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2016年01月13日 07:02

表現の自由抹殺で、国民主権は即死(中)

自民党改憲案――「公益」を口実に基本的人権を制約

 自民党憲法改正草案は、表現の自由を禁止する条項の新設と、表現の自由をふくむ基本的人権すべてに対する制約が一体になっている。貫かれているのは、「公共の福祉」に替わる「公益および公の秩序」という考えだ。

 現日本国憲法第21条1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めている。なんの留保もなく、一切の表現の自由を徹底的に保障しているのが現憲法だ。

 自民党憲法改正草案は、現憲法21条の規定に追加して、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とする。「公益および公の秩序」を理由に表現の自由を禁止する内容である。

jimin 表現の自由を含む基本的人権は、「侵すことのできない永久の権利」(憲法11条、97条)であり、「すべての基本的人権の享有を妨げられない」ものである。「すべての人が生まれながらにして持つ」自然権思想や人権天賦説に根差している。また、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」「過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたもの」(97条)と宣言している。

 現憲法でも、「公共の福祉」という国民の人権相互が衝突する場合に限って、表現の自由をはじめ、憲法が保障した基本的人権が制約(調整)されることはある。
 だが、自民党憲法改正草案にあるのは「公共の福祉」との調整ではない。自民党は、憲法13条などの「公共の福祉」を「公益および公の秩序」に置き換える理由として、「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」(自民党「日本国憲法改正草案Q&A増補版」。以下、「Q&A増補版」)と解説している。
 そして、11条の「(国家権力によって)妨げられない」とした文言や、将来の国民にも永久の権利として保障した97条は削除される。

「言論の自由」を否定する改憲案

 「公益」を理由に表現の自由を制約すると、どういう社会が出現するか。
 自民党は、「どのような活動や結社が制限されるかについては、具体的な法律によって規定される」(「Q&A増補版」)とするが、同党幹事長(当時)がデモをテロと同一視する発言した(批判を受けて後に訂正)ように、表現の自由や、多様な価値観、異なる意見を尊重しない風潮が見える。
 ここには、安保法制に基づく海外派兵が行われようとしたとき、海外派兵に反対する集会やデモが「公益を害する目的の活動」として禁止されない保障がどこにあるだろうか。SEALDsやママの会、学者の会、脱原発の市民グループなどの結社は「公益」を理由に解散させられないのか。安保法や海外派兵だけではない。原発再稼動やTPPなどに反対する活動は、安倍政権にとっては「公益を害する目的の活動」とされ、憲法違反になり「認められない」という社会になりかねない。

 市民がデモや集会をできないだけでなく、新聞や雑誌、インターネットメディアが、安保法制反対や辺野古新基地反対、原発再稼動反対の社説や記事を書くことも「公益を害する目的の活動」になる恐れがある。自民党によれば、「『活動』とは、公益や公の秩序を害する直接的な行動を意味」(「Q&A増補版」)するというが、戦前、『中央公論』が雑誌『改造』とともに廃刊になった歴史を想起すれば、「沖縄の新聞はつぶしてしまえ」が妄言ではなく、現実になる危険がある。
 「公益および公共の秩序」を口実に、表現の自由や言論の自由が禁止されれば、主権者が選択するために必要な情報に接し、言論や議論を通じて、何が正しいか判断することができなくなるし、言論や集会・デモを通じて、主権者みずからが政府の政策形成に関与する道を閉ざす。
 戦前の日本やナチスドイツ、北朝鮮の独裁国家を彷彿とさせる。

(つづく)
【山本 弘之】

 
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