NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「参院選のキーワードは『最低でも消費税率5%』」と論じた5月21日付の記事を紹介する。
参議院選挙で大事なことは政策を基準に投票先を選ぶこと。いま、何よりも求められるのは消費税減税。まずは、消費税の税率を10%から5%に引き下げる。重要なことは恒久減税を行うこと。もう一つ重要なことは複数税率をやめて単一税率にすること。税制に求められる重要な要素の一つが〈簡素〉。複数税率は事務処理が煩雑になる。複数税率を廃止して一本化する。財源論が叫ばれるが財源はある。
税の自然増収が膨大な規模に達している。2020年度の一般会計税収は60.8兆円。これが2024年度に73.4兆円に増大。12.6兆円増えた。2024年度は2.3兆円の所得税減税が実施されたから、これを加えると自然増収は14.9兆円。地方を合わせれば18兆円程度の自然増収が生まれている。自然増収は税負担の増加だから広義の増税と言ってよい。この増税分を国民に還元する。自然増収を財源に15兆円減税を実施すべきだ。
2025年度予算で減税が論議された。〈103万円の壁〉が騒がれて〈壁の引き上げ〉が行われた。しかし、その正体は〈しょぼい減税〉。2025年度の所得税減税の規模は0.7兆円。メディアが国民民主党を大宣伝しているが、あれだけ騒いで実現した所得税減税は0.7兆円。2024年度は所得税の定額減税が実施された。地方の住民税を除く所得税減税の規模は2.3兆円。これは1回限りの減税。したがって、2025年度は逆に増税になる。
2025年度に0.7兆円の減税が実施されるが、定額減税廃止により2.3兆円の増税になるから、両者の差し引き合計は1.6兆円の増税になる。減税を大騒ぎしたが、所得税は2025年度に1.6兆円の増税になる。これが〈103万円プロセスの正体〉だ。
消費税率を10%から5%に引き下げると国、地方合わせて15兆円の減税になる。自公が過半数割れに転落したから、野党が結束すれば、これを衆議院で可決できた。衆議院が可決した消費税率5%を参議院が否決する場合、どの勢力が消費税減税を阻止したのかに関心が集まる。
野党は結束して消費税減税を追求するべきだった。しかし、消費税減税で野党が結束することはなかった。国民民主党は昨年10月の総選挙では消費税率5%を公約に掲げたが、選挙後は封印した。〈103万円の壁〉で大騒ぎして、結果として実現したのは1.6兆円の所得税増税だ。この事実を知って、なお、国民民主党を支持する有権者がいるだろうか。
国民民主党人気はメディアが創作した虚像だと考えられる。国民民主党は通常国会で消費税減税実現に向けて力を結集するべきところ、衆院総選挙後は消費税減税論議を封印。結局、しょぼい減税どころか、所得税増税が決定されたというのが現実だ。その国民民主党が参院選に向けて再び消費税減税の旗を掲げたがまったく信用できない。しかも、時限措置としての減税。
※続きは5月21日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「参院選は〈最低でも消費税率5%〉」で。
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植草一秀の『知られざる真実』
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<INFORMATION>
〔日時〕
2025年6月20日(金)午後3時~6時
〔場所〕
福岡市民ホール(小ホール)
〔プログラム詳細〕
講演『財務省の正体とビジネス防衛論』 午後3時~4時半
質疑応答 午後4時半~5時15分
出版記念パーティー(軽飲食付き) 午後5時15分~6時
〔講師〕
植草一秀氏(政治経済学者)
〔参加費〕
1万円(飲食、新刊書籍、書下ろし資料代含む)※要申込
〔お申し込み先〕
専用フォームあるいはTEL、FAXにて
▶ 専用フォーム
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389
主 催:(株)データ・マックス
※当セミナーの詳細な内容は告知記事にてご確認ください。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。