【新春トップインタビュー】福岡から日本を変える変革の志 信頼と経験が未来への道筋を描く

(一社)福岡青年会議所
理事長 伊東健太郎 氏

 (一社)福岡青年会議所(以下、福岡JC)の第74代理事長に就任した伊東健太郎氏。若くして組織に入会し、委員会活動を通じて「福岡のまち」と「人」のために尽力してきた。とくに、国際金融機能誘致や子育てなど現代的なテーマに焦点を当て、福岡のポテンシャルを最大限に引き出す「変革」を掲げる伊東氏に、その意気込みと具体的な取り組みについてうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島譲二)

福岡JCとの出会い、そして成長の土壌

(一社)福岡青年会議所 理事長 伊東健太郎 氏
(一社)福岡青年会議所
理事長 伊東健太郎 氏

    ──伊東理事長が福岡JCに入会したきっかけや、JC活動を通じて得られたものについて教えてください。

 伊東健太郎氏(以下、伊東) 私がJCに入ったきっかけは、伯父が福岡JCで活動していたことを知ったのが最初です。伯父の周りには、福岡JCでの活動を通じて地域に関わってきた方が多く、日常のなかでその存在を感じていました。そうした姿を見て、福岡のまちに向き合い続けるこの団体の一員として、自分も何か役割を果たせるのではないかと考えるようになりました。さらに、伯父を含め、身近な人たちのなかにすでにJCへ入会している方が何人もいたことも後押しとなり、31歳のころに「そろそろ入ってみたらどうか」と声をかけてもらったことが契機となりました。

 入会して得たものはいくつもありますが、とくに印象深いのは、活動をともにするなかで信頼できる仲間ができたことです。率直な意見を交わしながら取り組む経験は、これまであまりなかったものでした。また、福岡のまちについて考え、事業に取り組む過程で、物事をかたちにしていく力が少しずつ身についたと感じています。

 ──JCには長い歴史がある分、組織文化も独自だと思いますが、最近の雰囲気や運営スタイルについて教えていただけますか?

 伊東 確かに、JCにはかつての団体に見られるような縦社会のイメージもありますが、世代を超えた人のつながりのなかで活動を積み重ねてきた団体です。現在は、そうした基盤を背景に、福岡のまちが抱える課題に対し、事業を通じてどう応えていくかを重視する姿勢が、より前面に出てきていると感じています。もちろん会員企業同士の交流もJC会員にとっては重要な時間ではありますが、それ以上に「まちのために何ができるか」を考え、やるべきことに向き合う姿勢が大切にされています。

 そのうえで、JCの大きな特徴が年齢制限と単年制です。40歳で卒業しなければならず、私も残り2年となりましたが、この限られた時間が強い原動力になっています。また、役職が単年制であることも、その1年に全力を注ぎやすい要因です。

 さらに、JCはすべて手弁当で事業を行う団体です。時間と知恵を持ち寄ってまちづくり・人づくりに取り組むところに、他にはない面白さがあると考えています。本気で「自分たちのまち」を良くしようとする集団だからこそ、やりがいが大きいと感じています。

 ──これまで多くの事業を手がけてこられたと思いますが、とくに心に残っているイベントや活動はありますか?

 伊東 私が2023年に、福岡JCで「委員長」というポジションで活動していたときの事業は、とくに心に残っています。私が「芸術文化委員会」の委員長だったときに行った事業です。それは、親不孝通り(親不幸通り)に落書きが多いという問題に対し、アートで解決を図るというものでした。

 具体的には、落書きの上から絵を施していくという事業です。ダメ元で、福岡の有名なアーティストであるKYNE(キネ)さんにアタックしたところ、快く引き受けてくださいました。そのような著名なアーティストの参加をはじめ、多くの方に関心をもってもらえる事業になりました。委員長として企画から実行までを担い、仲間とともに1つのかたちをつくり上げられたことが、何より印象に残っています。自分たちの手でまちに働きかけることができた、忘れられない経験でした。

 ──若手の育成や組織運営についての考えを教えてください。

 伊東 JCのなかでもとくに魅力的な役職の1つが「委員長」だと考えます。委員長は、自らの発想で事業を企画し、形にしていく中心的な立場です。もちろん、JCは会議体であり、事業は組織の手続を踏む必要がありますが、福岡のまちを良くしたいという思いと主体性がある人であれば、大きな裁量をもって挑戦できるポジションです。一定の予算も確保されているため、思い切った取り組みが可能になります。

 また、JCならではの魅力として、「志を共有する仲間との結びつき」が挙げられます。国内外の会員とのネットワークは非常に広く、どの地域に行っても助け合える関係性が築かれているのは大きな強みです。表面的なつながりではなく、共通の目的を持つ者同士の連帯感が生まれる点が、JCの大きな価値だと考えています。

 さらに、OBの層の厚さもJCの特徴です。社会のさまざまな分野で活躍されている先輩方が多く、現役メンバーに対しても非常にオープンに接してくださいます。「JCの後輩」というだけで面会の時間をいただけることも少なくありません。こうした先輩方の存在は、現役で活動するうえでも大きな励みとなっています。

26年に掲げる「変革」
挑戦する2つの軸

 ──今期に掲げるスローガンと、具体的な事業の柱について教えてください。

 伊東 今期の私たちのスローガンは「変革」です。我々の子どもたちが将来に希望を描ける環境を、これからさらに整えていく必要があると感じています。だからこそ、今、我々自身が変わっていかなければいけないし、まちとしても変わっていく必要があります。福岡市はポテンシャルからすると、日本を変える力があるまちだと思っていますので、「福岡から日本を変える」ぐらいの気概でやっていきたいと思っています。

 具体的な事業の軸としては、大きく分けて2つ、「経済的な要素」と「文化的な要素」の2軸で考えて動かしていきたいと思っています。

金融の普及推進

(一社)福岡青年会議所 理事長 伊東健太郎 氏

    伊東 経済分野の取り組みの柱として、26年はとくに「金融」をテーマに掲げています。福岡市が「国際金融機能」の実現に向けた取り組みを進めるなかで、金融をより身近なものとして捉える機会を、まち全体でさらに広げていくことが重要だと感じています。金融に関する理解や関心が自然と広がっていくことで、誘致された企業や人材がこのまちに根づき、活躍しやすい環境につながっていくと考えています。そのためにも、金融を生活や仕事と結びつけて考えられる土壌を、まち全体で育てていくことが大切だと考えています。

 そこで私たちは、「金融」をテーマにした委員会を立ち上げ、市民の皆さんが金融をより身近に感じられるきっかけづくりに取り組んでいきます。とくに若い世代が、暮らしやキャリアを考えるうえで役立つ知識や視点に触れられる機会を増やすことで、まち全体として選択肢が広がっていくことを目指しています。

「こども未来都市宣言」
活動の継承と深化

 伊東 もう1つの軸である文化的な要素に関しては、22年に提言した「こども未来都市宣言」の継続です。福岡の未来を担う子どもたちが、明るい未来を感じられないと、まちは衰退してしまいます。大学進学をきっかけに県外へ出て戻らない若者も一定数います。子どもたちが福岡のまちを好きでいてほしい、郷土愛を育んでほしいと思っています。

 そのために、提言に掲げた「芸術」「スポーツ」「グローバル」の3本柱を強化し、文化的な要素を高めていきます。経済力と文化はどちらが先とはいえませんが、どちらの側面も発展させていくことが、福岡というまちのポテンシャルを引き出す鍵だと考えています。

組織のブランディングと未来への展望

 ──今年度の組織運営でとくに力を入れることは何でしょうか?

 伊東 とくに力を入れているのが、JCのブランディングです。どんな活動も、まず知っていただくことで関心が生まれ、地域とのつながりが少しずつ深まっていくと考えています。今年は「JCブランディング向上委員会」を設置し、SNSをはじめとした対外発信を強化します。昨年の「JCブランディング特別委員会」での取り組みを継続しながら、より多くの市民の皆さまに福岡の未来を一緒につくる仲間として関心をもっていただけるよう努めていきます。

 ──国際交流については、どのように取り組まれますか?

 伊東 もちろん、国際交流は継続して行います。JCはロータリーやライオンズと並ぶ、世界最大級の若手経済人のネットワーク組織で、世界100カ国以上、約5,000以上のローカル組織(青年会議所)があり、会員数は約20万人前後といわれています。姉妹JCとして提携するなど、交流を行っています。福岡はアジアの玄関口といわれる通り、地理的条件に恵まれています。そうした環境のなかで、国際的な機会にも恵まれているのが福岡JCの特徴です。

 26年も、海外のJCの式典に積極的に参加し、各国のメンバーとのネットワークを広げていきたいと考えています。私自身、全国約2万3,000人の会員を擁し、日本の経済界を牽引する連合体である「日本JC(日本青年会議所)」での活動を通じて、全国の志ある仲間と出会えたことが大きな財産になりました。

 日本JCは、福岡のような各地の青年会議所が支える組織であり、優れた事業モデルを全国へ普及させたり、各地の活動をフォローアップしたりする役割を担っています。こうした「同志的結合」ともいえる強固なつながりは、国際的なJCのネットワークを通して日本国内にとどまらず世界中に広がっています。共通のプラットフォームをもつことで、たとえ言葉の壁があっても海外で自然と交流が生まれ、仕事や活動の幅が広がるのは、JCならではの大きな魅力だと感じています。

 ──長期的な目標や、今後の提言活動について教えてください。

 伊東 全国大会を福岡で開催してから、2年が経ちました。当時は全国各地から多くのJCメンバーを迎えるため、JCだけでなく、まち全体で準備を進めました。これまでの経験を踏まえ、現在は福岡のまちのために、中期的な視点で力を注げるフェーズに入っていると考えています。

 JCではこれまでも、福岡のまちの可能性について多様な視点から議論を重ねてきましたが、今後はそれらをより具体的な事業としてかたちにしていきたいと考えています。28年の福岡JC設立75周年に向けては、改めて福岡の魅力や伸びしろを整理し、まちの未来を考える材料として提案をまとめ、発信していきたいと考えています。地域の皆さんとともに、より良いまちの姿を探っていくきっかけになればと思います。

 ──福岡JCの仲間を増やすために、どのような人に入会してほしいですか?

 伊東 メンバーは現在約200名程度ですが、求めたい人材像は明確です。私たちがとくに迎えたいのは、“福岡のまちに何らかのかたちで関わりたい” という思いを持つ方 です。大きな夢や専門性がある必要はなく、まちのために一歩踏み出してみたいという気持ちがあれば、十分に活躍できる場があります。

 JCの活動は背景や目的を深く考えながら進めるため、物事を主体的に考え、動いてみたい人にはとても向いています。一緒に活動する仲間も “より良い福岡をつくりたい” という思いを共有しており、その過程で多くの気づきや学びが得られます。

 最初は人脈づくりを目的に入会する方もいますが、実際に関わるなかでまちづくりに触れ、結果として自身の成長につながるケースが多いです。若い世代の方でも、挑戦できる機会や相談できる仲間が多く、興味があれば一度、雰囲気を感じてみてほしいと思っています。

 ──最後に、福岡JCを通じてどのような取り組みをしていきたいか、決意をお聞かせください。

 伊東 今年の活動を通じて、福岡のまちに少しでも前向きな空気や期待感を生み出せたらと思っています。市民の皆さんの共感を大切にしながら、楽しみながら参加できる事業を考え、実行していくことがJCの役割だと考えています。仲間とともに議論を重ね、まちにとって価値のある取り組みにつなげていきたいです。

【文・構成:和田佳子】


<INFORMATION>
理事長:伊東健太郎
所在地:福岡市博多区築港本町13-6
創 立:1953年2月


<PROFILE>
伊東健太郎
(いとう・けんたろう)
1987年4月7日生まれ。西久大運輸倉庫(株)代表取締役(物流業)。2020年1月福岡JC入会。 23年芸術文化委員会委員長。 26年第74代理事長就任。

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