7月の参議院議員選挙をめぐり、投票の見返りに現金を支払う約束をしたとして、警視庁と鹿児島県警などの合同捜査本部は8月26日、公職選挙法違反(買収)の疑いで鹿児島市のパチンコ店「モリナガ」の社長ら6人を逮捕した。
幹部6人を一斉逮捕
逮捕されたのは、東京都港区のパチンコチェーン「デルパラ」社長で、モリナガ(鹿児島市)社長も兼ねる山本昌範こと李昌範容疑者のほか、同社幹部の男女計6人。報道などによると、李容疑者らは、7月20日に投開票された参院選で自民党比例代表に立候補していた阿部恭久氏(全日遊連理事長)への投票の見返りに店員ら約60人に3,000円~4,000円の報酬を支払う約束をしていた疑いがもたれている。
対象店舗は全国31カ所におよび、警察はモリナガを含むグループ全体で250人以上に報酬を約束していた可能性があるとみて調べを進めている。
売却から半年での不祥事
モリナガは、城山観光(鹿児島市)が2025年1月まで保有していた優良子会社。売却直前の売上高は133億円、経常利益は2億4,000万円を計上していた。
こうしたなかで城山観光は同年1月、モリナガを約28億円でデルパラに売却。その売却益を原資に、同年3月期決算で5期ぶりとなる記念配当(1株6円)を実施した。
一方、同社は本業で6期連続の経常赤字に陥り、財務制限条項にも違反していた状態。地元経済界や一部株主からは、本業が立ち直っていないなかでの復配に疑問の声が上がっていた。
株主提案を却下、単独交渉で売却
売却をめぐっては、株主である小正醸造(鹿児島市)の小正芳嗣会長らが、借入金全額返済とホテル再建を条件とする外資系ファンドの再建提案を提示していたが、城山観光はこれを株主総会に諮ることなく却下。取締役会での決定により、モリナガは1社との単独交渉を経て売却された。
複数の関係者によれば、モリナガの立地や収益性を考慮すれば「より高い金額での売却も可能だった」とされ、譲渡価格の妥当性にも疑問が残る。
「誇りがズタズタに」元役員からも嘆きの声
モリナガの元役員は「親会社の城山ホテルのブランドを支えるために、パチンコ部門で稼ぐよう教育されてきた。グループの一員であることに誇りをもっていたが、社長が逮捕される事態にプライドはズタズタになった」と語る。
代表逮捕というかたちで信頼を損ねた今回の事件。警察は6人の認否について明らかにしていないが、株主提案を退けてでも選んだ相手の違法行為は、売却を判断した城山観光の経営責任を問うものとなっている。
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