに集まってランチ会をして話し合って、福岡の企業経営者をはじめ、いろいろなところにお願いにいきました。みなさん「何とかしたい」という気持ちはあったのです。それが功を奏して経営危機から何とか脱出し、15年に井原正巳さんを監督として呼ぶことができました。そしてJ1昇格もはたし、アビスパが復活したわけです。

 ──それから20年に長谷部茂利監督が就任して、5年周期のジンクスを破りJ1に定着しました。長谷部監督は23年のルヴァンカップ優勝を置き土産にして、24年いっぱいで退任されました。25年からは、金明輝監督が就任して新しいアビスパが動き出しました。

 小林 新監督選任について、いろいろなことをいう人がいましたね。最初にフロント側から金監督の名前が出てきたとき、もちろん以前の経緯についても説明がありました。私は21年にサガン鳥栖が強かったときの監督だということ、それに鳥栖のユース指導者として、サガン鳥栖躍進の土台をつくったということは知っていましたが、サッカーは素人だからそれ以上のことはわかりません。でも、川森敬史会長が以前、鳥栖で一緒にやっていた選手たちにヒアリングしたら、みんな「すばらしい監督です」という返事が返ってきたそうです。

信じて支える、それがボランティアの在り方

 ──サガン鳥栖、FC町田ゼルビアと、金監督の指導者としての手腕は明らかでしょう。

 小林 今年のアビスパの監督は誰がやっても大変ですよ。あれだけの結果を出した長谷部さんの後ですから。それに、どんなにいい監督を連れてきても勝てなかったら福岡の人はボロクソにいうでしょう。私は昔からホークスにもアビスパにも関わらせてもらっているからわかりますが、弱かったらダメなのです。私は純粋にアビスパが好きだし、誰が監督としてやってこようと応援しようとは思っていました。

 私は素人だからサッカーのことはよくわかりません。しかし、川森会長や柳田伸明強化部長が信頼できるということはわかっています。だから、彼らが選んだ監督を信頼して応援する。それが、私がやるべきことだと思っています。

 これは金監督本人にもはっきりお伝えしました。新体制発表会の後の食事会で、川森会長と結城社長も同席していました。監督が「本当にご迷惑おかけしています」というので、僕は「この2人があなたのことを『いい監督だ』と言っているんだから、僕は2人を信じて支えるよ。精いっぱいやってください」と言いました。僕ができるのは資金集めと環境整備だから、それを精いっぱいやっています。

 ボランティアとして支える、というのはそういうことです。自分から首を突っ込んで「ああしてくれ、こうしてくれ」というのではなく、まず信頼する。口は出さずに、自分ができることをやっていく。これがすべてだと思います。

【深水央】


<プロフィール>
小林専司
(こばやし・せんじ)
福岡市出身。2005年10月に福岡ロジテム(株)を設立、代表取締役社長就任。会社経営とともに、ボランティア活動にも精力的に参加。(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会会長を務め、福岡経済を代表する経営者の1人として活躍している。

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