花王の家庭用洗剤「アタック」、中国市場から撤退 1993年に中国市場に進出したが、約30年の歴史に幕を閉じる

液体洗剤 イメージ    花王の家庭用洗剤ブランド「アタック」(中国名:花王潔霸)が、2025年9月30日をもって中国での洗濯用洗剤や洗剤粉末など全製品の販売を終了すると発表した。1993年に中国市場に進出したこの老舗ブランドが、約30年の歴史に幕を閉じる。この撤退は、中国に進出する外資系企業にとって重要な示唆を与える事例である。TSUTAYAB00KSTOREの中国での相次ぐ店舗閉鎖や、大塚製薬が合弁企業の株式を売却したケースと同様、「アタック」の撤退は、日本モデルをそのまま中国に持ち込むことの限界と、市場適応の必要性を浮き彫りにしている。

 業界関係者によると、「アタック」の中国市場からの撤退は、外資系ブランドが直面する構造的な課題を反映している。主に以下の3つの側面が挙げられる。

一、技術駆動から市場駆動への転換

 「アタック」は進出当初、技術的優位性を武器に市場シェアを急速に拡大した。しかし近年、中国の現地ブランドである藍月亮(ブルームーン)、立白(リバランス)、納愛斯(ナイス)などが、機動的な研究開発と現地化戦略で逆転した。たとえば、藍月亮は濃縮洗剤や除菌シリーズを中国消費者の嗜好に合わせて開発し、高いコストパフォーマンスとSNSを活用した若年層向けマーケティングで成功を収めている。一方、 「アタック」は製品のリニユーアル速度が遅く、パッケージや機能が市場ニーズの変化に追いつけなかった。外資系企業が依拠してきた「技術駆動」のアプローチは、中国市場では次第に通用しなくなり、消費トレントを迅速に捉えた「市場駆動」のモデルに取って代わられた。

二、販売チャネルの変革と競争構造の変化

 「アタック」は当初、上海家化のオフライン販売網に依存していたが、ECや新興小売チャネルの台頭により、従来のチャネルの優位性が失われた。現地ブランドは天猫(Tmall)、京東(JD)、拼多多などのプラットフォームを迅速に活用し、ライブコマースやコミュニティマーケティングで急成長した。一方、外資系ブランドは意思決定プロセスの遅さからチャネル転換に追いつけず、競争で後れを取った。さらに、オフラインチャネルの運営コストの高騰が利益率を圧迫した。

三、消費トレントの変化とブランド価値の再構築

 中国の消費者は、洗剤に求める価値が「基本的な洗浄機能」から「健康」「環境保護」「情緒的価値」へと移行している。現地ブランドの雕牌(ディアオパイ)や超能(チャオノン)は、 「国民的記憶」を活用したマーケティングで消費者の情緒的共感を獲得しているが、外資系ブランドヘの文化的共感は薄れている。また、環境保護意識の高まりにともない、現地ブランドは天然成分やエコフレンドリーなパッケージで迅速に対応している。「アタック」は国際的な環境基準(ESGなど)を中国市場向けの訴求力あるメッセージに変換できず。ブランド価値が市場ニーズから乖離してしまった。


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