2022年07月02日( 土 )
by データ・マックス

日本を取り巻く環境の激変とインドの重要性(前)

国際政治経済学者・参議院議員 浜田 和幸 氏

 アメリカの指導力の低下をはじめ、中国やインドの台頭など、日本を取り巻く政治、経済、安全保障環境は、目まぐるしく変化を遂げている。こうした情勢変化を冷静に把握しておかねば、政治的決断はもとより、ビジネス上の経営判断もうまく下せないだろう。
 どの国と、あるいはどの企業と連携すべきか。国家や企業の命運を左右するのは、目に見える部分に惑わされず、見えない部分の動きを正確に理解する力があるかどうかである。今こそ、ロシア、中国、韓国、ASEAN諸国、インドなどと、創造的な外交を展開すべき時代だ。

tikyu このところ日本の近未来に大きく影響するに違いない動きが各地で見られる。たとえば、去る3月8日、南シナ海に面するカムラン湾で国際港の開港式典が挙行された。我が国では南シナ海と言えば、中国による岩礁の埋め立てと軍事拠点化に関する報道が主流であるが、一方の主役であるベトナムについての情報は限られている。
 ASEAN経済の牽引車とも言われるベトナムは、1億人近い人口を擁し、日本との関係強化に一際熱心である。今回のカムラン湾の整備拡張についても、日本との交易増加を見込んだもの。今後は外国の軍艦、民間船いずれも使用可となる。

 実は、カムラン湾は、ベトナムきっての軍事要衝に他ならない。これまで外国軍艦の寄港を厳しく制限してきたものだ。しかし、日本とベトナムは2015年11月、海上自衛隊の艦船の寄港で合意した。また、初の海軍合同演習を実施することでも合意に至った。
 日本ではほとんどニュースにならなかったが、世界からは注目を集めたものである。この合意を受け、本年4月には日本の海上自衛隊の護衛艦がカムラン湾を訪問する。外国の軍艦としては第1号となるため、ベトナムでは盛大な歓迎式典が予定されている。
 日本の誇る潜水艦「うずしお」と駆逐艦2隻がまずはフィリピンを訪問し、その後、ベトナムへ向かう。我が国の潜水艦がフィリピンに寄港するのは、過去15年において初めてのこと。中谷防衛大臣もそれに合わせて、フィリピンとベトナムを訪問する。日本とアジア諸国との信頼関係の強化を象徴する動きと言えよう。

 海上自衛隊の両国訪問の主たる目的は、南シナ海における中国の急速な軍事拠点化への牽制にあることは誰の目にも明らかである。一方、中国の反応も気になるところだ。中国外務省は早くも警戒感を露わにしている。曰く「第二次大戦時、日本はスプラトリーを占領した。今回の動きはその再来か」といった具合である。

 南シナ海では「フィリピン、ベトナム対中国」といった対立の構図が急浮上している。もちろん、台湾やブルネイ、インドネシアも傍観しているわけではない。なにしろ、南シナ海は年間5兆ドルもの貿易通商ルートである。世界の海上輸送の3分の1を占めるほどの重要な航路だ。
 しかも、往来する船舶の大半は、日本の貨物輸送に係っている。エネルギー資源の輸入や「メイド・イン・ジャパン」製品の輸出にとっての生命線である。このシーレーンを確保できなければ、日本は生きていけない。

 中谷大臣はフィリピン訪問に際し、「ビーチクラフトTC-90キングエアー」の供与を申し出るとのこと。海上での警戒警備能力を高めるのが、支援の目的だ。「リバランス政策」と称してアジアとの関与を強めるオバマ政権より、安全保障の分野でより深くコミットするかたちである。
 というのも、アメリカは中国に配慮してか、領土、領海問題に関しては、「一方に与しない」との姿勢を取っているからだ。これではフィリピンにしてもベトナムにしても、心もとないと思うのも当然であろう。

(つづく)


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<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

 
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