国際未来科学研究所
代表 浜田和幸
9・11テロは、その後のアメリカの外交・軍事政策を大きく転換させた。アフガニスタン、イラクへの侵攻を経て「対テロ戦争」は長期化し、巨額の国防予算が軍需産業と政治を結び付ける構造を強めた。事件前後の航空会社株の取引や高額な保険金、ビンラディン一族の出国などにも疑問が残る。一方、ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫化、台湾有事の懸念が重なるなか、9・11後に肥大化した軍産複合体の論理は、世界を新たな戦争へ導きかねない。事件後25年の歩みから、戦争と利益の結び付きを問い直す。
事前の株取引とビンラディン一族の出国
ハイジャックされたアメリカン航空とユナイテッド航空の株が、事件前に異常なスピードとボリュームで取引されていたことも明らかになっている。衝突事件の後、両社の株は急落したが、9月6日から10日に売り注文を浴びせたプットオプションの投資家は、莫大な利益を得たはず。事前にテロに関する情報が流された可能性が高い。
しかも、事件発生後、わずか数分でFBIは「首謀者はオサマ・ビンラディンだ」と特定し、名指しで犯人と結論付けた。その上、当時、ワシントンに滞在していたビンラディン一族はブッシュ大統領の指示で特別機に乗せられ、中東のサウジアラビアに送り返されている。当時、全米の飛行場は航空機の離着陸がすべて禁止されていたにもかかわらずであった。
最も不可解なことは、ハイジャック犯は全員、その場で死亡が確認されたと報告されたが、テロ実行計画の中心人物とされたハリド・シェイク・モハメドが03年、パキスタンで拘束され、米軍によってキューバのグアンタナモ基地に移送されたまま、先に述べたように、裁判での結審がないまま今日に至っていることである。
アメリカの軍産複合体はテロ後、アメリカ政府が8兆ドル、1,200兆円の対テロ予算を計上したため、ロッキード・マーティン、ボーイング、ハリバートンなどは株価が数十倍に跳ね上がり、大儲けしている。
また、世界貿易センタービルをニューヨーク州とニュージャージー州の港湾当局から事件発生の2カ月前に買収した大手不動産会社ラリー・シルバースタインのシルバースタイン社長は、市場評価額をはるかに上回る保険をかけていたため、史上最高額の45.5億ドルもの保険金を受け取った。
対テロ戦争で膨張した軍産複合体
現代の戦争は大義名分として「国家の安全保障」が主張されることが多いが、実態としては政治と一体化した軍産複合体を潤すマネーゲームの一環という側面が否定できない。政治家と軍需産業がつるんで戦争を長引かせる最大の動機は、「国民の税金」という無尽蔵に近い財源が確保されているため。
その観点からすれば、9・11テロは他国の政府や不都合な集団を攻撃する口実づくりとしか思えない。なぜなら、9・11テロの直後、ブッシュ大統領は「対テロ戦争」を宣言。アルカイダを庇護していたアフガニスタンのタリバン政権を攻撃、崩壊させた。さらに、03年には、大量破壊兵器の保持を理由にイラクへの軍事侵攻も実行した。
アメリカの現時点での軍事予算は、人類史上最大の1.5兆ドル、240兆円に急増。テロ対策という大義名分は追いやられ、国家対国家の総力戦に変身してしまった。ペンタゴン、軍需産業、政治家の三角関係が、かつてないほど緊密化した結果である。
ロッキード・マーティン、レイセオン、ボーイングなどは、ウクライナ戦争やイラン戦争によって受注残高と収益が歴史的な高水準に到達。政治家への資金提供やロビー活動は「表現の自由」としてアメリカの憲法上、合法化されている。
ほぼすべての政治家は軍需産業からの政治献金を受けており、兵器工場や下請は50州すべてに分散されているため、地元経済を守るという観点からも防衛予算を削るのは至難の業。
9・11テロ以降25年間にわたり、軍需産業は対テロ戦用の軽装備や無人機で儲けていたが、ウクライナ戦争の勃発で、単価がケタ違いに高いミサイル防衛システムのパトリオットや戦闘機F-35、戦車などの大量生産という特需に遭遇。
しかも、巨額のウクライナ軍事支援予算の8割はウクライナに渡らず、米国内の兵器工場に直接支払われている。米国内の雇用と軍需産業の利益を生んでいるのが実態である。
政治家は軍需産業にとっては「莫大な税金という利益をかすめ取ってくれる最高の営業マン」にほかならない。その癒着という闇は明らかにされないままだ。
ようやく、非営利の調査機関のOpenSecretsなどが、ロビー資金の流れに関するデータベースを構築し、ネット上での検索が可能になってきた。有権者が選挙の際にこうした実態を把握し、投票行動に結び付けるかどうかが課題であろう。
複数戦線が招く世界規模の危機
いずれにせよ、第3次世界大戦の可能性は日増しに高まっている。アメリカの軍事力は世界最強を維持しているが、中東と東アジアの2正面で総力戦を戦う体力はない。
そのため、もしイラン戦争が激化し、米軍の戦力が中東に集中した場合、東アジアにおける米軍の抑止力は手薄になり、これは中国にとって台湾への武力統一を成功させる歴史的チャンスとなりかねない。
国内経済の課題が解決できない中国にとって、国民の目を外に向けさせる戦略に走り、台湾に攻撃を仕掛ける可能性は高まるだろう。
ウクライナ戦争、イラン戦争、台湾有事が同時に重なれば、世界はサプライチェーンの寸断を含め、大混乱に陥る。世界経済が相互依存を深めている現状からすれば、全世界の国々が自国のサバイバルのために参戦せざるを得なくなるからだ。
残念ながら、世界の未来は決して楽観視できそうにない。その意味でも、来る9月11日、アメリカ政府がどこまで黒塗りの報告書の全貌を明らかにするかが問われることになる。
(了)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。








