【インタビュー】沖園理恵氏(れいわ新選組)「すべての人が安心して暮らせる社会を実現したい」(後)
れいわ新選組参議院福岡県総支部長
沖園理恵 氏
夏の参議院福岡選挙区(改選定数3)は、10党派から候補者が名乗りを上げるなど激戦の様相を呈している。れいわ新選組参議院福岡総支部長・沖園理恵氏は、団塊ジュニア世代の1人で、非正規雇用などを経験。福岡パレスチナの会などの市民運動を通じて政治を変えなければならないことを実感したという。沖園氏にパレスチナ支援運動への取り組み、2度の選挙経験を通じての消費税廃止やジェンダー平等社会実現への思いなどを語っていただいた。
非正規雇用で感じた自己責任の風潮

沖園理恵 氏
──自民党総裁選のとき、取材に行きましたが、天神で抗議活動をされていましたね。
沖園理恵氏(以下、沖園) 小林鷹之氏の演説会で抗議を行いましたが、テレビ局は私たちの声が入るから映像を放送することができませんでした。「やってやった」って思いました。
衆院選では「小選挙区は沖園、比例はれいわ新選組」とスピーチのなかに織り込むようになりました。選挙後、選挙責任者の吉田登志夫さんに、落選運動ではなく当選しなければとお話ししました。名前は伏せますけど、奥田ふみよさんの選挙に関わった方がれいわをご紹介くださいました。れいわは大石あきこさんなど女性の方が活躍しています。
みんな個性的で、比較的自由にできるんです。それぞれが自分のやりたいことがあって、テーマがあって、自分のテーマに取り組むことが可能です。私はたとえばパレスチナ支援運動を掲げることもできます。日本にもパレスチナの国家承認や人権問題に取り組む国会議員がいないといけませんよね。それかられいわに非常に多いのは、当事者の人たちです。障害を持つ方などが国会の場で当事者として活動されています。
私は非正規雇用として20年間働いてきました。山本太郎代表と同い年で、「団塊ジュニア世代」の1人です。不景気のなかで就職してしまって、周りの人も、お金がないとか、将来への不安や子育ての問題、「子どもの教育費をどうしようかな」って、まさに悩んでいる世代です。私も当事者でもあるんです。それを受け入れてくれる懐の深さがれいわにはあります。
──自民党をはじめ世襲議員やエリート官僚の人たちは庶民の生活の気持ちがわからないですよね。
沖園 立派な経歴をお持ちの方ばかりで、東大卒や官僚出身が多い。私は高校を卒業して大学受験に失敗して専門学校を出てから就職しました。働きながら30歳のとき、大学の夜間に入学しました。36歳で大学院を修了し、すごく大変でした。
でも学生時代にきちんと勉強しなくて、学力が足りなくて、大学受験に失敗したのだから「若い時にちゃんと勉強しなかった私のせいだ」と思っていました。
自己責任論の風潮が強く、何か失敗しても「あなたのせい」って言われ続けました。私が正社員になれないのは私のせい、大学受験に失敗したのは私のせいだと。多くの同世代がそう思っていて「仕方ないね」とあきらめていました。社会を変えよう、制度を変えようとか、「これおかしいよ」と声を上げることがないまま、じっと我慢していました。でも、もう我慢するのではなく、社会を変えようと思うようになりました。
──私も就職氷河期世代で本当に共感しています。
沖園 ちなみに彼女とデートに行くとき、割り勘ですか?
──私は40代前半ですが、「男性の方が全額あるいは多く支払うべき」という感覚があります。30代より下の世代は、割り勘のようですね。
沖園 若い子たちの話を聞くとデートは割り勘で、車ももたないという話を耳にします。無駄なものをもたないミニマリストというのは、おしゃれに見えます。それって生活水準を下げて、何かをあきらめたライフスタイルを選んだように一見するとみえます。「独身貴族」という言葉がありますが、好きで独身貴族になっている人ばかりではないと思います。
自己責任論を変えてくれたのは、現職の市議さんでした。市民ネットワークの森あやこさんですが、彼女はすごく頑張っていて、お手伝いさせていただきました。
──森さんに以前、福岡市政の勉強会にきていただいたことがあります。2期8年ではやり残したことがあるからと新たに会派を結成されました。
沖園 森さんが以前所属していた会派は、議員報酬が引かれて18万円だったようです。その報酬額や任期制限に疑問をもたれて新たに独立されました。私は森さんからスカウトされ2023年4月の福岡市議会議員選挙に「市民ネットワーク福岡」より立候補しました。
消費税廃止と累進課税強化
──国政で取り組まれたいテーマは?
沖園 やはり生活に密着した問題です。大切なものは命。水、食料、人権。本当に食べることって大事だし、命も大事だし、水も大切で人権も大切なんですよね。今の政治は、弱い人に目が向けられていません。自己責任論が押し付けられています。年金も金額は大きくないにもかかわらず減らされている。
「物価高騰の世の中なのになぜ?」と疑問を感じずにおれません。そもそも不景気を止める努力ができないのか、なぜ消費税を取り続けているのか?
もし消費税がゼロになれば、一気に全部の消費が10%オフになります。お買い得じゃないですか。間違いなく消費行動は伸びます。
赤ちゃんから年金生活者のご年配者まで全員が等しく消費税を払わなければいけないというのは、一見公平のように見えてすごく不公平だし、そういう所得が超リッチで8,000万円の収入がある人と、年間200万円の収入の人を比べたら、消費税の重みは全然違う。
消費税だけでなく所得税を取られています。 本当に消費税は2重3重にも取られている悪税です。今までは税率が上がるたび我慢していました。「失われた30年」は「失われた40年」になろうとしています。
──1989年の竹下内閣から消費税が導入されました。ジュースが100円から110円に値上げされたのが子ども心に衝撃でした。
沖園 学校でも話題になりましたよね。もちろん企業だって経営に必死です。そのことは理解できるのです。しかし1万円の買い物をしたら1,000円の消費税を払うことになります。決して軽いものではありません。悔しくて 本当に腹立たしいです。
れいわ新選組は、財源として国債発行を主張していますが、それ以外にも方法があると思います。所得税の累進課税制度を復活させることです。大企業は内部留保を貯めこんでおり、法人税を適正に徴収することが重要です。
小学校のときに所得税の累進課税制度が導入されました。「世の中はこんな風になっているのか、面白いね」って思っていました。 収入が高くなったら、支払う税金も上がると思っていたら、いつの間にか上限額が決まっていました。
話は変わりますが、福岡市では就学支援を受けている小学生、中学生の子どもが4人に1人います。4人に1人の親の世帯が低所得者と言われています。福岡は全国でも突出していますが、表向きには深刻な実態が見えません。「ユニクロ」とか「しまむら」とかを着ていて外面的には生活困窮や貧困には見えません。スマホをもっていて服もそれなりのものを着ている。でも現実には「明日の生活費がない。来月から生活できない」という状況の子たちがたくさんいます。そしてお父さん・お母さんが毎日不安を抱えている。そうした暮らしをどうにかしたい。
そのためには一気に10%オフの消費税減税、消費税廃止を行うべきだと思います。当初は食料品の消費税ゼロに賛成していました。イギリスでは食料品は消費税ゼロです。 しかし、そういう単純な話ではありません。消費税制度における「仕入税額控除」は売上時にお客さんから受け取った消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を引いて差額だけ納税するという仕組みです。
ところが食料品が「非課税(=消費税ゼロ)」となると飲食店にとって大きな問題になります。食材を仕入れる際に消費税を支払わないため、差し引ける金額(仕入控除額)がゼロとなります。その結果、受け取った消費税をまるごと納税することになります。
今まで控除されていた分を店側が負担することになります。これは飲食店にとって大きなダメージです。ですから消費税は全廃させるべきだと考えています。
女性議員増加で日本の政治は変わる
──ジェンダー平等に関してはいかがでしょうか。
沖園 「フェミブリッジ福岡」という女性団体にも所属して活動しています。ジェンダーの不平等に関して女性の1人として日々怒りを感じています。最大の問題は女性議員の少なさです。日本がジェンダーギャップ指数で先進国のなかで順位が低いのは意思決定権を持つ会社のなかの役職の女性や政治家の女性の割合が日本ではとても少ないからです。アジアのなかでも地位が低いですね。クオータ制や女性議員を一定率入れるなどの制度を導入しなければ、日本の政治は女性政治家が増えないと思います。
野党では、れいわをはじめ、立憲民主党や共産党が積極的に女性議員を増やしています。一方で旧態依然とした自民党は、女性の議員を増やしません。福岡市議会議員も女性の自民党議員はいません。自民党からの女性の立候補もゼロです。
──県議会の自民党は1人いますが、全体的にほぼ男性社会です。
沖園 フジテレビのセクハラ問題、パワハラ問題が発覚しましたけど、役員が男性ばかりという問題があるように思います。
偏見かもしれませんが、女性がそのなかにいたら「先生、男子が何かやっています」みたいな感じで正義感の強い女子が言いつけたり止めたりします。でも男性だけだと言葉は悪いかもしれませんが「悪だくみ」ができます。女性が組織の意思決定機関にいるということは非常に大事なのです。
データ・マックスさんは女性の記者さん、いらっしゃいますよね?
──はい。数名います。
沖園 良かった。女性の記者さんの視点って、すごく大事ですよね。男性の視点ももちろん大事ですが、女性だから気が付く問題意識はすごく大切だと思います。また、今の若い世代の人たちに学ばされることがすごく多いです。
他方で私たちの時代と違って接するときにすごく気を遣うこともあります。たとえば「結婚しているの?」とか「独身なの?」も言っちゃいけない。「彼女いるの?」とも聞いてはいけない。「どこの会社にお勤め」かも聞いちゃいけないし、「大学はどこ」かも聞いてはいけない雰囲気があります。
最近20代とか30代の人と知り合うと、本名も知らないし、SNSで「のんちゃん」と書いてあったら「のんちゃん」だし、「ピータくん」って書いてあったら、「ピータくん」だし、本名を知らない、どこに住んでいるかも、何の仕事をしているかも知らないけど、1年くらい付き合っているという関係があります。
今まで友達になるときに聞いてきた質問が全部、彼らにとっては「押しつけの質問」であって、なかにはプライベートの話を聞かれたくない人がいることにも気づかされました。
──最後にどのような社会を目指したいのかお聞かせください。
沖園 「明日の暮らしを心配しなくていい、そんな社会にしたい」と思います。シングルマザーでも、病気になって失職しても休業しても、たとえば家族の介護が必要で、自分が急に家族を見なきゃいけなくなっても安心して暮らせるというのが、本当に必要だと思っています。 私は、日本に住むすべての人がどんな立場の人であっても、普通に明日の心配をせずに暮らせる社会になってほしいと考えています。
北欧など各国で実現していることが日本でなされていないのは、日本政府の責任だと思っています。
ところが政治は大企業の方ばかり向いています。大企業優先の政治になっている現在、その割りを食っているのは一般庶民です。 多くの人が中小企業に勤めており、その割合は90%~95%ほどです。すべての人が安心して暮らせる社会を目指して頑張ってまいります。
(了)
【近藤将勝】
<プロフィール>
沖園理恵(おきぞの・りえ)
1974年福岡市生まれ。県立早良高校、福岡大学大学院卒、大濠高校勤務などを経て、2023年、福岡市議会議員に市民グループから立候補。現在natural natural(株)フードプランナーとして勤務しながら「子ども食堂」支援やパレスチナ支援団体「福岡パレスチナの会」「働く女性のホットライン」などで活動。
公式SNS:https://x.com/rieokizono
https://www.instagram.com/okizonorie/