2024年03月30日( 土 )

福岡を拠点に本物の「マーケティング」を提供するグローバルカンパニーを目指す(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

アンダス(株) 代表取締役社長 前田 哲郎 氏

 戦略的Webマーケティングと通販向けオリジナル販促ツールを提供し、統合型の通販事業支援企業として業界をリードするアンダス(株)。福岡を拠点にマーケティングを通じたグローバルカンパニーを目指すとしている同社代表取締役の前田哲郎氏に、経営姿勢、人材育成、地域密着、通販、Web業界の現状・展望について語っていただいた。

ブランドファンを作るためのマーケティングのあり方

 ――最近のネット通販事情の状況を見ていかがでしょうか。

 前田社長(以下、前田) 単品通販の先駆け的存在であるキューサイ(株)さまや再春館製薬(株)さま、(株)ヴァーナルさまなどがあって、今も後発の有力企業がどんどん増え続けている状況です。でも、どの通販企業も2番手商品がなかなか育っていないという点が共通しています。反対にそれができている企業は、「ブランド」があるということです。これまで単品通販は、「商品ありきでプロモーションができる」、「ブランドがない新設会社でも参入障壁が低い」という点がメリットとして語られてきましたし、僕自身もそういう話もしてきました。しかし、裏返すとそれによって2番手商品が育たないんだろうなというのが私の見解です。商品の機能性や効果・効能、成分を中心に訴求し、そこにユーザーが反応して購入するというエンゲージの仕方をしていて、そこにはブランドが不在です。象徴的な事例として、ユーザーが商品名は知っていても、企業名を知らないことがありますよね。

 ――CMでも会社名がなく、商品名だけということもありますね。

 前田 そういう意味ではサントリー(株)さんなどの大手企業系はやはり強いですし、大手ではなくともユーザーに対しきちんとブランドコンセプトが伝わるコミュニケーションが取れているところが残っていくのだと思いますね。

 ――先ほど、健康食品や化粧品は品質や機能性の訴求が中心とお話しされていましたが、中小企業がブランディングを行う際は、どこに注力すればよいのでしょうか。

 前田 ブランドとしての理念や特徴など、ブランドコンセプトの理解・共感なしで、その商品を購入しているというのは、よく考えると不思議なことです。でも、これまではそれで成功していた。例えるなら、人を見るときに「こういうスキルを持っている」、「お金がある」など、表面的な薄い関係性で付き合うようなものです。本質的に人としてその人が好きか嫌いかという感情の部分まで至っていない。通販はこれが現状です。ブランディングは感情のレベルまで訴求することを前提にしていかないと難しいかと思います。これはCPA(※1)至上主義やCPO(※2)至上主義が要因となっていますね。そこを重視するばかりに、ブランドコンセプトの理解・共感を入り口としてやっていく際に、そのマーケティング戦略はどうあるべきかという問いに、誰もすぐには答えられない。感情の部分なのでKPI(※3)もありません。この点は言葉で伝えるだけでなく、弊社自身が通販事業を行うことで示したいと考えています。

 ――Webマーケティング事業だけでなく、商品開発・製造も含めて企業に協力していくということもありますか。

 前田 事業の立ち上げのタイミングでご相談をいただき、商品企画やパッケージなどから一緒に立ち上げたこともあります。そのタイミングから携わった企業については、どれも円滑に動いています。重要なのはブランドコンセプトの理解・共感を入り口として、ブランドのファンになってもらうということですね。商品のファンではなく、ブランドのファンを作っていくためのマーケティング戦略はどうあるべきかということの答えを出すためのコミュニケーション計画を提案できるようになりたいと思っています。加えて先ほど話した、自社通販を行うことで手ごたえを感じることができれば、それを事例に、クライアントにも勧めることができると考えています。

グローバル化で「外貨」を稼ぐ

 ――福岡に拠点を置く企業としての事業姿勢と、これからの人材育成についてお聞かせください。

 前田 私は福岡で育ち、福岡が大好きな場所だということが大前提にあります。また、個人的に地方創生に対しての思いがあります。世界的に見ても地方の過疎化が進んでいくなかで、世界の人口は将来、25ぐらいの主要都市に集約されていくのではないかと予測しているレポートもあります。日本で考えると東京、大阪、名古屋、福岡ぐらいしか残らない可能性があるかもしれません。私は地方創生で福岡に限らず、田舎というものを残していくべきだと考えていて、地方が残っていくには、そこに経済活性や財源が必要です。

 例えば、弊社では売上の半分以上が東京に拠点を置くクライアントですが、弊社は福岡が拠点ですので、いわば「東京から外貨を稼いできている」ということになります。地方のマーケットのなかだけで事業を行っても、人口が減っている背景から必ず先細りになります。そのために、外貨を引っ張ってこれるだけの、外向けのマーケット戦略という意識を持つ必要があります。そういう意味で、私は福岡発のグローバルカンパニーを目指しています。加えて、私の経営の考え方で「全員同じ場所で一緒にやりたい」という思いがあります。正直、クライアントや採用のことを考えると、東京に拠点があった方が良いのですが、先に述べた理由で弊社は東京に事務所を置く予定はございません。福岡には全国的に知られる大企業がありますが、東京などの主要都市に拠点を置く傾向が多く、雇用の大半も福岡以外となれば、地元に対して税金や雇用の面で貢献できないのではないでしょうか。それでは地方創生が成り立たないと思います。

 ――「福岡発のグローバルカンパニー」について、具体的な取り組みを教えてください。

 前田 グローバルカンパニーにしていくということは、社内の人間もグローバルにならなければならないと考えています。人材育成も含め、これから外国人の採用をかなり積極的にやっていこうと考えています。新卒のなかでも九州大学、大学院生には優秀な中国人が多く、彼らは「日本で結婚して、日本にずっと住んで、日本で仕事をしたい」と考えているそうです。また大分にあるAPU(立命館アジア太平洋大学)に留学してきている外国人留学生も優秀で、積極的に採用したいと考えています。そうすることで社内が多様性を認める環境になっていきますし、それが一番の教育にもなると思っています。例えば、日本人同士でミーティングしていても静かですが、中国の方だとズバッと意見を言いますしね。また、人手不足はこれからも変わらず、売り手市場はもっと進むと思います。弊社が求めるレベルの中途の人材を探すと、九州では正直難しいのが現状です。また、中途で優秀な人を採用しようと思ったら、弊社自体のブランドを高める必要があります。認知度を上げて、どういう会社で、どういう人材を求めているのかということを業界のなかで浸透させていく。そして当社で働くことがステイタスになるぐらいの会社にしなければと思っていますが、それには時間がかかります。

 ――先ほど話された、台湾でのマーケットに力を入れているのも、グローバル化の一環でしょうか。

 前田 台湾だけではなく、グローバルカンパニーとして海外に出ていきたいと考えています。海外の人たちをターゲットとしたサービスや事業を展開していくということですね。海外では、世界100カ国以上のユーザーさんを持っているグローバルカンパニーもあり、ASPというSaaS(※4)型のサービスなら、福岡を拠点に世界の人々に利用していただくことができます。オリジナルプロダクトとしてASP型のサービスやツールをやっていこうというのが、私が考えている海外展開です。

(つづく)
【小山 仁】

※1:Cost Per AcquisitionもしくはActionの略。顧客獲得1人あたり、もしくは何らかの成果1件あたりの支払額を表す広告単価の指標。
※2:Cost Per Orderの略。注文獲得単価。1件の注文を獲得するのにかかった費用のこと。
※3:Key Performance Indicatorの略。組織や事業、業務の目標の達成度合いを計る定量的な指標。
※4:Software as a Serviceの略。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア、システムのこと。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:前田 哲郎
所在地:福岡市中央区今泉1-20-2
設 立:2004年6月
資本金:1,000万円
売上高:(16/3連結)17億6,271万円
URL:http://www.andus.co.jp/

<プロフィール>
前田 哲郎(まえだ・てつろう)
1971年、熊本生まれ福岡育ち。(株)光通信で10年間テレマーケティング事業に関わったのち、Web
マーケティング事業で2004年にアンダス(株)を設立。Web広告の戦略立案から制作、システム
開発までを一貫して行い、「スマイルツールズ」など自社開発の通販支援ツールを提供。12年には
クリエイターの育成・向上を目的とした、クリエイティブセンター福岡(株)を設立。

 
(前)
(後)

関連キーワード

関連記事