2024年03月29日( 金 )

REDD+事業の国際的なパイオニア、新たな社名で環境保全社会の理想を追求

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ワイエルフォレスト(株) 代表取締役会長 山本 亮

インドネシア政府から絶対的な信頼を得る

ワイエルフォレスト(株) 山本 亮 代表取締役会長<

ワイエルフォレスト(株) 山本 亮 代表取締役会長

 「自然保護と経済発展は結び付かない」――。2004年、山本亮氏が材木伐採事業を辞め、インドネシアでのマングローブ植林事業を始めるために(株)ワイエルインベストを立ち上げた際、多くの人々がそう考えた。だが山本社長はそれには耳を貸さず、私財を投げ打って新事業に取り組んだ。選んだ土地はインドネシア。この国の未開地に飛び込み、マングローブ植林による環境改善や、改善された環境を生かした良質なエビ養殖場の再生を同社で手がけた。同様の事業を考える企業はほかにもあったが、山本社長が抜きん出ていたのは、住民の権利を最優先にした事業の進め方だった。衣食住をともにしながら、風呂もシャワーもない場所で腰まで泥に浸かりながら苗を植えた。文字通り泥まみれの活動だった。その結果、住民たち、ひいては政府からの信頼を得て、国際的に評価されるに至った。

 同社の事業について挙げるべき実績は多々あるが、ここで取り上げるのは、13年7月に世界で初めて、インドネシア共和国南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県長から「保護林環境サービス利用事業」を行う許可を得たことだ。何しろ同事業はインドネシア国内の企業でも取得するのは難しいという。なぜかというと、同事業を行うにあたってインドネシア政府が最も重視する「REDD+におけるセーフガード」という概念を実践できる企業がないからだ。REDD+とは、途上国が自国の森林を保全するため取り組んでいる活動に対し、経済的な利益を国際社会が提供するというという考え方だ。そしてREDD+におけるセーフガードとは、REDD+を行うことで引き起こされるリスクを発生させないようにすることを指す。

 そのリスクは小集団で森を守り生きてきた住民たちが、企業などの介入で大集団の管理体制のなかに加わることを余儀なくされ、今まで得ていた権利を奪われることで生じる。それだけでなく、機械的な植林によって単純林ばかりが増加し森林の機能そのものが低下するといった、環境がこうむるリスクも指す。環境保全と言うと、自然環境を整えることだと考える人が多いが、そこに住む民、人的環境も考慮しないと、本当の環境保全は成り立たない。だが、ほとんどの企業は森林のCO2を吸収する機能のみを重視し、利益を追い求める。結果、本来森林が持っている多用な機能を失い、住民を無視した非人道的な事業を進めることになる。

REDD+セーフガードの類まれな理解者

 そのような態度を徹底して排除してきた山本社長は、「住民が『環境が良くなった』と考えるのは、自然のなかでの生活が何らかのかたちで『過ごしやすくなった』と実感したときです。とくにインドネシアは、セーフガードのなかでも「社会環境セーフガード」と呼ばれる、先住民や地域住民の知識や権利を尊重することを始めとするものを重視しています。これを理解するためには、現地住民の気持ちに本気で寄り添う必要があります。実際に同じ釜の飯を食うぐらいのことをして、彼らの懐に入り込まなくては無理でしょう」と主張してきた。

 その山本社長が、中央区天神4丁目に所有していた自社ビルを売却した。社名もワイエルフォレスト(株)に改め、後を阿久根直人氏に譲り自身は会長となった。事務所は6月に移転する。

 「私たちの事業を、日本・インドネシア両政府が高く評価してくれるようになった。ここまできたら、すべての手持ち賃金をマングローブ移植ビジネスに継ぎ込むべきと判断した。あの世まで財産は持っていけない。インドネシアの人たちの1人にでも感謝をいただけたら、思い残すことはない」。ワイエルフォレストの会長となった山本亮氏は、すがすがしい顔で最後を結んでくれた。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<COMPANY INFORMATION>
ワイエルフォレスト(株)
代 表:阿久根 直人
所在地:福岡市博多区築港本町6-1 印刷会館3F
設 立:2015年4月
資本金:1,000万円
TEL:092-734-7722
URL:http://www.ylinvest.co.jp

<プロフィール>
yamamoto_pr山本 亮(やまもと あきら)
1935年、大分県出身。70年、外材輸入商社山本木材産業(株)を設立。2004年からマングローブ植林による環境ビジネスを開始。同国初のREDD+事業会社ワイエルグループの代表となる。

 

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