主催者の取りまとめ分析
経済産業省が取りまとめた「2025大阪・関西万博」の開催実績値が、昨年12月24日の万博協会理事会で報告された。調査分析は、来場者が入場券購入時に必要とした万博IDに基づくデータにより行われ、4月13日から10月13日までの184日間の会期中、関係者を除く一般客約2,558万人(事前見込みは約2,820万人)が来場し、経済波及効果を3.6兆円とした。
来場者の平均来場回数は2.3回。そして、何度も入場できる通期パス利用者の平均来場回数は11.8回に上ったことがわかった。1日券大人7,500円として、通期パス大人3万円の元を取る4回以上の入場をはたし、元手の三倍を軽々取った強者(つわもの)が大勢いたということだ。
地下鉄中央線夢洲(ゆめしま)駅
データからは、通期パス利用者が地元在住の方々で占められていたことがわかる。国内居住者で来場した方々の72.8%が関西圏からで、その約半数(48.3%)が大阪府民だった。年代は70代以上が35%、60代が22%、50代が19%と、余暇時間に融通を効かせられるシニア層が76%を占めた。また、半数以上が女性であった。
万国博というより畿内博
通期パスの販売数は約40.4万枚、元を取ろうというがめつさからではなく、入場の都度、新たな訪問動機を得て、結果的に繰り返し多数回訪問したということであったのだろう。入場者の大半が大阪府民でありシニア層であったという構図からは、この博覧会が知り合い同士で訪れてコミュニケーションを図れる居所、日常の付き合いのなかでお値打ち品めいた情報交換を促すネタになっていたと想像する。
ちなみに来場者のうち、インバウンド客が占める割合は5.2%にとどまっている。本誌89号(25年10月末発刊)で筆者が言及した「西のゴールデンルート」がインバウンドを狙った事業だったことを思い起こすと、総入場者数約2,558万人×5.2%=約133万人は大きな数字ではあるが、出展館への立寄り率を勘案すれば、必ずしも目論み通りの数字ではなかったと想像する。来場者の国内・海外の構成比について、当初万博協会は訪日客12.4%と想定し出展営業を行ったものの伸び悩み、公表値は閉幕直前まで6.1%だったが、最終的にさらに下回った。
博覧会開催の要諦として、開幕前の高頻度告知、主催者の働きかけにより動員可能な公的機関や学校、出展スポンサーの従業者や家族、取引先などを通じて初期段階に最大限の動員入場を計り、目に見える入場者数の増加を博覧会の面白さや訪問価値の印象に同化させる手法がある。今回の大阪・関西万博は、手間取りはしたものの、徐々に入場者数増へつなげていった。会期終盤には関西圏外からの来場者が増加し、関東・東海・四国などからの来場者も見られ、万博熱が全国に広がったとする。とはいえ、広がりは限定的で関東(約12.9%)、東海(約6.7%)、中国、九州・沖縄、四国などが続くとされた。
大きな都会と大きな田舎
多く見かけたことが再訪率の高さを思わせた
ことほど左様に、地元リピーターに支えられた大阪・関西万博だった。これに対し、クールと言おうか冷徹な万博事例を思い出す。東京で1996年開催を計画された世界都市博覧会だ。この万博は、事業費や開催意義をめぐってすったもんだした。東京都の臨海副都心で開催予定だったものが、結果中止になったが、つまるところ2つの大都市、東京と大阪の違いが象徴的に表れているような気がする。
「東京は大きな都会、大阪は大きな田舎」だと評される。東京は国際的な大都市としての機能や文化、そして人口が集積するのに対し、大阪は日本屈指の都会でありながら、ここかしこに庶民性を帯び、下町っぽい隣人関係の廃れない街のように思える。筆者の大阪での業務経験からも、東京との消費者マインドやコミュニケーション文化の違いは大いに感ずるところであり、大阪・関西万博開催に関し、東京発信の情報は懐疑的、熱量の低い観測だった。2000年のハノーバー万博の失敗もその下敷きになっていただろうし、ネットを通じた情報社会の進展、エンターテインメントの日常的充実が、博覧会イベントの開催意義に疑問符を付けるものだったように思う。当節、万博パビリオンを代替する、あるいはそれを上回る常設展示・エンタメが東京圏域にはある。
匿名性が特徴で地域コミュニティが希薄な都会と、お隣さんに無頓着ではいられない田舎の図式を筆者は見る。30年の隔たりはあるが、世界都市博覧会と大阪・関西万博は、まさにこれではないのか。底堅い大阪愛、“東京を見返したる!”が入場者数に結びついた。
翻って九州の気風(きふう/きっぷ)はどんなだろう?レジャー性向、地域愛、東京への反骨心。「肥後もっこす」「ぼっけもん」「薩摩の芋づる」「博多のぼせもん」「さす九」、雄々しい漢(おとこ)を思い至らせる言葉。控え目を演ずる女性に主導権を預けるなら、新しい九州観光が萌えるかも。
<プロフィール>
國谷恵太(くにたに・けいた)
1955年、鳥取県米子市出身。(株)オリエンタルランドTDL開発本部・地域開発部勤務の後、経営情報誌「月刊レジャー産業資料」の編集を通じ多様な業種業態を見聞。以降、地域振興事業の基本構想立案、博覧会イベントの企画・制作、観光まちづくり系シンクタンク客員研究員、国交省リゾート整備アドバイザー、地域組織マネジメントなどに携わる。日本スポーツかくれんぼ協会代表。

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