中国経済新聞 2026年4月号掲載記事にデータ・マックスで編集を行ったものです。
中国自動車メーカーの世界販売台数が初めて日本を上回り、歴史的な転換点となった。S&Pグローバル・モビリティのデータによると、中国勢の2025年世界販売台数は約2,700万台(前年比17%増)と推計され、日本勢の約2,500万台(小幅減または横ばい)を抜いて世界一に躍り出た。日本が2000年以降維持してきた首位の座を20数年ぶりに失った瞬間である。
この変化は単なる数字の逆転ではなく、世界自動車産業の勢力図が根本から再構築される象徴だ。中国の急成長を支えたのは、新エネルギー車(NEV)の爆発的普及、低価格戦略、輸出拡大、そして政府の強力な産業政策である。一方、日本メーカーはハイブリッド車中心の戦略が功を奏したものの、純電気自動車(BEV)への移行が遅れ、グローバル競争で後れを取るかたちとなった。
詳細なメーカー別ランキングを見ると、中国勢の台頭が鮮明だ。比亜迪(BYD)は2025年に460万台を販売し、フォードを抜いて世界6位に浮上。うちBEV販売は225万6,714台(前年比27.8%増)と、米テスラを上回り世界首位を獲得した。浙江吉利控股集団(吉利汽車)は412万台(前年比23.4%増)でホンダを抜き8位(または9位)に。上海汽車集団も451万台で7位に入り、中国勢3社が世界トップ10に名を連ねた。上位20社ではBYD、吉利のほか、奇瑞汽車、長安汽車、上海汽車集団、長城汽車の計6社がランクインし日本の5社を上回った。中国国内市場自体も2025年に3,440万台(前年比9.4%増)と過去最高を更新。中国ブランドのシェアは70%超に達し、外資(とくに日系)のシェアは10%を割り込んだ。
この躍進の背景には、中国政府の長期的なNEV推進政策がある。2010年代後半から補助金、税制優遇、充電インフラ整備を組み合わせ、NEV普及を国家戦略に位置づけた結果、2025年の中国NEV販売は1,649万台(前年比28.2%増)と世界の約62%を占め、国内新車販売の約47.9%をNEVが占めた。BYDのような垂直統合型メーカーは自社で電池・モーター・半導体を生産し、コストを大幅に削減。低価格EV(10万元前後、約200万円相当)が急増し、国内の価格競争を激化させた一方で、海外市場での競争力を高めた。また、開発サイクルの速さも強みだ。中国メーカーは新モデルを1年未満で市場投入するケースが多く、消費者の嗜好変化に柔軟に対応。スマートコックピットや自動運転支援機能の搭載も先進的で、若年層を中心に支持を集めた。
一方、輸出が中国自動車産業の成長エンジンとなった。2023年にすでに世界最大の自動車輸出国となった中国は、2025年も輸出を伸ばし、完成車輸出は832万台(前年比29.9%増)と過去最高を更新。NEV輸出の比率が急上昇し、国内過剰生産の受け皿となった。2026年に入っても勢いは加速。3月の乗用車輸出台数は前年比74.3%増の69万5,000台。うちNEV輸出は13.9%増の34万9,000台で、輸出全体の50.2%を占めた。東南アジア、欧州、中南米、アフリカなど新興国市場を中心に、低価格NEVが浸透。ASEAN諸国では中国ブランドのシェアが急拡大し、一部国で日本車の牙城を崩し始めている。
みずほ銀行ビジネスソリューション部上席主任研究員・湯進徳氏は、「中国の自動車メーカー全体の販売量が日本を抜いたのは、単に順位が変わったということではなく、世界の自動車産業の勢力図が再構築されていることを示す。中国産自動車の急速な発展は、先進技術、コストの優位性、開発ペースの速さなど多方面にわたる総合的な実力によるものだ。日本は自国産業の電動化とグローバル戦略などについて再調整が必要だ」と指摘する。まさにその通りで、中国の強みは「規模の経済」と「スピード」にある。世界最大の国内市場をバックに、サプライチェーン全体を掌握。レアアースや電池材料の供給率も高く、外部ショックに強い構造を築いた。
これに対し、日本メーカーの課題は深刻だ。トヨタ、ホンダ、日産などの伝統的強みであるハイブリッド技術は、燃費規制の緩やかな市場では依然有効だが、BEVシフトが加速するグローバル潮流で相対的に不利になった。2025年の日本勢世界販売は横ばいにとどまり、中国市場でのシェアも急落(日系は約9.6%)。国内販売も構造的要因で低迷し、少子高齢化や保有台数減少、利用年数の長期化が需要を抑制している。認証不正問題や部品供給制約も一時的に響いた。日本政府は2035年ガソリン車新車販売禁止目標を掲げるが、メーカーのBEV投入は欧米勢や中国勢に比べて遅れ気味。トヨタは固体電池やe-Fuelなどの次世代技術に注力するが、短期的な巻き返しは容易ではない。吉利がボルボやロータスを傘下に収め、欧州技術を吸収するように、日本もアライアンス強化や海外生産シフトを急ぐ必要がある。
グローバルな影響も無視できない。中国車の低価格攻勢は、欧米で保護主義を呼び起こしている。EUは中国製EVに追加関税を課し、米国もトランプ政権下でさらなる貿易障壁を強化する可能性がある。2025年の時点、欧州市場での中国車販売は230万台超と伸びたが、関税引き上げで一部メーカーが現地生産を検討し始めた。こうした摩擦は「デフレ輸出」の懸念を強め、世界貿易ルールの再編を促すだろう。一方、新興国では中国車がモビリティ革命を加速。低所得層への自動車普及を早め、CO2削減にも寄与する側面がある。
日本にとっては、危機感をバネに再起の機会でもある。ハイブリッドの強みを生かしつつ、BEVとソフトウェア定義車両(SDV)で巻き返しを図る必要がある。トヨタやホンダのGMとの次世代プラットフォーム提携など、具体的な動きは出始めているが、中国のスピードに追いつくためには、官民一体の戦略が不可欠だ。グローバルサプライチェーンの多様化や、ASEAN・インド市場での共同開発もカギとなる。
2026年以降も、中国車の勢いは続き、世界市場の再編が加速するだろう。日本自動車産業がどのように適応し、共存・競争の道を切り拓くか。その答えが、今後のグローバル経済のカギを握る。
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