博多に新風を吹き込む「ハカタニクスイ」 旬の食材と博多焼酎の極上マリアージュ
2025年10月6日、福岡市博多区下川端町に新たな食の名所「ハカタニクスイ」が誕生した。中洲川端駅から徒歩2分という好立地に開業した同店は、やぐらもんグループが新設した博多スピリッツ(株)の第一号店。総料理長を務めるのは、40年のキャリアを誇るイタリアンシェフ・深町英幸氏。大阪名物「肉吸い」を博多流に再構築し、福岡の食文化に新しい息吹をもたらしている。
職人の経験が生み出す
深町氏は福岡・舞鶴や今泉で「a la carte」や「Hide's Kitchen」を営んできた実力派シェフ。30歳で独立し、わずか5坪の店から出発。常連に支えられながら、味と人柄で名を広めてきた。
その彼が今回挑んだのが「博多流肉吸い」だ。出汁はカツオ、昆布、サバ節を丁寧に合わせ、薄口醤油とみりんで味を整える。牛肉は独自の火入れで旨味を閉じ込め、化学調味料は一切不使用。魚介と肉の旨味が調和し、最後の一滴まで飲み干せる、やさしくも深い味わいが特徴だ。
昼と夜で異なる表情
ランチタイム(午前11時〜午後2時)は、肉吸い定食をはじめ和洋折衷の定食がすべて1,000円(税込)。「原価ギリギリでもいい。まずは美味しいものをお腹いっぱい食べてもらいたい」と深町氏は笑う。昼時には3回転するほどの盛況ぶりだ。
ディナータイム(午後6時〜午後10時)は、落ち着いた空間で博多焼酎やウイスキーを傾けながら郷土料理や創作イタリアンを楽しめる。ごまさば、がめ煮などの博多料理に加え、カプレーゼやティラミスといった一皿も人気だ。「中高年のサラリーマンが気軽に寄れる店が少なくなった。そういう方々に来てほしい」と深町氏。
効率化が進む飲食業界にあって、同店はあえてタブレット注文を導入せず対面接客にこだわる。「間違いがあっても、そこに会話が生まれる。それが街場の居酒屋の魅力です」。
博多焼酎の魅力を提案
やぐらもんグループは18年にわたり福祉事業を展開してきた。代表の仁泉浩氏は櫛田神社の宮総代も務める地域密着型の経営者だ。実は仁泉氏はかつて深町氏の店の常連客で、2人は地元・東区奈多の出身。地域に根ざした信頼関係から生まれたコラボレーションである。
2025年12月初旬には博多区祇園へ2号店をオープン予定。「博多焼酎の魅力をもっと広めたい」と仁泉氏。素材から手づくり、化学調味料不使用、そして"人に会いに行く店づくり"。博多の伝統とイタリアンの技術が融合した「ハカタニクスイ」は、街場の温度を取り戻しながら、博多の食文化に新たな一頁を刻み始めている。
【児玉崇】
<INFORMATION>
ハカタニクスイ
所在地:福岡市博多区下川端町8-3
リバージュ清水1F
定休日:日曜・祝日
(土曜営業、変更の可能性あり)
席 数:31席
TEL:080-4596-6383








