政治経済学者 植草一秀
経済政策上の最大の焦点は消費税減税。高市内閣は食品消費税率を27年4月に1%に引き下げるとともに、消費税率1%分の現金給付を行う方針を示している。「国民会議」で基本方針を6月末までに決定する予定だったが先送りされた。
高市内閣と財務省のせめぎ合いがある。高市首相身辺の不祥事が大きく取り上げられている背景に消費税がある。財務省は現時点でもなおかつ消費税減税に抵抗を示す。なぜなら、消費税増税は「ザイム真理教」の核心的利益であるからだ。
「ザイム真理教」の核心的利益が三つある。
第一は消費税増税
第二は社会保障支出削減
第三は利権財政支出拡大
財務省が緊縮財政を追求しているというのは完全な理解不足。財務省は緊縮財政などまったく指向していない。むしろ財務省の基本は「放漫財政」である。財務省が切り詰めるのは一般国民に対する財政支出だ。これが社会保障支出である。
他方、利権財政支出は青天井で拡張させている。「成長投資」などという言葉に騙されてはいけない。民間企業が行う事業に、なぜ国が巨額の補助金を投入する必要があるのか。「国産AI連合に国費1兆円」などの見出しが躍るが、国民の税金を民間企業に贈与する行為に正当性は存在しない。「クールジャパン機構」が巨大な国費を投下したが累積赤字が540億円を超えている。国民の税金を使って官と業が癒着して放蕩三昧の悪行を重ねただけだった。
財務省は利権財政支出を好む。財務省に見返りがあるからだ。他方、国民の生活を引き上げても財務省の利益にはならない。税では庶民からむしり取る消費税のウエイトを引き上げて、富裕層と大企業の税負担を軽減することが追求されている。
消費税は社会保障の財源として必要不可欠というのは完全なウソ。社会保障の財源としては「応能負担」の所得税と法人税がふさわしい。ところが、財務省は大企業と富裕層の税負担を軽くするために、庶民からむしり取る消費税のウエイトを引き上げることだけを追求する。
2025年度の国税収入が84.2兆円に上振れしたことが判明した。税収の上振れは国民の税負担の増加で、「実質的な増税」である。2020年度の国税収入が60.8兆円。25年度の国税収入が84.2兆円。税収が23.4兆円上振れした。これを自然増収と呼ぶ。

呼び方はどうでもいいが、国民の1年あたりの税負担が23.4兆円も増大したということ。23.4兆円規模の「恒久増税」が行われたと言って差し支えない。この「自然増収」は減税等の「正当な財源」になる。1回限りの税収ではなく、永続する税収である。
消費税率を10%から5%に引き下げると国税収入は11.7兆円減少する。しかし、税収が年額で23.4兆円も増大しているから、11.7兆円の減税を実施しても11.7兆円の自然増収が残る。税率を5%にすると自然増収が半分になるだけだ。消費税をゼロにすると、ちょうど自然増収が消える。したがって、消費税率ゼロを検討してもおかしくない状況だ。
財務省は高市内閣を潰してでも消費税減税を阻止する構え。こんなふざけた財務省に日本の経済政策が仕切られては終わりだ。高市首相への揺さぶりの裏を探れば財務省の画策が見えてくる。いま、何よりも必要な施策が消費税減税であることを国民が確認する必要がある。
財務省は高市首相に揺さぶりをかける。高市首相が消費税減税を断念すれば揺さぶりを終了するだろう。しかし、高市首相が消費税減税を強行突破する姿勢を示すなら、高市倒閣の動きが拡大すると考えられる。高市首相は首相の地位にとどまることが目的だから、財務省の揺さぶりが激しくなれば消費税減税を断念する可能性がある。
消費税減税が消えて高市首相が居残るのが最悪。望ましいのは、消費税減税が実施されて、高市首相が退場させられること。最悪と最善。地獄と天国だ。日本財政を根本から刷新することが必要。「ザイム真理教」の真逆をやることが必要。「国民の生活が第一財政」だ。
基本は
第一に消費税減税=所得税・法人税増税
第二に社会保障支出拡充
第三に利権財政支出根絶
利権財政支出はゼロでいい。産業補助金を投下する理由がない。官民に巨額を注げば官僚と企業の堕落をもたらすのが関の山。民間は民間の力で未来を切り開くべきだ。
企業に癒着利権補助金を投下する理由がない。この「利権補助金」を社会保障拡充に回せば、日本は間違いなく世界有数の高福祉国家になる。いまは大企業に法外な利権補助金がばらまかれている。この金を社会保障拡充に回す。巨大な利権補助金がばらまかれる一方で、健康保険の劣悪化が加速している。OTC類似薬の自己負担が倍増する。高齢者の窓口負担も一律3割負担に引き上げられる。高額療養費の自己負担上限が大幅に引き上げられる。国民の命を奪う政策が激しい勢いで強行実施されている。おかしくないか。利権補助金を一掃して社会保障を拡充するのが筋ではないか。
歪み切った政策を推進しているのが高市内閣。税では富裕層課税と大企業課税を適正化すべきだ。富裕層と大企業は本来負担すべき税が著しく軽減されている。所得税は収入が増えれば高い税率が適用されることになっている。ところが、現実は真逆だ。収入が増えるほど低い税負担率が適用される。株式譲渡益、利子・配当への課税が20%分離課税になっているためだ。これが「金持ち優遇税制」。分離課税を廃止して「総合課税」に一本化すれば、この矛盾が解消される。
大企業は各種租税特別措置で実効税負担率が著しく低い。大企業の経営者が富裕層だ。大企業と富裕層に税の優遇をするとどうなるか。財務省に見返りがあるのだ。財務省の天下り、財務省OBの社外取締役への招聘が増える。
森友事件で公文書改ざんを指揮した佐川宣寿元理財局長が有力企業2社の社外取締役に就任していたと伝えられている。財務省は国民のことなど微塵も考えていない。高市内閣と与党も同じ。だから、財政政策運営で利権に走る。そのために国民は窮乏地獄に突き落とされる。この政治を刷新するには選挙での大逆転を国民が主導するしかない。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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