タワマン大規模修繕工事をむさぼる長谷工リフォーム その手口の実態(2)執拗な談合工作

AMT一級建築士事務所代表
都甲栄充 氏

 タワーマンションの大規模修繕工事をめぐり「住民」となったコンサルタント会社社員からの要求をはねのけた管理組合の背後で、特定業者を受注させようとする反撃が本格化する。マンションの顧問建築士として「事件」に対峙した(株)AMT一級建築士事務所(東京)の都甲栄充代表による談合疑惑の追及報告の第2回では、入札直前の生々しい動きを暴露する。

水面下での攻防

 理事会において見積もり参加業者の条件を示した私の「A案」が採用されて、大規模修繕工事に向けた手続きは、それを業界新聞に公開し、見積もり参加業者を募る段階へと進んだ。このあたりから、大規模修繕工事の大手、長谷工リフォーム(以下「長谷工リ」)の動きが活発化していった。

採用されたA案
採用されたA案

 参加に興味を示していたC社から私が直接聞いた概要は、まさに「談合」を示唆するものだった。

 C社によると、長谷工リの社員から電話があり「長谷工リの下請で工事を受注しないか」と誘われたという。電話では、工事受注額に対する利益率の配分まで示されたそうだ。工事を元請で取るのか、下請でとるかでは、雲泥の差だ。C社は元請での受注を目指し、この誘いを断った。

 長谷工リは、このマンションの工事をどうしても受注したかったのだろう。そして、C社の電話での断りではあきらめきれず、直接C社を訪ねてきたという。

 C社は、長谷工リの社員から「修繕委員の2名から『長谷工リが推薦されています。あなたが仕切りなさい』と指示を受けている」と詰め寄られたという。

 私がこうした経緯を知ったのは、C社から直接問い合わせを受けたからだ。

 今回の工事に当たって、私は受注に興味を示した会社に対して「談合は絶対に禁止」と念を押していた。だからこそ、C社としては「話が違うではないのか」という疑念を抱いて、「問い合わせ」というかたちをとって、私に長谷工リによる水面下の動きを暴露してきたのだ。

 当然ながら、マンション側から長谷工リに「天の声」を出した事実はなく、長谷工リがC社を取り込むために「ウソ」をついたものと推測された。

三の矢

 業界新聞での公募が締め切られ、いよいよ見積もり参加業者が確定すると、長谷工リを受注させようとする動きはさらに加速して、「三の矢」を放ってきた。

 大規模修繕工事の見積もりに参加することになったのは、長谷工リとC社に加え、大手のD社、新鋭、中堅のA社とB社の5社であった。

 修繕委員のXとYから、修繕委員会になりふり構わぬ「要求」が突きつけられたのは、その頃であった。

 「C社とD社を外してほしい」と。

 第1回の記事で報告した通り、Xは大規模修繕工事を専門とするコンサルタント会社の幹部社員であり、マンションの修繕工事の話が出る3年ほど前にこのマンションへ越してきていた。Yは、勤め先も含めて素性を明らかにしていなかった。ただ、建設関係の仕事についていることは容易に想像できた。

 この2社を外す正当な理由など、あるはずがなかった。C社は長谷工リからの「下請要求」を断った会社であり、D社は、Xが当初提案した「B案」の条件をすべて満たす会社であったからだ。

 理事会は、当然Xの要求をはねのけた。裏工作が「万策尽きた」のだろう。その後C社は、長谷工リから「ガチで行く」と伝えられたという。

 しかし、ガチンコの勝負だと思っていた見積もり提出の影にも「罠」が潜んでいた。第3回は、見積もり合わせの結果と、マンション管理組合に平然とウソをつく大手企業の実態をリポートする。

(つづく)


<プロフィール>
都甲栄充
(とこう・ひでみつ)
 福岡県北九州市生まれ、明治大学工学部卒業。大成建設(株)、住友不動産(株)を経て、2009年に(株)AMT一級建築士事務所を開設。主な資格は、一級建築士、管理建築士、一級建築施工管理技士、宅地建物取引士、管理業務主任者、監理技術者、特定建築物定期調査員。(一社)日本建築学会司法支援建築会議・元会員、東京地方裁判所・元民事調停委員(建築裁判専門)、(一社)日本マンション学会・元会員、八王子市マンション管理組合連絡会・元会長。

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